
Asana Japan
業務の見える化がAI導入成功のカギ
人とAIの協働で進化するプロジェクト管理の未来像
国内の多くの企業では、従来の会議やExcel中心の進め方から脱却し、デジタルを軸にした新しい働き方への移行が着実に広がっている。さらに今注目されているのが、AIやAIエージェントの活用による組織全体の生産性向上だ。AI導入を成果につなげる条件とは何か。国内大手企業の実践事例から、その未来像と次の一手を探る。

非効率な業務のままでは、AI導入の成果は難しい
仕事の「見える化」で人とAIが協働する時代へ
今やAIは“試す”段階を終え、“使う”時代に入りました。しかし、業務が非効率なままでは、AIを導入しても成果は上がりません。Asanaは「ワークマネジメント」というコンセプトを基に、仕事を“見える化”し、業務の効率化を実現します。Asanaは皆さんと共に、日本の働き方を変えていきます。
最新の調査結果から読み解く働く人のAI所感
ワークマネジメントプラットフォーム「Asana(アサナ)」を提供するAsana Japanは、“イノベーションを起こすための働き方”の知見を共有するイベント「ワークイノベーションサミット東京 2025」を開催。今回、「人とAIが協働する働き方」をテーマに講演が行われた。
Work Innovation Lead
Asana Work Innovation Lab
マーク・ホフマン博士
まず、キーノートとして、Asana Work Innovation Labのマーク・ホフマン博士が登壇した。今回、Asana Work Innovation Labでは、日本の2000人以上のナレッジワーカーを対象とした大規模なAI活用調査を実施。その調査によれば、日本のナレッジワーカーの21%が「AIに仕事を奪われるのでは」と懸念しており、自分の業務の30%はAIに置き換えられると考えているという。また、週当たりの生成AI利用率は、この1年で23%から35%へと大幅に伸びたが、欧米の数字に比べるとまだ低い水準だ。そして、日本企業でAIの活用を組織全体に広げている割合は、わずか17%にとどまっており、AIに対する恐怖や不安が、導入の足かせになっているのだ。
では、AIの導入を成功させるには何がポイントとなるのか。例えば、AI利用を習慣化した場合、月に数回しかAIを使わない人は、37%しか生産性向上を実感できていないが、週次になると73%、日次では89%に跳ね上がる。さらに、AIを「単なる自動化ツール」ではなく「チームメイト」と捉えた人は、94%が生産性向上を実感しているという。「深くエンゲージし、問いを重ね、AIを協働者として扱うことで本当の真価が発揮されるのです」(ホフマン博士)。
また、効果的なAI活用には部門横断的なワークフローが欠かせない。調査では、AIワークフローの62%が部門をまたいで運用されており、とくにIT部門と人事部門の連携が成果を上げているという。使う言語も考え方も全く異なる2つの部門だが、AIが橋渡し役となって共通言語を提供することで、効率的な協業が実現できるのだ。
そして、AI導入をさらに広げるためには、インフルエンサーの存在が成功のカギを握る。単にユーザーを増やすのではなく、組織内の“ブリッジャー(部門間の橋渡し役)”や専門領域の知識を持つ"ドメインエキスパート”に注目すべきだという。彼らは部署間をつなぎ、AIの価値を自分たちの言葉で説明できる。そうした人材に投資し、成果を共有することで、導入が組織全体へと波及していくのだ。
「AI導入の成功は、テクノロジーだけでなく“人”にかかっています。日本の企業は、どうAIを取り入れ、どのように成果を出していけば良いのか。最新リサーチをぜひ参考にしていただきたい」とホフマン博士は語り、講演を締めくくった。
カナデビアがAsanaで挑戦する働きがいのある職場づくり
カスタマーキーノートには、カナデビアの橋爪宗信氏が登壇し、「カナデビアにおけるデジタル変革への挑戦」と題した講演を行った。「これからはエンジニアリングだけでなく、デジタルも利益の源泉にしていかなければ勝ち残れない」と橋爪氏は危機感を語る。
カナデビア
取締役 兼 常務執行役員
ICT推進本部長
橋爪 宗信 氏
同社の事業は、エンジニアリングを中心としたEPC(設計・調達・建設)プロジェクトマネジメント型ビジネスとなっている。大規模プラントやインフラなどを一品生産で提供する事業は、必然的にチームワークが重視される。しかし、これまでの働き方は会議中心で物事が決まり、進捗管理はExcelやガントチャートに依存していたため、「仕事の状況が把握しづらい」「手戻りが多発する」といった課題を抱えてきた。
「チームワークが中心のプロジェクト運営を変革したいと考えました。手戻りや無駄をなくし、生産性を圧倒的に向上させていく。働きやすく、働きたくなる職場をつくれば、社員のエンゲージメントは高まるはずです」(橋爪氏)
生成AIやAIエージェント導入に関しても、同社は積極的であり、個人利用にとどまらない組織での利用を想定しているという。「組織のナレッジが他の事例でも生かせるようになるでしょう。こうしたAIのポテンシャルをフルに活用する組織を目指しています」(橋爪氏)。
そんな同社が、デジタル変革の一環として、1年前に本格導入したのがAsanaだ。Asana上では、プロジェクトごとに格納されており、コミュニケーションもすべてAsanaで展開。プロジェクトの進捗状況は、Asanaのワークスペース上ですぐに共有可能だ。「Asana上のやり取りが、すべてナレッジとして蓄積されていきます。それを基に、AIがアドバイスしてくれるようになれば、さらに効率が上がっていくでしょう」と橋爪氏は期待を寄せる。
現在、全社4000人のうち約500人が利用しており、プロジェクトマネジメントに課題感のある部署に手を挙げてもらい導入する「ステップ論」で拡大を目指している。
今後はRPAによる業務削減とAsana活用を組み合わせ、2030年を目標に「働きがいがあり、働きやすく、働きたくなる職場」の実現を目指す。すでにRPAで年間7万時間以上の削減効果を生んでおり、AIと組み合わせれば「10倍の70万時間の削減も夢ではない」と見ている。「ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニーである我々のような企業でも、Asanaによって働き方を変革できると感じています。ぜひ、皆さんと一緒に日本企業を元気にしていきたいです」と橋爪氏は語り、講演を終えた。
Asana × AIエージェントの組織利用でプロジェクト管理の自動化を目指す
続いて行われたのは、リーダーズパネルディスカッションだ。テーマは「AIの受け入れと働き方の現在地」。パネリストとして登壇したのは、三菱総合研究所の比屋根一雄氏と、富士通の和田昌之氏だ。
最初のテーマは、「AI導入と働き方改革の取り組み」について。三菱総研の比屋根氏は「数年前からAsanaの導入も含め社内DXを進めてきましたが、ChatGPTが登場して一気に方向性が変わりました。これを使いこなさなければ我々の仕事である研究やリサーチ業務はあっという間に追い抜かれてしまう、そんな危機感がありました」と語る。
三菱総合研究所
執行役員・研究理事
生成AIラボセンター長
比屋根 一雄 氏
富士通
Corporate Digital本部 本部長
和田 昌之 氏
そこで同社では自社の強みにするべく、生成AIの導入を積極的に進めており、また同時に実施したのが、Asanaによるプロジェクト管理の抜本的な改革だ。従来のExcelによる管理では限界があったことから、「Asanaのプロジェクトテンプレートによる効率化や、アジャイルに計画を変更できる柔軟性が非常に有効でした」と比屋根氏は語る。
一方、富士通の和田氏は「AIとAIエージェントは我々の戦略領域そのもの」と強調する。同社では定型化されたプロセスをAIに移行し、人間は意思決定や価値創造にシフトさせる方針を掲げている。すでに社内では、日常的にCopilotやChatGPTを活用するアクティブユーザーが4万9000人を超えたという。「これからは個人利用だけでなく、業務プロセスや組織プロセスにAIを組み込むフェーズへと移行していきます」(和田氏)。
とはいえ、AI導入の理想とのギャップも存在する。和田氏が指摘するのは「AI導入は目的ではない」という点だ。まず業務プロセスを見直し、不要な作業を削減して、できる限り標準化する必要がある。その上でAIをどこに適用し、どの成果を狙うのかを明確にすることが不可欠だという。また、AIの浸透には、ボトムアップで盛り上げていくとともに、マネジメント層の理解とコミットメントも重要だ。「リーダーが自らAIを使い、部下に実践を促すことでスピード感が出てくる」と和田氏は話す。
これに対し比屋根氏は、自社では苦労している点もあると率直に語る。AIに前向きな人材とそうでない人材が混在する中で、いかにボトムアップとトップダウンを両立させるかが難しいという。「最近の業務特化型のAIエージェントは、かなり完成度が上がってきています。自分の不得意な仕事をAIが肩代わりするという体験を、着実に広めていくことが重要です」(比屋根氏)。
こうした時代には、人材に求められるスキルや役割は大きく変化していく。全社員が日常的にAIを使いこなせるようになるためにも、人材戦略を明確にし、人的資本への投資を怠らないことが重要となる。和田氏は、AI活用が必要不可欠となってきている今、「個人利用から業務プロセスや組織プロセスへの移行を徹底し、業務そのものの変革に注力する」と明言する。
また比屋根氏は、業務特化型AIエージェントの性能向上に注目し、「業務変革で業務を切り出し、一気通貫でAIエージェント化していく。AsanaとAIエージェントが組み合わさることで、業務評価の自動化も可能になるはずです。プロジェクト管理そのものが進化していくでしょう」と語った。

現場から見た働き方改革浸透のカギはメンバーの納得感
次のセッションは、現場の最前線で働き方改革を推進する「チャンピオン」たちが語り合う場となった。登壇したのは、村田製作所の村岡一尊氏、商船三井システムズの渡邊寛人氏、KMバイオロジクスの原田拓実氏。現場で直面した課題と、その突破口を共有してもらった。
村田製作所
通信・センサ事業本部
シニアマネージャー
村岡 一尊 氏
商船三井システムズ
グループデジタル推進1部 主任
渡邊 寛人 氏
KMバイオロジクス
CMC技術開発本部 品質技術開発部
品質統括課
原田 拓実 氏
まずは導入時の壁について。村田製作所の村岡氏は、標準ではないツールを導入する難しさを指摘する。「セキュリティーや費用の問題もあり、導入効果をどうフローに落とし込むかに苦労しました」と振り返る。商船三井システムズの渡邊氏は「なぜAsanaなのかを理解してもらうこと、さらに利用者による使い勝手の差をどう埋めるかが課題でした」と語る。KMバイオロジクスの原田氏は、現場の納得感を得ることが最大の壁だったという。「『二度手間ではないか』という声をどう覆すか。文化の醸成に最も力を注ぎました」と明かした。
では、その壁を突破できたのはどのような取り組みだったのだろうか。村岡氏は、1つのプロジェクトだけではなく、複数プロジェクトを連携できる全体効果の可能性を感じてもらえたことが転機になったという。「それを理解したメンバーが声を上げてくれ、情報システム部門も未来性を評価してくれた。そこが突破した瞬間だと思います」(村岡氏)。
渡邊氏は、オンライン説明会を開催したところ、役員からの好意的なメールが全社に配信されたのが大きかったという。これをきっかけに、社内に一気に認知が拡大。さらにはプロトタイプを作り効果を可視化する営みを継続しており、現在も利用部門が増え続けているという。
原田氏は、メンバー一人ひとりに時間をかけて寄り添いながら、実際の業務をAsanaに落とし込む「Asanaフォロー」と呼ぶ支援を実施。業務フローの変化を体感してもらい、便利さや効率化を実感してもらうことで、少しずつ理解者・共感者を増やしたという。その結果、現場から共感の輪が広がり、口コミとともに利用が拡大している。
最後にアドバイスを求めたところ、村岡氏は最適なツールを見極める重要性を指摘し、「ツールの進化が早い中、会社全体として本当にこのツールで良いのか、常にウォッチしています」と語った。また渡邊氏は、業務効率化の魅力を伝えることが大事だとした上で、「利用のハードルを下げる仕組み作りが重要」と強調する。そして原田氏は、「DX計画の目的はツール導入そのものではありません。まず、現場と管理職が本来の目的を共通理解することが重要です。その上で、現場の小さな納得を積み重ねていくことで、ボトムアップの提案が生まれる文化が醸成されるのだと思います」と語った。

これからの時代、AIやAIエージェントの活用による組織全体の生産性向上は欠かせないものとなってきている。今回のイベントのテーマでもある、人とAIが協働する新たな働き方について、紹介した企業の取り組みや考えを参考にしつつ、AI導入における組織全体でのイノベーションの促進を目指してもらいたい。


