──みずほ銀行は、法人向けポータル「M’s Palette」(※1)を2024年10月にリリースしています。法人向けサービスをワンストップで利用できるポータルとのことですが、具体的にどのようなサービスを提供しているのでしょうか?
みずほ銀行 大澤氏 現在、ご利用いただけるのはインターネットバンキングの申し込みや、帳票・調査レポートの閲覧サービスなどです。ただし、これらのサービスは「M’s Palette」で提供を予定しているメニューのほんの一部にすぎません。
我々が目指しているのは、お客さまがリアル店舗で行っている手続きや、情報入手、ご相談などをオンラインでできるようにすること。そんな利便性を提供するため、継続的にメニューを拡充していく予定です。
2025年には届け出事項変更手続きメニューをリリースする予定です。これまではお客さまの届け出情報に変更が生じた場合、ご来店いただいて変更内容を書面でご提出いただく必要がありました。届け出事項変更については、お客さまの取引状況に応じて手続内容が異なるため、お客さまや対応する社員に対しても大きな負担をかけていました。デジタルを活用して、お客さまと行員の負担を解消していきたいと考えています。
また、みずほ銀行は現在、法人のお客さま向けにインターネットバンキングをはじめとする様々なWebサービスを提供していますが、従来はサービスごとに別々のIDを入力して利用する必要があったところ、「M’s Palette」のページを開き、専用IDを1回入力するだけで、すべてのサービスが利用できるようになります。
──いわゆるシングルサインオンですね。1つのIDで多様なサービスが利用できるようになれば、顧客の利便性は格段に高まるのではないかと思います。「M’s Palette」は、どのように開発を進めておられるのでしょう?
みずほ銀行 小川氏 当行には、お客さまへのアンケートや行員からの声など、サービスの改善に関する要望が膨大に蓄積されています。それらを総ざらいする中で、「店舗に行かないと手続きができないのは不便だ」「経営に役立つ情報をもっと簡単に入手したい」といった課題が浮かび上がりました。これらの課題を類型化し、お客さまにとって利便性の高いもの、行員の生産性向上につながるものを優先順位付けしながら開発を進めています。
これは「M’s Palette」に限った話ではなく、法人向けのコンタクトセンターやFAQなど、お客さまとのあらゆる接点に関わることです。みずほ銀行は、これらのすべてをデジタルの力で改善する「法人DXプロジェクト」に全行を挙げて取り組んでおり、「M’s Palette」はそのサブプロジェクトの一つという位置付けです。
~(一部抜粋)本システムの開発・導入にあたっては、高度な技術力を有しグローバルで幅広い業界に対してシステム開発/サービス提供実績がある株式会社 NTT データと、金融機関向けの戦略策定からバンキングソリューション(「BankingSuite」)による開発に至るまで一気通貫での支援が可能なデロイト トーマツ コンサルティング合同会社と協働し、ビジネスの変化・発展に対応する柔軟かつアジリティの高いシステムを実現しました~
──DTCは、「M’s Palette」の戦略・構想策定から開発までサポートされたとうかがっています。具体的にどのような支援サービスを提供されたのでしょうか?
DTC 丸山氏 法人ポータルの狙いは、手続きの利便性向上、法人のお客さまの課題解決・競争力強化を支援するための情報やツールの提供の2点です。この2つを実現するための戦略・構想策定から始まり、要件定義、UX/UIデザイン、設計、開発まで、一気通貫でご支援しました。
戦略・構想策定では、どのようなコンテンツを提供し、マーケティングを打っていくのかという具体的な施策の落とし込み、開発の段階では、法人のお客さまに対するヒアリングなども行い、どうすれば魅力的なポータルに仕上がるのかを仮説と検証を繰り返しました。
──「M’s Palette」は、デロイトのグローバルアセットである「BankingSuite」(※2)を基盤として開発されたそうですね。これは、どのようなアセットでしょうか?
DTC 丸山氏 「BankingSuite」は、ポータル画面を構成する要素や、金融業務における認証、口座開設、預金、送金、ローンなどの基本機能をアセット化したテンプレートです。「M’s Palette」では、画面構成要素のアセットを活用しており、画面のボタンやフォームなど、あらかじめ用意された部品を組み合わせることで画面が作れるので、画面の追加・修正を機動的に行うことができます。我々はこの技術を、マイクロ・フロントエンド・アーキテクチャーと呼んでいます。
──DTCは、地域金融機関のDXを支援する「地域DX伴走支援」という取り組みを始動されたそうですね。どのような経緯で始動に至ったのかについて教えてください。
DTC 伊東氏 DTCは、地域金融機関とも幅広いお付き合いがあるので、それぞれの金融機関が抱えている課題を深く理解しています。
地域金融機関のお客さまである地域企業は、様々な経営課題を解決に導いてくれる相談相手として、地域金融機関に大きな期待を寄せています。ところが、そうしたお客さまのニーズが十分にくみ取れず、ご満足いただけていないケースも少なくありません。
手続きの利便性を高めることはもちろん、お客さまがどんな商品やサービスを求めているのかという顕在・潜在ニーズを浮き彫りにするためにも、データ収集・分析のきっかけとなるサービスのデジタル化が欠かせません。
逆に、地域金融機関のデジタル化が進まないと、地域経済の発展をけん引すべき本来のポテンシャルが発揮できなくなります。これが、地域金融機関が抱えている本質的な課題であると我々は考えています。
DTCは、地域金融機関のDXを支援することで、金融機関のみならず、その先にいる地域企業、さらには地域経済の活性化に貢献していきたいと考えています。そのためには、「M’s Palette」など法人ビジネスのDXで先行しているみずほ銀行とノウハウを持ち寄りながら進めることが望ましいのではないかと考え、両社の思いが1つになって「地域DX伴走支援」構想の立ち上げに至りました。
みずほ銀行 大澤氏 おかげさまで「M’s Palette」をリリースしてからの反響は非常に大きく、地方の金融機関からもお問い合わせをいただくようになりました。
お話をうかがっていると、お客さまの手続利便向上やビジネスサポート高度化、社内の業務負担改善や営業力強化が重要なテーマになっていると感じます。私共と同じ課題認識を持たれて、歩みを進められようとしている金融機関が多くなっています。
銀行業界全体で取り組みが進むと、お客さまにとってより大きな改善効果を感じていただけるようになると考えています。
──「地域DX伴走支援」では、具体的にどんなサービスを提供される予定でしょうか?
DTC 伊東氏 まだ具体的な支援メニューが固まっているわけではありませんが、「学ぶ」「試す」「実践する」の3つのテーマでみずほ銀行とノウハウを共有しながらご支援するのが良いのではないかと考えています。
「学ぶ」は、地域金融機関の行員の方に、みずほ銀行の法人ビジネスに関するDXプロジェクトに参加していただく支援方法です。プロジェクトメンバーの一員として、構想の策定から実行までのプロセスに携わることで、体系的なフレームワークや実践的なスキル・ノウハウを持ち帰ることができ、自行のDX戦略・施策の構想の参考にしていただけるのではないかと思います。
「試す」は、既存のアセット等を利用し、自行のポータルなどのプロトタイプを試作して施策実現時の効果を体感いただく支援方法で、デロイト トーマツは、プロトタイプの作成やPoCができる場の構築などを支援することが可能です。
「実践する」は、DXを推進する上で不足するシステム・人的リソースを補完する支援方法です。デロイト トーマツには様々な専門人材がそろっているので、適時適切な人材の供給が可能です。
みずほ銀行 大澤氏 地域金融機関には各社それぞれのビジネス戦略がありますし、デジタルを活用して目指す姿も異なると思います。手続きのしやすさ、ビジネスサポートの充実等、重きを置く領域も異なるでしょう。
みずほ銀行では、法人ビジネス領域の課題に関して網羅的な改善に着手し、打ち手の一つとしてM’s Paletteを構築してきました。初期構想からリリースするまでに約3年かかっていますが、その間、様々な試行錯誤や紆余曲折がありました。
戦略・戦術を根本から見直す際には、手触り感がないと何から検討するか、進む方向は確かなのかをつかみかねると思います。このような取り組みが世にあれば、私共ももっとスピーディーに歩みを進められたと思います。
──最後に、DX推進に踏み出そうとしている地域金融機関にメッセージをお願いします。
みずほ銀行 大澤氏 DXは既存のビジネスに大きくメスを入れることになります。変革を進めるためにはエネルギーが必要ですし、お客さまが望まれるものを追求する観点でも第三者の目が役立つと思います。
DTC 丸山氏 業務やサービスのデジタル化を進めれば、行員の皆さんはより付加価値の高い業務に注力できるようになります。リアルでの営業の質やスピードを上げるためにも、一緒にDXに取り組んでいただきたい。我々が全面的にご支援します。