生成AIブームから2年。ツールの導入は進んだが、真に活用できている企業はわずか5%――。東京海上グループでDXを主導し、2025年にAIスタートアップ企業である株式会社GenerativeXへ参画した桑原茂雄氏は、自ら生成AIを使いこなし、クライアントである大手企業の業務プロセスを変革している。長きにわたり大手企業で業務変革に携わってきた桑原氏が考える“生成AI格差を生む要因”、そして“生成AIの活用を成功に導くリーダーの資質”とは――。

生成AIを活用できている企業は
わずか5%

株式会社GenerativeX
執行役員 CDXO
桑原 茂雄 氏

「生成AIの活用については、ちょっとずつ差が出始めていると感じています。感覚的な数字ですが社内向けの生成AIを作成して使っている会社が6割程度。さらに進んで生成AIを使ったアプリケーションの爆発力を感じて、専門部署を作り業務プロセスの変革に取り組んでいる会社が、そのうちの5%くらい。この5%を拡大していくのが、当社のミッションだと感じています」

株式会社GenerativeX
執行役員 CDXO
桑原 茂雄 氏

こう語るのは、GenerativeX 執行役員 CDXOの桑原茂雄氏だ。東京海上日動火災保険理事、米国子会社CIOを経て、イーデザイン損害保険取締役社長を7年務めた。その後、創業2年のGenerativeXに参画し、現在は生成AIを駆使して大手企業向けの業務アプリケーションを開発、企業の生成AI活用を支援している。コンサルタント自ら開発までを手掛けるのが、同社のスタイルだ。

多くの企業で生成AIツールの導入は進んでいる。しかし、その活用レベルには驚くほど大きな格差が存在する。既存の業務フローや従来型の運用ルールに縛られ、生成AIの力を十分に引き出せていないケースや、PoC(概念実証)は繰り返すものの、本格的な導入や全社展開に至らないケースが大半だ。部分最適の域を出ない活用に留まり、業務の根本的な改善や新たなビジネス価値の創出につながっている例は限定的なのが実情だ。

桑原氏は長年の業務変革経験から、この現状を「第二のデジタル変革」の分水嶺だと捉えている。生成AIは単なる効率化ツールではなく、業務プロセスや組織構造のあり方そのものに影響を与える革新的技術だからだ。

なぜ多くの企業で
生成AI活用が進まないのか

桑原氏が分析する活用格差の要因は、大きく3つの壁に集約される。第一の壁は技術的ハードルだが、実はこれが最も低い。「従来のシステム導入では、データサイエンスの知識や開発経験が重要視されましたが、生成AIは非エンジニアでも十分に活用可能な技術として設計されています。技術的なハードルが大幅に下がったことで、現場の創意工夫次第で無限の可能性が広がります」(桑原氏)。第二の壁は組織的ハードルだ。多くの企業が部署単位での局所的な導入にとどまり、全体を見渡した活用には至っていない。現場の業務効率化は進んでも、確かな生産性向上やビジネス成果の創出にはまだ結びついていない。そして最も高い第三の壁が、経営的ハードルだ。リーダー層の生成AIに対する理解不足と、従来の延長線上での思考が、真の変革を阻んでいる。

「前職ではDX推進のために、ITに対して無理難題を要求するという役回りは結構やりましたが、自分の手でアプリを作ったことはありませんでした」と振り返る桑原氏。しかし現在は、入社半年たたずして生成AIを使いこなし、自らコードを書いて設計・開発を手掛けている。業務プロセスを深く理解しているからこそ、本質的な課題に刺さる価値を形にできるのだ。この変化の背景には、生成AIが従来のシステム導入とは根本的に異なるアプローチを求めるという認識がある。

「経営はアート」
生成AIとの高い親和性

桑原氏が強調するのは、生成AIと経営の親和性だ。従来のシステム導入では、予め決められた仕様に従って実装を進めることが一般的だった。しかし生成AIの活用では、使いながら学び、試行錯誤を重ねながら最適解を見つけていくアプローチが必要となる。これは、不確実性の中で意思決定を重ねる経営そのものと酷似している。

最初から完璧な計画を策定することに固執するのではなく、まずは実際に触れてみてその可能性を体感すること。このプロセスこそが本質的な改革につながる。「経営層世代にとって生成AIはなじみのない世界だと思いますが、子どもの世代は間違いなく使っており、生成AIネイティブな世界になっていきます。そのギャップを理解し、具体的なモノから自社がどう変わるべきかを想像してもらいたい。私は経営はアートだと思っていて、実は感覚的に使える生成AIと親和性が高い。感性や想像力を働かせて、生成AIと経営を上手く結びつけてほしいと思います」(桑原氏)

まずはリーダー自身が
生成AIを体感する

では、生成AI活用格差を埋め、真の変革を実現するために何が必要か。“リーダー自身がまず生成AIに触れること”を第一に挙げる。「リーダーが生成AIの革新性を理解していなければ、適切な戦略立案も投資判断もできません。まずはリーダー自身がAIに触れ、その革新性を身をもって体感することが重要です」と桑原氏は強調する。

上司が十分に理解しないままAI技術の導入を部下に一方的に求めても、定着や本質的な活用は見込みにくい。リーダー自ら変革の先頭に立ち、企業全体を見渡して業務プロセスの再設計にコミットする姿勢が求められる。

生成AIの活用は、明確な正解が存在しない中で進める探索だ。失敗を恐れず、多様な用途に試してみる姿勢も欠かせない。こうした未知の領域に対して、リーダーが率先して踏み出すことが、組織全体のイノベーションマインドの醸成につながる。

さらに重要なのは、単なるツールの導入ではなく、業務プロセスや組織全体のインセンティブを再設計する視点だ。生成AIは業務や組織を根本から再定義する革新的技術であり、その真価は、これまで不可能だった新しい価値創造にある。

日本企業変革への挑戦

前職では保険商品開発、システム再構築、ビジネスプロセス変革等を経験してきた桑原氏。現在はGenerativeXというスタートアップを基盤として、個社にとどまらず日本の大企業全体の変革に挑んでいる。「生成AIで日本の大手企業を変革したい。世の中を変える生成AIという武器を、大企業の皆さんが正しく理解し、企業変革を実現して欲しいと、心から思っています」(桑原氏)

企業間での活用格差を生む決定的要因は、技術そのものよりも、技術をビジネスインパクトに結びつけるリーダーシップにある。ROI(投資利益率)が求められる段階で、生成AIのポテンシャルを最大限引き出すことが急務となっている今、経営リーダーには生成AIと向き合い、その可能性を自らの手で探求することが求められている。

変革の波は止まることがない。その波に乗り遅れないためにも、まずは経営層こそが生成AIの爆発力を体感し、使いこなすことから始める時が来ている。

関連リンク

生成AIコンサルティングの概要

https://gen-x.co.jp/service

株式会社GenerativeX

https://gen-x.co.jp/