⽇経SDGs/ESG会議
サステナビリティ・トランジション
~世界経済激変で変わる経営戦略、非財務開示、サステナビリティ対応~
いま日本企業に求められる
企業統治とは
B&DX
代表取締役社長
安部 慶喜 氏
私たちは持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。
B&DX
代表取締役社長
安部 慶喜 氏
激動の時代のいま、企業経営は従来の延長線上の考え方では立ち行かなくなる。株主提案があった企業数は年々増加し、2025年は過去最多の114社に上った。コーポレートガバナンス改革が注目されるが、その実現はなかなか難しい。日本企業にはどんな課題があるのか、それをどう解決すべきかを考える。
企業の持続的な成長とステークホルダーに対する信頼性の向上を目的とするコーポレートガバナンスへの関心が高まっている。現状ありきでのビジネスに限界が訪れ、不正会計や品質不正などのコンプライアンス違反が顕在化した。企業の経営監督の実効性や透明性確保が重要課題になっている。
株主は、将来にわたって持続的に成長し、利益を生み続けていく力を重視する。日本企業は、成長を左右するイノベーションを長期戦略として練り上げ、その実現につながる無形資産投資に取り組むことが求められている。そこで東京証券取引所と金融庁は共同でコーポレートガバナンス・コードを策定し、企業に自律的対応や仕組み整備を課している。
コーポレートガバナンス・コードは2015年に策定され、21年に改訂された。改訂の主なポイントは「プライム市場では独立社外取締役3分の1以上の選任」「スキル・マトリックスの開示」「他社での経営経験者の独立社外取締役への選任」「委員会構成の独立性」の4点。この改訂により、取締役会機能の実効性強化に対する要請が高まった。
コーポレートガバナンス改革を実質化させるための「アクション・プログラム2025」を金融庁が2025年6月末に公表した。主な論点は6つある。「持続的成長のための経営資源の最適配分」「人的資本投資の開示の充実」「企業と投資家の建設的対話の促進」「監督機能と執行機能の分離」「独立社外取締役の質の向上と過半数選任」「取締役・役員におけるジェンダーを含めた多様性確保」だ。
では日本企業の実態はどうか。
まず、株価が資産価値に対して割安かどうかを判断する目安となるPBR(株価純資産倍率)を見てみる。PBR1倍未満の企業の割合は、日本(プライム市場)が45%、米国(S&P500)が5%、欧州(STOXX600)が14%である。日本はPBR1倍割れ企業が圧倒的に多い(25年7月時点)。
次に取締役会の構造・役割分担などについてはどうか。人数(平均)は日本11.1人、米国11.9人、イギリス10.2人とあまり変わらないが、社外取締役の比率は日本51.8%、米国86.5%、イギリス78.7%で、日本は低い。また女性比率は、日本21.8%、米国34.1%、イギリス42.8%で、こちらも日本は米国や英国より低い(24年時点)。
取締役のスキルについて海外と比較すると、日本は「経営管理、組織・人事、法務コンプライアンス」といった業務執行スキルが欧米より高いとされるのに対して、「経営戦略、ファイナンス、リスクマネジメント、ガバナンス」といった経営スキルが低い傾向にある。日本企業の場合、執行役のまま取締役になり、取締役のスキルを十分に身につけていないといったことがうかがえる。
取締役会の議題や議論の進め方にも課題がある。取締役会の議題(時間配分)を見ると、「個別の業務執行の報告」が37.0%、「個別の業務執行の決定」が32.4%と多くを占めている。つまり、個別の業務遂行に終始し、戦略を話し合っていない。また議論の進め方も、「自身の管掌範囲以外に関心がない・発言しない」という傾向がある。戦略検討や管掌を超えた議論が乏しいのが現実のようだ。
日本企業の取締役会には大きく3つの課題があると考えられる。「経営経験のある社外取締役の獲得」「女性取締役の育成」「取締役に求められる最新知識のインプット」だ。
これらを自社だけで即時に解決するのは難しい。そのため多くの経営者から「企業間で協力する仕組みがつくれないか」「複数の企業が各社の知見・人材を活用し、取締役を強化する仕組みをつくってほしい」という声が数多く寄せられている。
では、取締役はどんなことを体系的に学ぶべきか。それは「取締役に特化した、今の日本企業に求められる実践的な内容」だろう。具体的には、「企業価値評価」「サステナビリティ課題に関する経営リスクと機会」「企業価値を高める資本配分」「経営陣のガバナンス設計」「戦略としての投資評価」といったテーマだ。
企業価値を長期で考えたとき、今の判断が正しいのか、ほかに選択肢はないのか。他社はどういった局面でどう乗り越えたのか。そうしたことを実践的に学ぶ手段として、転職せずに他業界へ出向し、異なる企業文化を経験しながら、視野の多角化・対応力向上を目指すやり方が考えられる。
異なる企業文化の中で学ぶべきは、知識ではなく、意思決定のスピードとプロセス、顧客との関係性、リスクへの許容度、グローバル環境、評価などの制度、ビジネスモデル、マーケティング手法、コーポレートの体制だ。
現役の役員が他社の社外取締役を兼務する例が増えれば、社外取締役の質と量の充足につながるだろう。また、異なる企業の取締役同士が「同意なき買収提案」や「生成AIの戦略的活用」といった最新課題について意見交換することで、経験やノウハウを身に付けられる。
こうした考えに基づき、B&DXでは日本企業の取締役会を強化する企業コンソーシアムを企画中だ。今年中には発表したいと考えている。