美容医療の展望 美の独自性、安全性と質の向上で日本の美容医療はさらなる高みへ 美容医療の展望 美の独自性、安全性と質の向上で日本の美容医療はさらなる高みへ

美容医療業界の第一線で活躍する医師や弁護士、ジャーナリストなどによって4回にわたり行われてきた本企画。総括となる今回は、医療法人社団喜美会 自由が丘クリニック 理事長の古山登隆氏とアッヴィ合同会社 アラガン・エステティックス プレジデントの遠藤徹夫氏が対談。日本人独自の美の追求と、安全性と質を高めることで見えてくる、日本の美容医療の未来について語り合う。
(実施日:2025年10月20日)

美容医療業界が拡大する中で
規制環境や情報発信が課題に

 近年、日本の消費者の美容医療に対する意識が変化しつつある。施術件数も増加傾向にあり※1、美容医療は新たなトレンドとしてより身近な存在になってきている。その一方で、健康被害の発生件数も増加しており※2、美容医療が抱える課題も浮き彫りになってきた。

 対談が始まると、そんな現状の中でスタートした本企画の目的が、アッヴィ合同会社 アラガン・エステティックス プレジデントの遠藤徹夫氏から改めて示された。「この企画を通して、日本の美容医療の現状と課題を整理し、美容医療に携わる医師や、弁護士、ジャーナリストといったステークホルダーの皆さまから、その解決に向け必要な取り組みや今後の展望をお聞きし発信しようと考えた」と遠藤氏。

遠藤 徹夫(えんどう・てつお)氏
アッヴィ合同会社 アラガン・エステティックス
プレジデント

 それを受け、長年美容医療をリードしてきた形成外科専門医の古山登隆氏は、現在の美容医療を取り巻く環境について言及。「日本の美容医療は、1980年代のケミカルピーリングから始まり、ボツリヌストキシン注射、ヒアルロン酸注射、レーザー治療と、治療選択肢が増えるとともに少しずつ垣根が低くなり、非外科手術の施術数が増えるにつれ消費者の抵抗感もなくなってきたと思います。その一方で、美容医療が拡大して行く中で、美容医療を行う医師やクリニックが増えてきました※3」と指摘した。

古山 登隆(ふるやま・のぶたか)氏
医療法人社団喜美会 自由が丘クリニック 理事長

 美容医療に関するトラブルが増える中※2、昨今は国や学会が美容医療業界の規制環境整備に着手しつつあるという。古山氏は、「自由診療である美容医療は、これまで後回しにされていた感がある」としつつ、「2024年6月~11月に厚生労働省による『美容医療の適切な実施に関する検討会』が開催され、25年8月に厚生労働省医政局長から『美容医療に関する取り扱いについて』という通知が発出されましたが、これまでにない踏み込んだ内容でした。美容医療業界の現状を鑑みて、国もようやく重い腰を上げたのかもしれません」と発言した。

 さらに、古山氏は、美容医療において重要となる「(1)規制環境を整えること、(2)美容医療に関する情報を消費者に適切に届けること、(3)医師の教育体制を整えること」の3点についても述懐。

 「(1)の規制環境については、行政がさらに力を入れるべき。きちんと環境を整えることが、業界全体の成長にもつながるはず。(2)については、SNSが全盛ですが、消費者が正しい情報を得ることができるよう、業界も努力していくべき。(3)については、直美(初期臨床研修後に保険診療科に進まず、直接美容医療に進む医師を指す)がクローズアップされていますが、基礎を学ぶことの大切さを、医師たちに改めて認識してもらうことが大事」と強く訴えた。

※1 出所:厚生労働省 資料より「第1回 美容医療の適切な実施に関する検討会」 資料1「美容医療に関する現状について」P6-7 (https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001363278.pdf 2025年11月5日アクセス)
※2 出所:厚生労働省 資料より「第1回 美容医療の適切な実施に関する検討会」 資料1「美容医療に関する現状について」P22-23 (https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001363278.pdf 2025年11月5日アクセス)
※3 出所:厚生労働省 資料より「第1回 美容医療の適切な実施に関する検討会」 資料1「美容医療に関する現状について」P15-20 (https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001363278.pdf 2025年11月5日アクセス)

「Art」と「Science」が
日本独自の美容医療の両輪

 中盤からは、安心・安全であり、日本独自の美容医療の発展に向け、「Art」と「Science」の考え方についての議論が白熱した。

 「『Art』と『Science』の2つは、いわば美容医療においての両輪。どちらも重要で、どちらも欠けてはならない」と古山氏。それに対し遠藤氏も、「私たちアラガン・エステティックスが目指す『美容医療』とは、一人ひとり違う“美意識”に寄り添える『美容』(Sense of beauty)と、“科学に基づく安全性”を追求する『医療』(Evidence)が共にあること。これは、古山先生のおっしゃる『Art』と『Science』の考えに通じるものです。この2つの価値があってこそ、美容医療への信頼を高め、共に安心を築き上げる『自信と誇り』(Confidence)の提供につながると考えています」と賛同した。

 さらに古山氏は、日本の美容医療における「Art」について、日本独自の美を追求することの重要性を説いた。「日本と海外とでは、顔も体も骨格が異なるため、美容医療に対して求めることも異なります。また、昨今は“Korean Looking”が注目されるなど、アジア市場が加熱を見せています。これまでの欧米の理論をベースに構築された方法だけでなく、日本の美容医療も独自性を出していく必要があります」と力説。

 古山氏は、“ジャパン・ビューティー”の根源を“品と華”という言葉によって表し、自身が世界的な国際学会で発表した演題“盆栽エステティック”に込めた思いについても言及した。「盆栽は、自然の美しさに少し人工的に手を加えることで、さらなる美しさを追求する。それをかなえるには、さまざまな知識や技が必要です。日本が目指すべき美容医療も同じではないか」と古山氏。

 また、日本庭園の庭師の“無作為の作意”についても触れ、「日本庭園は、一見、庭師の作意が感じられないほど自然に見えるが、実はとことんプランニングされている。日本の美容医療に求められることにも共通している」と述べた。

  遠藤氏は、アラガン・エステティックスにおいての“ジャパン・ビューティー”の捉え方も「まさに古山先生がおっしゃっていることそのまま」と同意。「アラガン・エステティックスが提供する価値の1つである『日本人一人ひとりに寄り添う美の選択肢(=Sense of beauty)』の提供を通じて、日本の美容医療に貢献していきたい」とし、「幅広い製品ラインアップと消費者・患者さんに向けた美容医療に関する情報を発信し理解を深める活動を通じて、多様な日本の美の価値観を実現したい」と展望を語った。

 古山氏は、もう1つの要素である「Science」については、「『Science』なしの『Art』はあり得ない」と強調。「ナチュラル・やりすぎない・安全・予防的・理論的の5つが、今後の美容医療のキーワードになっていくが、このうち安全・予防的・理論的は『Science』つまり科学的な根拠(Evidence)なしでは確保できない」と指摘し、「基本的な清潔操作といった適切な施術環境の確保のほか、有害事象の頻度や程度が臨床試験で評価されている承認品※4の選択などです。倫理的観点から、医師は使用する医薬品・医療機器を選択する際は、臨床試験などで得られた安全性・有効性に関する科学的根拠や最新情報をもとに、総合的に検討することが重要です」と主張した。

 遠藤氏は、アラガン・エステティックスにおいての「Science」について、「日本の薬事承認を受けた製品を提供し、その安全性、有効性、品質、リスクに関する幅広い情報と知見を集め、先生方と共有していくことが私たちの責務」と話しつつ、「アラガン・エステティックスでは、患者さんの満足度向上を使命とした『Allergan Medical Institute™(AMI)』という教育部門を通じて、美容医療に携わる医療従事者に教育プログラムを提供しています。現在、日本の医学部では美容医療については体系的に学ぶ機会が少ない中、医師のご経験やニーズに合わせて、エビデンスに基づいた体系的で再現性の高い教育プログラムを提供し、医師が継続的に学ぶ環境づくりを通じて、さらなる安全性を追求し続けていきたい」と美容医療の安全性向上への取り組みを示した。

※4 承認品:厚生労働省の承認を得て、有効性と安全性が確認された医薬品や医療機器。それに対し、承認されていない医薬品や医療機器を「未承認品」と呼ぶ。日本の美容医療においては未承認品が使用されることもある。

「自信と誇り」を持つ
安心・安全な日本の美容医療へ

 続いて、世界に誇る安心・安全な美容医療を提供していくために、日本の美容医療業界としてどうあるべきかが話し合われた。

 古山氏は、「美容医療の医師には、基礎となる技術や知識が必要不可欠。形成外科専門医や皮膚科専門医といった専門医の資格はもちろん、学位を取得するなど学術的な学びも重要になってきます。遠回りのようで、実はそれが世界をリードする美容医療の医師になる近道」と、まずは医師に向けてアドバイスを送った。

 翻って消費者・患者さん側は、安心・安全な美容医療を受けるために何を心がけるべきなのか。古山氏は「業界として公式な情報がきちんと提供されていない中では、消費者・患者さんはSNSの情報に頼らざるを得ない側面がある」としながら、クリニックや医師の選び方について、「その医師がどんなキャリアなのかは、必ずチェックしておきたいところ。先ほど医師へのメッセージでも伝えた通り、形成外科専門医や皮膚科専門医といった専門医の資格を所持する医師であるかは、確認する1つのポイントになります」と説明した。

 加えて「消費者・患者さん自身が自律することも大事」と強調。「結局は個と個のつき合いとなるので、医師との相性も重要な要素ですが、いくら秀でた医師でもすべてのリスクを予見し説明することはできません。消費者・患者さん側も、自分の体を治療するんだという自覚を持って、医師に会う前に疑問点をまとめておき、気になることはすべて医師に確認することが大事」と訴えた。

 一方、遠藤氏は、美容医療に貢献する製薬会社として、アラガン・エステティックスが安心・安全な美容医療を日本で提供していくためにどんな取り組みをしているかを示した。「アラガン・エステティックスが提供する価値として、安心と信頼(Confidence)があります。具体的な取り組みとしては、消費者・患者さんへの啓発活動を通じ、美容医療への信頼を高め、共に安心を築き続けていくことを継続して取り組んでいきます。また、科学的根拠に基づく製品の提供だけでなく、多様な情報の発信により医療従事者へのサポートにも取り組んでいきます」と述べた。

 最後に、2人から「日本の美容医療の未来」に向けてメッセージが発信された。

 「今後の美容医療業界は、目先の利益に捉われずに、またSNSの不確かな情報に振り回されずに、医師も消費者・患者さんも地に足がついた行動が求められます。そのためには、本企画で発信したようなメッセージを出し続けていくことが大切になるのでは。こうしたことを継続していくことが、日本の美容医療業界全体のブランド化にもつながると思います」と古山氏。

 遠藤氏は、日本の美容医療の安全性と質を高めるための今後のビジョンを語った。「アラガン・エステティックスは、一人ひとりに寄り添う美の選択肢(Sense of Beauty)、科学に基づく安全性の追求(Evidence)、共に生み育んでいく安心と信頼(Confidence)という3つの価値を提供すると同時に、独自のイノベーションを創出し、日本の美容医療に貢献していきます。こうした取り組みを通じて、『安心と信頼』、さらに『自信と誇り』を持てる日本の美容医療を、ステークホルダーの皆さまと共に創っていきたい」と強く訴え、対談を締めくくった。