住友林業のサステナビリティ発信は「未来構想ストーリー」を重視 住友林業のサステナビリティ発信は「未来構想ストーリー」を重視
電通が共通言語づくりで「企業価値」可視化に伴走 電通が共通言語づくりで「企業価値」可視化に伴走
「ウッドサイクル」という言葉によって、理念が一気に社内外へ広がりました。 「ウッドサイクル」という言葉によって、理念が一気に社内外へ広がりました。
複雑な事業構造を一貫したストーリーへ整理し、理解される形に落とし込みました。 複雑な事業構造を一貫したストーリーへ整理し、理解される形に落とし込みました。
サステナビリティを“企業価値”に変える

住友林業の未来構想を支える電通の経営伴走

森林経営から木材流通・木造建築・バイオマス発電まで、「木」を軸に事業活動を展開する住友林業。
木の循環を通じて脱炭素社会の実現を目指すバリューチェーンを、同社は「ウッドサイクル」と呼ぶ。
これは事業モデルを示すだけでなく、価値創造の基盤として全ステークホルダーと共有する共通言語でもある。
ビジョン策定からワード開発、対外のコミュニケーション設計までを伴走支援したのは、電通だ。
複雑な事業構造を一貫したストーリーへ整理し、世の中に理解される形に落とし込んだ。
「ウッドサイクル」に込めた想いや狙い、そこから生まれた波及効果とは──?
住友林業 代表取締役社長の光吉敏郎氏と、電通の小野総一氏に訊いた。聞き手 
日経BP 経営メディアユニット長補佐 山崎 良兵

両社の取り組みについて語り合う
インタビュー動画

自利利他を貫く住友林業の事業精神

1691年の「別子銅山」開坑とともにその銅山備林の経営を担ったのが、住友林業の始まりだ。明治期には過剰伐採と煙害による森林荒廃を食い止めるために、当時の別子支配人、伊庭貞剛が「大造林計画」を樹立。年間200万本を超える植林を続け、緑の森を取り戻した。

光吉 敏郎

住友林業
代表取締役社長

「ESGという概念がまだ存在しない時代から、木を循環させるサイクルを事業の根幹としてきました。そのDNAは、今も社員一人ひとりに息づいています」と、住友林業 代表取締役社長の光吉敏郎氏は語る。

森を育て、木を使い、再び植える。330年以上にわたり受け継がれてきた営みを、住友林業は「ウッドサイクル」という事業モデルに体系化した。森林経営から木材・建材の製造流通、木造建築、そしてバイオマス発電に至るまで、すべての過程を循環させることで、環境的・社会的・経済的価値を同時に創出する取り組みだ。

その背景には、自らを利すると同時に社会や環境を利するという、住友の事業精神「自利利他公私一如」の理念がある。

森林経営から木材、建築、エネルギーまで、「木」の循環を生み出す住友林業グループの「ウッドサイクル」。このモデルを国内外に展開することで、「自利利他」に資する環境・社会・経済の3つの価値をグローバルに創出していく

「森林経営や木材の活用による環境価値、森林や地域に雇用を生む社会的価値、そして企業として利益を上げる経済的価値。この3つの価値を循環させ、グローバルに展開していくことが、『自利利他』の実践につながると確信しています」(光吉氏)

全ステークホルダーに向けた共通言語「ウッドサイクル」

こうした構想を広く社会に伝えるため、住友林業グループは長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を2022年2月に発表。その策定段階から伴走支援してきたのが、電通である。

「ビジョン策定では、複雑な事業構造を一貫したストーリーへ整理し、世の中に理解される形に落とし込むことが課題でした」と、電通の小野総一氏は語る。それを一言で表す言葉として考案したのが「ウッドサイクル」だ。

「事業や環境への理解度は、ステークホルダーごとに様々です。より多くの人に事業内容や理念を伝えるためには、“正確さ”に加えて“わかりやすさ”も重要となります。『ウッドサイクル』は事業を象徴するだけでなく、様々なステークホルダーをつなぐ共通言語となるもの。これを対話の起点とすることによって、全方位に向けたアプローチができると考えました」(小野氏)

たとえば、広告やCMでは適切な森林管理と木材活用が環境保全につながることを、シンプルなメッセージで表現。採用広報や社内発信では、その背景や意義を丁寧に説明するなど、情報の解像度を調整して伝える柔軟なアプローチが可能となった。

小野 総一

電通 フューチャー・クリエイティブ・センター
兼サステナビリティコンサルティング室
エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター

「電通さんとの議論を通じて、私たちの事業価値を誰もが理解できる形に整理することができました。『ウッドサイクル』という言葉を共に磨き上げたからこそ、理念が一気に社内外へ広がったのだと思います」(光吉氏)

一人ひとりの挑戦を明確化し循環の輪をグローバルへ

住友林業グループは、「事業とESGの更なる一体化」を中期経営計画の基本方針に掲げている。「ウッドサイクル」は、その実現に向けた社員一人ひとりの行動指針としても機能しているという。

「一連のサイクルの中で、自分がどの役割を果たし、どう社会に貢献しているかの理解が深まり、誇りにもつながっています」(光吉氏)

それは、「ウッドサイクル」が社員にとっても腹落ちできるストーリーであったからに他ならない。

「“What to do(何をすべきか)”までを示せたから、社員の方も動きやすかったのでしょう。信念とやりがいをもって働く人が増えるほど、企業は成長します」(小野氏)

住友林業グループは、2030年までに世界で管理する森林面積を100万ヘクタールへ拡大し、木造建築を通じて炭素固定量をさらに高める構想を描く。北米やオーストラリアでは戸建住宅、東南アジアでは植林事業の展開を加速していく。その事業基盤となる「ウッドサイクル」は、国内外2万7000人に及ぶグループ社員全員の挑戦を力強く支えていくに違いない。

取材を終えて

日経BP 経営メディアユニット長補佐 山崎 良兵

顧客、従業員、投資家など、多様なステークホルダーと向き合うためには、
企業の中核的な価値をわかりやすい言葉で明快に伝えることが極めて重要です。
「ウッドサイクル」という一言にたどり着くまでには、住友林業と電通の関係者は何度も議論を重ねました。
様々なステークホルダーに一番伝えたいメッセージを届けるために、
難しい言葉を言い換えることによる「わかりやすさ」と明治時代の植林活動などを含む
歴史を踏まえた「ストーリー」を重視した電通のコミュニケーション支援が力になりました。
脱炭素・循環型社会を世界へ広げていく住友林業の事業活動、
そして電通のコミュニケーション戦略に今後も期待しています。