三井住友銀行が取り組む人事改革 コンセプト開発から発信までをdentsu Japanが支援 三井住友銀行が取り組む人事改革 コンセプト開発から発信までをdentsu Japanが支援

電通総研 コンサルティング本部
コンサルティング第2ユニット シニアエキスパート
高橋 舞 (左)
三井住友銀行 人事部 副部長
北山 剛 (中)
電通 第16ビジネスプロデュース局
アカウントリード4部 アカウントリード
中井 翔 (右)

三井住友銀行は2026年1月、四半世紀ぶりに人事制度の抜本的改定を実施する。
新制度では、実力本位・専門性重視の評価軸を打ち出し、
従業員一人ひとりが自律的にキャリアと働き方を選べる仕組みを目指す。
新たな人事制度の名称は「STAGE」。
ここで掲げたコンセプトと同行が描く未来像、そして導入にあたっての実行施策のポイントとは何か。
人事制度改革をリードした三井住友銀行の北山剛氏と、
伴走支援を担ったdentsu Japan(国内電通グループ)のキーパーソンに訊いた。

聞き手 日経ビジネス発行人 松井健

多様性を成長につなげる新たな人事制度を設計

松井 三井住友銀行が大きな人事改革に乗り出した背景を教えてください。

北山 当行では定期的に人事制度改定を行い、最近では2020年にも比較的大きな改定を実施しています。ただ、その根幹部分は2001年のSMBC発足以来ほぼ変えておらず、昨今の社会環境の変化に対応しきれないという課題がありました。

松井 銀行を取り巻く環境が様変わりしているということでしょうか。

北山 はい。新卒採用も海外採用やコース別採用など複線化していますし、キャリア採用も毎年200人以上に増え、キャリアも価値観も多彩なメンバーが集まる中で、従来の制度運用には限界を感じていました。従業員と企業が「選び、選ばれる関係」であり続けるためにも、10年先を見据えた抜本的な人事制度改定に踏み切ることにしました。

三井住友銀行 人事部 副部長

北山 剛

松井 新しい人事制度によって、目指す姿をお聞かせいただけますか。

北山 2023年に策定した「SMBCグループ人財ポリシー」に基づき、多様でプロフェッショナルな従業員が挑戦し続け、働きがいを感じる職場とチームの実現を目指しています。そのために掲げた3つのコンセプトが、「プロフェッショナリティ」「実力本位」「DE&I」です。

人財ポリシーの良循環

「選び、選ばれる関係」を軸に、
従業員と会社の双方が成長し続ける未来を目指す
「SMBCグループ人財ポリシー」

松井 具体的には、どのような制度変更を行ったのですか。

北山 大きなポイントは、「階層別職務等級制度」の見直しです。これまでの制度は年次とポストがある程度連動していましたが、多様化した組織においては、それが等しく当てはまるとは限りません。そこでスキルと専門性を持つ人が評価されて活躍できるよう、一律の年次運用を撤廃し、業務領域毎に応じた実力本位を徹底する方向で制度設計を進めました。

松井 新しい制度が整っても、従業員の意識を変えるのは大変そうです。

北山 おっしゃる通りで、制度改定は「設計2割、実践8割」とよくいわれます。当行の従業員は約2万8000人。その一人ひとりが、いかに「自分ごと」として捉えられるかが肝となります。また、運用にあたっては上司が理解し、部下に浸透させていくことが不可欠です。そのため、誰にどのようなメッセージを届けるかも大きな課題でした。

共創から生まれた従業員に響く新制度スローガン

松井 今回の制度改革では、dentsu Japanの伴走支援があったと伺っています。

北山 制度設計から、運用フェーズに至るまでのコミュニケーション施策に力添えをいただきました。大きな改革となるだけに、新人事制度にこめた真意が伝わり、浸透・定着するためには、時間と労力をかけた丁寧なコミュニケーションが重要だと考えたためです。

松井 dentsu Japanの支援について、具体的に教えていただけますか。

中井 人事変革の「実行」に関わる、スローガン開発やコンセプトムービー、ガイドブックの制作など全般を担当させていただきました。人事戦略やクリエイティブに特化したチームを立ち上げ、まずは三井住友銀行のDNAや「らしさ」を理解することからスタートしています。

電通
第16ビジネスプロデュース局 アカウントリード4部
アカウントリード

中井 翔

高橋 30代を中心とした従業員の皆さんと、「自らが働きたくなる制度」を議論しながら開発を推進・伴走しました。インタビューやアンケートを通じて、三井住友銀行の皆さんから最も多く出てきたキーワードが「お客様のために」。そこに感じた三井住友銀行のDNAを土台に、新人事制度をどう自分ごと化してもらうかを考えました。人事の用語って難しいし「会社目線」ですよね。それを、「従業員目線」「従業員言葉」で翻訳・可視化することを意識しました。従業員の皆さんを巻き込んで、一緒に作っていくところがdentsu Japanならではのアプローチです。

電通総研
コンサルティング本部 コンサルティング第2ユニット
シニアエキスパート

高橋 舞

中井 そうしてこそ、納得と共感が生まれ、先ほど8割と北山さんもおっしゃっていた「実践」の部分がうまくいくのだと考えています。最終的に生まれた新人事制度名は「STAGE」。スローガンは、「あなたを磨き続ける舞台を。」です。

北山 人事制度はあくまで舞台装置。その舞台に上がり、スポットライトを浴びるのは従業員です。一人ひとりが輝くことで、お客さまや社会に貢献していくという思いを込めました。我々が言語化できていなかった部分を形にしていただいたおかげで、行内からもいい反応が得られています。

松井 まさにdentsu JapanらしいHRコンサルティングの様子がうかがえます。最後に、今後の展望をお聞かせください。

北山 2026年1月の新人事制度スタートに向けて、マネジメント研修に力を入れると同時に、人事制度そのものに対する従業員の理解を深めていきます。銀行は社会全体の幸福や発展に貢献していく「社会の公器」の側面があり、その価値は「人」で成り立っています。お客さまや社会から最高の信頼を勝ち取り続けるためには、従業員一人ひとりがプロ意識を持ち、自分自身を磨き続けていくことが大切です。

高橋 戦略や制度は、実際に従業員に使ってもらうことができてこそ、価値を発揮します。dentsu Japanとしては、今後もクライアントさんの「変革」「変化」にしっかりとつながっていくような人事領域のパートナーを目指していきたいと考えています。

取材を終えて

日経ビジネス発行人 松井健

従業員一人ひとりが「自分ごと」として受け止められる人事制度改定。その実現に向け、三井住友銀行がdentsu Japanとともに対話を重ねてきた姿勢に、本気度を感じました。特に驚いたのは、銀行人事というある種の聖域にdentsu Japanがこれほど深く踏み入り、伴走支援を行っている点です。今回の制度改定は、これまで四半世紀を支えてきた人事の根幹にまで切り込む内容だけに、腹落ちできるストーリー設計は不可欠。伝え方にも高度な工夫が求められるなか、広告・マーケティングでの知見をベースに、BXやHR領域でも独自のコンサルティングを展開するdentsu Japanの強みが生きた好事例といえるでしょう。業界の枠を超えたチャレンジの成果に、今後も注目したいと思います。