

業務効率化にとどまらず、業界変革にも影響を及ぼしつつあるAI活用。製造業においては十分な活用に至っていないのが課題の一つであったが、ここに果敢に挑み、グローバル規模でシェアを拡大しているのが、製造業に特化したAIデータプラットフォームを展開するキャディである。独自の大型カンファレンス「CADDi UNLEASH」も開催した代表取締役の加藤勇志郎氏に、同社が推進する製造業変革への取り組みとその思いを聞いた。
キャディ 代表取締役
加藤 勇志郎氏
2017年にキャディを創業。「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに、製造業のグローバルな変革を目指す。2024年に祖業である加工品の部品調達プラットフォーム事業をクラウド事業に統合し、「製造業AIデータプラットフォームCADDi」として新たにかじを切った。日本をはじめ米国、ベトナム、タイを含む4カ国で事業を展開。
製造業でグローバルにシェアを拡大し続けている「製造業AIデータプラットフォームCADDi(以下、CADDi)」。同プラットフォームは、製造業に特化して独自開発されたAIを用いて、設計図面や3DCADデータ、品質不良や不具合に関する記録、データ化されていないアナログの仕様書など、多種多様なフォーマットの情報を資産として活用できるようにすることが大きな特長だ。同社代表取締役の加藤勇志郎氏は、その効果についてこう説明する。
「『CADDi』は、各社が積み上げてきた知見を取り込んで、製造業に多い非構造化データを構造化・統合し、活用できるようにするのが強みです。例えば、新たな製品を作る際、過去の試作品や不具合のデータを参照し生かせるなど、いわゆる『車輪の再発明』を避け、意思決定を高度化することで、生産性を高めることができる点が大きなメリットです」(加藤氏)
属人性からの脱却も、製造業においては大きな課題だ。これについても加藤氏は、「製造業ではどうしてもベテランの経験や勘に頼ることが多いのですが、データが資産化され、誰でも使える形になれば、離職や退職による生産性の低下を防ぐことができ、技術継承の面でも大きな恩恵があります」と説明する。
加えてもう一点、注目すべきなのは、同プラットフォームとグローバルとの親和性の高さだ。
「技術力のある中小企業がグローバルな取引をしている例は少なくありませんし、大手なら取引の半分以上をグローバルシフトしているケースもあります。『CADDi』は当初からグローバル展開を前提に開発しましたが、これはより広い範囲でデータを構造化し、効果を最大化する狙いがあったからです」(加藤氏)
日本発のプラットフォームである「CADDi」がグローバルな製造業の変革を推進できているのは、もともと製造業自体がグローバルな産業であることもその要因の一つであることが、加藤氏のコメントから分かる。また、構造化が困難であるという製造業における課題が世界共通の課題である点も重要である。実際、キャディは現時点でも米国、ベトナム、タイに拠点を持ち、今後もさらに拠点を増やしていく予定だという。
そうはいっても、世界中の製造業で使われている複雑かつ膨大なデータを解析・統合し、プラットフォームで扱えるようにするのは高いハードルがある。同社がこのような困難を乗り越えられたのには、理由がある。
キャディの創業は8年前。「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに掲げ、当初は部品調達のための受発注プラットフォームを運営し、順調に事業を伸ばしていた。しかし、取引量が増えれば増えるほど、データが構造化されていないという課題感が大きくなっていったと加藤氏は振り返る。
「我々自身が祖業でモノづくりを経験していたからこそ、現場で働く設計者や職人の悩みも熟知していましたし、個別最適でとどまってしまうという製造業の構造的な課題も身に染みて理解できたのです」(加藤氏)
こうした製造業への深い理解と課題解決への強い思いに加えてもう一つ、加藤氏が企業変革を推進するために重要な要素と考えていたのが、「ダブルループ」という概念だという。
「中長期的に見たときに、データの構造化は重要ではありますが、現場にとって目先のメリットがないままデータ入力のような地道な作業を長期間強いられることは、現場のモチベーションを奪い、ひいては生産性の低下も招きかねません。そこで当社では、中長期ループと短期ループ、スパンの違う2つのループを同時に回し、両立させることを重視しています」(加藤氏)
同社は、価値が出るまでの時間の短さを大きな売りにしている。つまり、時間をかけて標準化できればそれでいいというのではなく、使い始めてすぐに現場の役に立つことも同時に重視するという考えが根底にあり、これを可能にするのがAIを取り入れたデータプラットフォームである「CADDi」なのだ。
「積み上げてきた知見やデータを、時間・人・場所の壁を越えて資産とし拡張していくことで、若手からベテランまで、製造業に携わるすべての人が挑戦できる世界が生まれ、『モノづくり産業のポテンシャルを解放する』ことになると考えています」(加藤氏)
「製造業AIデータプラットフォームCADDi」は、独自開発のAIで製造業のデータを集約・構造化し、様々な機能を持ったソリューションやアプリでデータを活用する。今後も製造業のサプライチェーンを横断する様々なソリューションやアプリを追加していく予定だ
25年9月3日、キャディは製造業の経営者層向けの大型カンファレンス「CADDi UNLEASH」を初開催した。
「企業の変革を進めていくという強い課題意識を持つ経営者や推進者は、社内で孤立感や孤独感を抱くケースが少なくありません。そんな思いを持った経営者が一堂に会することで、横のつながりを築き、さらにそれを各社が持ち帰ることで、製造業変革の機運や熱を業界全体で高めたいと思い、このカンファレンスを開催しました」(加藤氏)
同カンファレンスをはじめ、キャディは製造業に変革の火を灯し、より創造的な仕事にフォーカスできる取り組みを加速させていくという。その変革のプラットフォームになるのは、世界に先駆けた価値を提供しグローバルスタンダードになる可能性を秘める「CADDi」だ。加藤氏は最後にこう語る。
「知見やデータの構造化、そしてこれを変革につなげる推進力を担っているのは、製造業に従事する『人』です。当社はこれからも製造業のポテンシャルを解放するパートナーとして、共に変革していきます」