FOCUS
  • 循環型経済のけん引
  • 産業構造の革新
  • 生活の質向上
  • 社会的責任の遂行

持続可能な未来への高い目標に挑み「省・小・精」で環境経営をけん引

セイコーエプソン株式会社
代表取締役社長

小川 恭範

PROFILE

1962年生まれ。1988年東北大学大学院工学研究科修士課程を修了し、セイコーエプソンに入社。2017年執行役員、2018年取締役執行役員 技術開発本部長、2019年取締役常務執行役員を経て、2020年から現職。

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セイコーエプソンは創業以来、環境と共生しながら事業を展開。無駄を省いて小さく精密なものづくりを行う「省・小・精」をキーワードに掲げ、そこから生み出す価値で、サステナブルな未来の実現を目指している。目標に向けた強い覚悟と推進中の取り組みについて、同社代表取締役社長の小川恭範氏に聞いた。

 長野県で、ウオッチの部品組み立て工場として創業したセイコーエプソン。事業がグローバルに成長する中にあっても、「自然豊かな諏訪湖を汚してはならない」という創業者の意思を受け継ぎ、地域の環境と共生しながらビジネスを続けてきた。その後も、フロンによるオゾン層破壊が問題になっていた1980年代には世界に先駆けてその全廃を表明し、達成するなど環境先進企業として存在感を示してきた。

 同社では、2022年9月に「『省・小・精』から生み出す価値で、人と地球を豊かに彩る」というパーパスを制定した。

 「大きなことや量が多いことが豊かさの象徴だった時代から、今後は無駄を省き、コンパクトかつ精密・精緻を追求したものづくりが求められる時代になります。それが、こころの豊かさやより良い地球環境につながる。パーパスにはそんな思いを込めました」と、代表取締役社長の小川恭範氏は語る。

 パーパス制定に先立ち、2021年に策定した長期ビジョン「Epson 25 Renewed」では、今後のありたい姿として「『省・小・精の技術』とデジタル技術で人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する」と宣言。「環境」「DX」「共創」という重点分野も明文化した。

「実現できるか」ではなく
「実現する」という強固な決意で

 長期ビジョンの三本柱の中でも、同社が特に注力するのは、環境分野だ。2008年に掲げた「環境ビジョン2050」を2021年に改定し、カーボンニュートラルを超える「カーボンマイナス」と「地下資源※1消費ゼロ」という2つの高い目標を打ち出している。

 「達成のためには技術開発や設備投資が不可欠で、ハードルは高いと感じています。しかし、これは環境を重視する企業として一歩先を行く決意表明でもあります」

 ビジョンの実現に向けては、具体的なロードマップを描いており、中期的な進行のシナリオ「中期環境活動計画」も定めている。サプライチェーンにおける温室効果ガス(GHG)排出量については、2030年までに2017年度比で55%削減することを目指す。一方で脱炭素や資源循環、環境技術開発において、10年間で1000億円の費用投下を明言するなど、覚悟を持って改革を推し進めている。

 「非常に高い壁であるカーボンニュートラルのさらに先をいくカーボンマイナスを狙います。当社にはかつて、フロンレスという高い目標を掲げて達成してきた実績があります。カーボンマイナスも『実現できるか』ではなく『実現する』という意識で、全世界のエプソングループ拠点※2での使用電力100%再生可能エネルギー化を早期に完了するなど、やるべきことに真摯に向き合っています」

※1 原油、金属などの枯渇性資源
※2 一部、販売拠点などの賃借物件は除く

■2050年までに「カーボンマイナス」「地下資源消費ゼロ」を実現するための計画(目標・主な施策)
* 2017年度比のスコープ1、2、3排出量
環境戦略と事業戦略を両立させた「環境価値創出シナリオ」を全事業で策定し、2050年までの「カーボンマイナス」「地下資源消費ゼロ」を目指している。

 使用電力の100%再エネ化を継続するための施策の1つとして、「今後も再エネの需要が高まることを鑑みて、外部からの調達割合を抑えるために長野県にバイオマス発電所の建設を計画中です」と小川氏。燃料には、主に南信州エリアの未利用材(木材)やバーク材、キノコ培地のほか、一部社内から排出する木製パレットを活用する考えだ。予定する2026年の稼働が始まれば、社会全体の再エネの活用普及への大きな弾みになるだろう。

■セイコーエプソン初のバイオマス発電所の建設を計画中
図:セイコーエプソン初のバイオマス発電所の建設を計画中 継続的な自社の再エネ活用推進と、外部調達割合低減による社会全体の再エネの活用・普及を目的として、長野県飯田市に自社初のバイオマス発電所の建設を計画中。2026年度中の稼働開始を目指す。

循環型社会実現を視野に
独自技術に磨きをかける

 またもう1つの目標である「地下資源消費ゼロ」に向けた技術開発にも余念がない。すでに使用済みの紙から再生紙を生み出すなど、繊維素材の高機能化を実現する独自の技術「ドライファイバーテクノロジー」を擁しているが、さらなる技術向上を目指す。

 「古紙や端材を再生した包装材や緩衝材は、すでに実用化しています。さらにこれを再生繊維や再生糸、バイオプラスチック等に応用する道筋も見えており、今後の環境ビジネスの重要技術になっていくでしょう」

 さまざまな再生材を生み出すこの技術が確立されれば資源循環が進み、地下資源消費ゼロ、ひいては循環型社会の実現にもつながっていくはずだ。

 社会課題を解決することで、サステナブルな社会を実現していく。同社が描く将来像は、「環境と事業活動が両立してこそ成り立つ」のだという。

 「私たちのパーパスである、『省・小・精』から生み出す価値を追求し続けて環境に貢献することで、企業の成長、同時にサステナブルな未来の実現につなげていきます」

SDGs:2015年9月の国連サミットで採択された、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標」

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