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2024年2月、富士通はコンサルティング事業の新ブランド「Uvance Wayfinders」を発表。2025年度までにグローバルでコンサルタント1万人増という計画を打ち出した。ただ、問題は数ではない。富士通は旧来組織の「壁」を壊し、多様な異能人材を積極的に登用、まさに大変革のさなかにある。その象徴的な存在の一人が、執行役員副社長でCRO(Chief Revenue Officer)などを兼務する大西俊介氏。従来の富士通のイメージを覆す、破天荒な人物だ。大西氏は何者か、そして富士通で何をしてきたか。その実像を追ってみる。

富士通は本気で
変わろうとしている

2019年8月に富士通に入社されています。その前の6月に時田社長にお会いされたと。どんな話を?

その時には入社がもう決まっていて、富士通をこれから変えていこうという話とか、わたしが持っているネットワークをベースに、人材の多様性を増やしていこうとか。時田さんは、「大西さんのような人がもっと来たいと思えるような会社にしたいと思っている」と話されていて。これは結構、本気で変わろうとしているなと感じました。

大西 俊介
富士通 
執行役員副社長 COO(リージョン)、CRO
(兼)グローバルカスタマーサクセス
(兼)Japanリージョン
(エンタープライズ、ビジネス変革)
1986年一橋大学経済学部卒業、同年日本電信電話株式会社に入社、NTTデータ、外資系コンサルティング会社などを渡り歩き、2013年、NTTデータグローバルソリューションズ代表取締役社長。2017年、インフォシスVice President日本代表。2019年、富士通に入社。2023年4月よりCRO兼グローバルカスタマーサクセスビジネスグループ長。CRO(Chief Revenue Officer)として、フロント組織のガバナンス強化とグローバル横断で顧客のビジネス拡大をリードしている

入社当時、大西さんから富士通はどう見えていましたか。

当時は富士通のグローバルビジネスって、他の同規模程度の日本企業と比べても、少なくとも6年以上は遅れていると思ったんです。

その遅れを取り戻すのは大変な仕事で、だから大西さんがやらないといけないという状況だったのでしょうか。

そうでしょうね。一つ感じていたのは、社内がウォーターフォール型のレビュー文化なんですよ。「ダメ」ということは言えるんですけど、具体的にこんな感じにしてほしいという「処方箋」は出せないことが多いんですよね。

逆に大西さんはなぜ「処方箋」を出せるのか、外資の時の経験が生きているからということですか。

経験というほどでもないんですが、日本のIT業界、例えば金融機関とか製造業などの超大規模なシステムを扱うSIerに共通するのがウォーターフォール型なんです。だから計画がすべて、途中で仕様変更はせず、大量の人材に正確な作業をさせるというのがゴール。正確に作業させるためには標準化が必要ですが、標準化は組織全体にとってみると、ある意味個性を殺してしまうんです。

ビジネスの観点からすると「何のためにやるか」という本来の目的や、「コストがどれだけ下がって、生産性がどれだけ上がるか」という数値的成果などを見るべきですが、標準化と正確に作ることが命になってしまっている。すると多分、物事の考え方がそちらに固定化されてしまうと思うんですよね。

わたしは十数年コンサルティング業界にいました。当時のパートナーにはいろんな人がいましたが、やっぱり発想が柔らかい人が多くて、破天荒というか、常識をいつも疑っているんですよね。そういうところに触発されたというのはあるかもしれないです。

大西さんは具体的に、どんな取り組みを進めてきたのでしょうか。

フロント組織のガバナンス強化に着手しました。もともとフロントには営業とSEがいて。その営業というのが、旧来の考え方に染まった人たちなんですよね。SEはSEで、ウォーターフォール型。本当に何年か前は富士通もプロダクトサービスばかりだったので、それで回っていた。お客さまには絶対に「ノー」と言わないとか、そういう寄り添い方。そうじゃなくて「これは今やるべきじゃないですね」とか、「先にこっちやったほうがいいですよ」といった、建設的な提案こそが必要です。もちろん分かっている人もいるんですが、組織全体で見ると、もう全くお客さまの立場になれていないわけですね。

そこで既存と異なる、新しいロールモデルを作りました。最初に作ったのがAGM(Account General Manager)です。

大西さん、
そうすると売り上げが
落ちますよ

AGM、これはどういう狙いだったんでしょうか。

まず、富士通が製販統合を進めるという文脈があって。当時は汐留に営業組織が、蒲田にSE組織があって、両方とも別々にPL(損益計算書)を持っていたり、それぞれに常務がいたりして、とにかく組織が分断されていた。これほどの分断を見たのは、わたしは富士通が初めてだったんです。わたしはもっと、コンサルティング会社のようなモデルになった方がいいんじゃないかと言いました。そういう会社はお客さまに対してリーダーが1人なんですね。セールスもデリバリーも全部責任持ちますという役割です。それがAGM。お客さまの経営課題や社会課題が何かを徹底的に考えることが、AGMの使命になるわけです。

もう1つはとにかく、営業1人あたりのお客さまの数が多いんです。商談するためのリソースにはどうしても限界があります。実際、同じところに月何時間商談に行っているかと営業に聞くと、月2時間って答えるわけです。

月2時間ですか。

それでいいわけないですよね? だから整理して担当を減らしたらって言ったら、現場は「大西さん、そうすると売り上げが落ちますよ」って言うんですよね。結局落ちてないんですけど。

わたしがやったのは、まずアカウントポートフォリオを見直しました。お客さまをセグメントするということ。それは富士通に対するお客さまとのビジネスの大きさとか、あるいはそのお客さまと一緒に取り組むことで生じるビジネス成長性などで判断する。そのセグメンテーションを経て、最初にAGMの設置先に選んだのが11社ということです。

顧客に十分な時間を割けていない状況だったからこそ、整理してきたと。今のお話、すごくロジカルですね。AGMの定着にはどれくらいの時間がかかりましたか。

2年か3年くらいですね。AGMが相手にするお客さまは、もうかなりの年長者のトップ経営層で、彼らと対等に話せないといけない。この人たちが興味のある話をできないとダメ。でも、初回は大体うまくいかないんです。だから最初にAGMを置いた11社においては、半年ぐらいはずっとわたし自身も直接レビューしていました。製造・流通業など一部に最初は絞って、2021年にはじめた11人がいわば1期生。翌22年には全業種に拡げて、30人くらいに増やしました。

もう1つ時田さんの狙いとしては、グローバルな巨大企業といかに関係を強化していくかという考えがありました。そこでグローバルアカウントに取り組む組織を作りたいという話があったんですね。で、グローバルアカウント専門の組織ってなかなか成功しない。トップのガバナンスが効いてないと、うまくいかないんです。ならどうしていこうかと。

日本にも5、6社程度、グローバルアカウントに該当する企業があって、そこの担当はインダストリーに属さず、強力なガバナンスをもったGAD(Global Account Director)の人たちが全部グローバルに見ている。そのGADがAGM をマネジメントして、AGMは日本のグローバルアカウントの各リージョン、例えば世界的な大手自動車メーカーだったらその東南アジア支店にもAGMを置きましょう、ということにした。日本企業を見ているAGMもいますけど、全体としてはAGMを束ねてGADが見るという構成にしましょうと。

大西氏がかかわった富士通の組織変革。顧客のさらなるグローバル事業拡大、国・地域を超えた社会課題の解決へ、より一体となって取り組める体制を確保

最初の11人、翌年の30人と、AGMに選ばれた人たちの変化はありましたか。

今までのやり方だったら、こういう人材は育たなかっただろうなっていう感触はありますよ。仕事を取るということと、ちゃんとデリバリーするということ、その両方が分かるという人材。あとは、年配のトップ経営層と対等に渡り合っていける人材。彼らはより踏み込んだ提案ができるようになってきました。AGMからGADに上がった人間もいますよ。

それからAGMを設置しなかった営業でも、一周回ってお客さまの目線で建設的な提案ができるようになってきました。闇雲にお客さまのもとに行かなくなったことによる相乗効果ですね。

AGMの定着、それに伴うポートフォリオ変革によって、全体を俯瞰しながら収益と価値提供の最大化を進める。CRO(Chief Revenue Officer)として、わたしが取り組んできたことの一つです。

それが
わたしの仕事かなと
思っています

大西さんの取り組みは、顧客のビジネス成長と社会課題の解決に挑むソリューションとして掲げられた「Fujitsu Uvance(以下 Uvance)」において、どういう位置付けになるんでしょうか。

わたし自身は、Uvanceという事業モデルを使ってビジネスを拡大していく立場。従来のハードウエアを売っていくビジネスがクラウドの進展で難しくなってきて、でも富士通がグローバルの競合と戦っていかないといけない中で、投資領域をもっと集約させて、事業構造を変えていかないと、という話になっていました。

時田さんが素晴らしいのは、そこでパーパスから落としてきたということなんですよね。投資すべき事業領域を決めるにあたって、富士通のパーパスは「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」だから、うちはサステナビリティをやるべきだと。で、結局我々はどこから来たかというと、それはやっぱりテクノロジー。だから「サステナビリティ+テクノロジー」というところから取り組むべき事業領域を決める、としたんですね。

それで「ビジネスを加速し、社会課題に挑むソリューション」としてのUvanceが生まれた。

でも具体的に社会課題を解決するっていうのは、1社のテクノロジーだけではできないわけですよ。例えば製品をお客さまに届ける「動脈」と、使い終わった製品や資源を回収して再利用する「静脈」のサプライチェーンを組み立て、エコシステムを構築していかないといけない。だから、自分たちだけではなくてお客さまとの関係を変えていって、何を成し得るかちゃんとチャレンジしようというのがUvanceの本質的な、存在意義なんです。

前半の方で、アカウントポートフォリオについて話しましたね。ここでUvanceの意義と絡めてもう少し補足しますと、そこで行ってきたのは「コミットして社会課題を一緒に解決してくれるお客さま」を整理した、ということなんです。

社会課題解決は1社ではできない。そこに向けて富士通も投資しますが、お客さまにも投資してもらう必要があります。その思いがあって、かつそれができるというお客さまと一緒になって進めるための、セグメンテーションということです。もちろん、それ以外との関係を断ち切るということではありません。経営課題を抱えて解決のために効率的なソリューションを求めるお客さまとのビジネスも、今後も継続していきます。

Uvanceが始まった前後あたり、社内の反応はどうでしたか。中には反発なども?

反発はあまりなかったと思います。でも、本当の意味で浸透しているかは分からなくて。オファリングビジネスを売っていけばいいという理解にいってしまいそうなリスクもあった。今まではプロダクトを売ってきた人たちだから、どうしても。

お客さまにこちらが出すべき結果って、別にシステムを導入することではなくて、リアルなビジネス上の成果じゃないですか。ESGを可視化するツールを売ります、みたいな感じになってしまうと全然意味がなくて。分かっている人たちもいるけど、組織的にはまだまだだと。そしてたどり着いたのが、新たなコンサルティング事業ブランド「Uvance Wayfinders」です。

「Uvance Wayfinders」はどういう存在になるんでしょうか。

要は、違う役者が要るという話です。例えば、社会課題の解決のためにはサプライチェーンの世界を把握しないといけないけれど、金融機関も保険会社も、そうした知見があるわけではない。テクノロジーをいかに活用し、レジリエンスの名のもとに新しい事業を作っていくか。Uvanceが実現を目指すサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の経済合理性を担保するビジネスを確立するには、新たな仕組みやプロセスをつくったり、ルールを変えたりしないといけない。これはコンサルタントの領域です。今までそういうことをやってきていない、ITベンダーとしての富士通にはできないことです。

Wayfindersのビジネスはこれまでの富士通とは違うわけですね。

目指すのは、富士通の中で独立したコンサルティング部門になることです。ITベンダーと組織モデルはやはり違う。報酬のレンジも違えば、降格もある。従来型日本的組織では簡単にはいかない。

コンサルティング会社のやり方を富士通もしないといけないという問題意識が、大西さんには当初からあったんでしょうか。

そうですね。ビジネスの範囲が広がってきたことは感じていました。1社だけで解決できる社会課題は限られてきた。今必要なのは業界の構造を変えたり、異業界と協業で新たな会社を作ったりといった横断的な取り組み。そう思っていたら時田さんがUvanceを打ち立てて、それを本当に実践するために新たな人材と、彼らに活躍してもらうための組織が必要になりましたと。そこで横断的な取り組みを推し進められる、リアリティとストーリーが両立したアウトプットができる人材を、今は外部から採用してチームを作っているところです。

富士通のコンサルティングにおける、他社にない強みとは何ですか。

富士通がどこで強みを持てるかというと、研究所だと思っています。今の研究所は、AIや量子、サイバーセキュリティなどの領域で能力がすごくある。そこは他のコンサルティング会社にはない、大きな強みです。そこからどう事業構造のシナリオをSXに関して描いていくか。今、AIにはこれだけポテンシャルがあるけど、リスクもあるから企業間をまたがる仕組みに対してこれをどう活用していくか。Wayfindersではテクノロジーをベースに、未来のシナリオや業種をまたいだ事業構造の変革をプロデュースできるような絵を描いていきたい。構造改革をサポートするところまで行けるか分からないが、でもそこまでやりたい。するとちょっと今とは違うところに富士通も行けるんじゃないかと。

富士通社内の人材もコンサルタントとして育ててはいきますか。

はい、もちろん社内の再育成も進めていきます。でもやっぱり、そうしたリスキリング人材が本当に機能するにはやはり先導者が必要です。まずはそうした絵を描ける力のあるコンサルタントを外から迎え入れる。そして、リスキリングが完了した富士通社内の人たちが機能するための世界を作っていく。それがわたしの仕事かなと思っています。

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