- エネルギー&GX/Persefoni Japan
Scope3算定を支える
炭素会計の民主化と温暖化対策
地球温暖化による気温上昇はあらゆるところに影響を及ぼしている。この気温上昇を抑えるためにグローバルに温室効果ガスの削減努力が要請されるようになり、各国の事情に応じた取り組みが進められている。日本でも2020年に「2050年でのカーボンニュートラル」が宣言され、日本政府がイニシアチブを取って進められている。こうした中、予算も人材も不足する中小企業はどこから取り組めば良いのか。Persefoni(パーセフォニ)の日本法人の2人が解決策を提示した。
(聞き手:日経ビジネス発行人 松井 健)
体重計で体重を知ってから
ダイエットのやり方を決める
カントリーマネージャー
坂本 晃一 氏
松井 地球温暖化問題の解決の現在地についてどう見ていらっしゃいますか。
中井 災害が多発している中で地球温暖化は日々の関心事項になっています。カーボンニュートラルの取り組みの足並みに違いがあっても、全体としてその流れが止まるようなことはないでしょう。
坂本 統計上でも気温は上昇していますし、気候変動が人為的であることは科学的にも実証されています。温暖化が進むほど気温は上昇し、その結果どんなリスクが高まるか5つのシナリオが提言されています。日本では最悪のシナリオの場合に、30度を超える真夏日の日数が北海道でも34日以上になり、沖縄では1年間の半分以上になると予測されています。
気候変動は家計にも影響を及ぼしています。洪水や干ばつ、山火事などによって食料品が高騰し、米国では水道料金や住宅の保険料が上がっています。経済への損失も大きく1998年から2017年の間に起きた気候変動に伴う自然災害による経済損失は約250兆円にも上っています。
松井 ビジネスモデルも変わり、サプライチェーンにも影響を及ぼすだけに、無視できませんね。
坂本 そこで温室効果ガスの削減努力が要請され、その取り組み状況の情報開示が今後ルール化され、2027年にはプライム市場の上場企業から開示が義務付けられていきます。それに対応するには、今自社はどういう状況なのかを知らなければなりません。人間が体重計に乗って体重を知ってから、ダイエットのやり方を決めていくのと同じです。
中小企業の温室効果ガス排出量の見える化
無償で炭素会計ツールを提供
サステナビリティアドバイザリーボード
中井 徳太郎 氏
松井 温室効果ガスの削減努力の情報を開示するために求められるのが、炭素会計ですね。以前から言われていますが、なかなか定着していない感がありますが。
坂本 現状を把握する上で一番重要なのが温室効果ガス(GHG)プロトコルですが、仕組みが少し複雑です。自社での燃料の燃焼によるScope1と自社の電気の使用量によるScope2に加えて、サプライチェーンの上流と下流での温室効果ガスの排出量であるScope3も把握することが求められています。
このScope3には15のカテゴリーがあり、自社の企業の活動に応じて排出される量を各種のデータを活用して推計し、より実際の排出量に近い数値を算定します。ただ、一般的にはこのScope3が全体の6割から7割を占めていると言われ、どのような算定方式を使って計算すべきかが、日本企業にとって一番の悩みのポイントになっています。
さらに日本にとって問題なのは、企業の99.7%を中小企業が占めていることです。つまり大企業だけが炭素会計を取り入れても、温室効果ガスの問題は解決しないのです。中小企業も実行できるように、炭素会計の民主化が必要なのです。
中井 経済を活性化させるには脱炭素だけでなく、環境価値をお金に変えるカーボンクレジットを活用したいところです。そのためには見える化は必須です。しかし、中小企業だけではなかなかできません。それに加えて、世界標準とマッチした算定方式で算定しなければグローバルには通用しません。
松井 しかし、中小企業からはどうしたらよいのかという声が聞こえてきます。
坂本 そこで私たちはGHG排出量のScope1、Scope2、Scope3を算定できるツールを、日本市場でも2024年7月から無償で提供しています。ぜひ、中小企業でも活用していただきたいと考えています。
専門知識不要で直感的に利用でき
最適な算定方法を自動でセット
松井 なぜ無償で提供するという決断をされたのでしょうか。
坂本 算定方法には固有にデータを使う手法、重量ベースで平均データを使う手法、消費ベースで金額ベースの手法があるのですが、どの手法を使うかで算定結果が違ってきます。大事なのは努力次第でGHG排出量が減らせることですが、そのためにどこからスタートするかが重要になります。
クラウドサービスで提供される無償版の「パーセフォニ・プロ」は専門的な知識がなくても直感的に算定が可能で、表計算ソフトで計算をしなくても、基本情報を入力するだけでその経済活動エリアで最適な排出係数を自動でセットしてくれます。
当然、グローバル標準のGHGプロトコルに準拠し、Copilotの機能も搭載しているので、分からないことがあってもAIに質問すれば解決できます。今、グローバルで4500社がサインアップしています。
活用例として、例えば金融機関が様々な機能を持った有償版を利用して、中小企業が無償版を利用することで、データのやりとりができて、融資もスムーズに行えるようになります。
無償のツールとデータを使って大手企業と中小企業がタッグを組むこともできます。取引先の状況を見える化することで、サプライヤーの観点から一緒にGHG排出量の削減に取り組めます。
中井 パーセフォニ・プロは、炭素会計を取り入れてみんなでScope3のGHG排出量の削減に取り組めるツールです。
坂本 炭素会計に取り組んだことがない企業は、まず最初のステップとして無償のパーセフォニ・プロで見える化に取り組むことから始めてください。
松井 まずは「見える化」することが大事ですね。

