自社で生産したモノや販売するモノを、サプライチェーン(SC)を利用して顧客に届けるのは、企業の社会的責務だ。物流の持続可能性が問われている今、その責務をどう果たしていくべきか。2026年4月以降、一定規模以上の荷主事業者に物流統括管理者(CLO)の設置が義務付けられるが、一体どんな役割を担うべきか。日経ビジネス主催「CLOオブザイヤー2025」の受賞企業が語り合う。

──持続可能なサプライチェーン(SC)の構築を目指し、各社とも物流改革に取り組んでいます。まずはご苦労をお聞かせください。

深井 最初に取り組んだのは、社内体制の構築です。資材、生産、物流など、各部門の部分最適ではなく、SCとしての全体最適を追求できる体制に改めました。SC本部を置き、横串の組織に再編したのです。また、卸や小売りとの連携や調達物流の効率化にも取り組んでいます。これらは今後の課題です。

宇佐美 可視化に向けて各種システムを導入していますが、物流会社の理解を得るには時間を要する場合があることも事実です。コスト削減という言葉にとらわれず、導入の趣旨をきちんと説明し協力いただくために丁寧な対話を重ねています。

末廣 現場では変化に慎重な姿勢が見られる時もあり、改革を前進させるには根気強い取り組みが必要です。追い風となっているのは、経営層の考え方です。投資判断に当たっては、事業性だけではなく、大義や社会的意義といった視点も重視されています。こうした新しい価値観が少しずつ現場に浸透し始めたことで、改革の機運がようやく高まってきています。

矢野 現場の改革に乗り出すと、反対の声は社内からも上がります。説得するためには、やはりコスト削減の視点が必要になります。そこで可視化に取り組み、例えば積載率の向上が収益や物流の効率化に与える影響など、丁寧に説明しています。その結果、賛同を得られるようになりました。

可視化でこだわりたい
どう活用するかの視点

──可視化の意義が感じられる話です。可視化、言い換えればデータ化にどう取り組んでいますか。

深井 データを活用する視点を、部門ごとではなくSC全体に改めることが重要です。当社では各部門のシステムを統合する一方で、先ほど申し上げた横串の組織体制を整えています。その結果、物流費の適正化という視点ではなく、在庫コストや販売コストなどを勘案したSC全体の最適化という視点でデータを見られるようになりました。

宇佐美 2024年問題が指摘される中、荷主として物流コストを把握しようと、配送作業や庫内作業の可視化に乗り出しました。作業の実態をデータとして把握できていないと、物流会社から値上げ要請を受けても価格協議を適切に進められませんから。真摯な協議体制を継続していくためにも適正なコスト分析は必要不可欠です。

末廣 まずはデジタイゼーションからしっかりやろう、とデジタルデータ化に取り組んでいます。そこで目指すのは、経営層、事業部長、現場班長など、データを基に判断を下す階層に応じたものを、1つのデータから即座に生み出す仕組みづくりです。誰が何を目的にどんなデータを見るか、そこにこだわっています。

矢野 データとして可視化できるようにすることが第一段階で、次に部門をまたいで活用しやすいようにデータ共有を進め、最後に全社レベルで活動内容や成果を報告することで理解を深めています。最近は、EDIやクラウドを介することで取引先との連携に広がりが出るようになってきました。

──データ活用は企業間連携も後押ししそうですね。

深井 SCを構成する各社のデータを基に、受発注のない世界が実現できると考えています。そうなると、SC内での企業の垣根はなくなり、製品やサービスを通して消費者や社会にどのような価値を提供するのか、そんな同じ目標を持つ共同体になっていきます。今やデータベースすらAIで作成する時代ですから、そうなるタイミングは想像以上に早いのではないか、と期待しています。

宇佐美 食品で言えば、定番・特売の商品について、AIを活用した自動発注は十分に実現可能ですよ。そのほうがムダも生じません。

サプライチェーン変革
その中心に立つのがCLO

末廣 複数の自動車メーカーに部材を供給する会社としては厳しい状況です。SC内での企業間連携は、協調領域なら可能でも、競争領域ともなると一気にハードルが上がります。

矢野 当社はMDFという木質素材を製造し、主に住宅業界に供給しています。現時点では、川上である素材メーカーから川下の住宅メーカーまでの企業間のデータ連携はできていません。SC内でのデータ連携が可能になれば、大きな効果が期待できます。

──CLOと呼ばれる物流統括管理者に話題を転じます。その役割を自社に照らしてどう受け止めていますか。その肩書をお持ちの宇佐美さんから口火を切っていただけますか。

宇佐美 目下の使命は2つです。冷凍食品の待機解消に向けたパレット化の推進と従来型の倉庫の運用が生み出す見えない待機の解消です。

深井 SC全体の持続性を追求するのがCLOの役割と考えています。それが社会のウェルビーイング向上にどう貢献するのか、それを企業価値にどう変えていくのか、という大きな視点も求められます。SCの構造を変革していく、その中心にいるのがCLO、そんなふうでありたいですね。

末廣 当社にはCMzO(チーフ・モノづくり・オフィサー)がおり、各事業部門を横断してまとめ、統括する役割を担います。そのため、現在はCLOを置いておりませんが、CMzOの職務内容は実務的にはCLOと同じ役割を果たすと考えています。

矢野 CLOには、物流改善だけではなくロジスティクスの視点で企業内の全体最適を図り、さらに取引先との連携を深めSCMへ発展させるという役割が求められる、と考えています。その下地づくりとして、物流会社に限らず販売先の購買部門や物流部門の方々との面談で情報収集を重ねています。

──来年4月までには各社ともCLOを選任されることになります。物流改革に弾みがつくことを期待します。本日はありがとうございました。

座談会を終えて

Hacobu
代表取締役社長CEO
佐々木 太郎氏

CLOのミッションの一つに、物流DXがあります。そこでDX投資を進めていくため、どのような投資判断を下すのかが問われます。事業性だけではなく、大義や社会的意義で、というのも一つですが、それだけなのか。

今後、AIのインパクトが想像を上回る大きさになっていくでしょう。そこで一段と重要になるのが、データです。データなしにはAIは活用できません。現場の情報はデータ化し蓄積していくことが基本です。DXへの投資判断では、そのパラダイム転換を明確に意識しておきたいですね。

Hacobu
代表取締役社長CEO
佐々木 太郎氏

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