世界屈指の半導体メーカーであるインフィニオン テクノロジーズ ジャパン(以下、インフィニオン)は、特にパワー半導体では、圧倒的なグローバルリーダーとして市場をけん引してきた。その製品は、自動車、産業機器、再生可能エネルギーから民生機器まで広範な分野で利用され、世界中の人々の生活や社会インフラを支えている。
これまで同社は、「オートモーティブ」「グリーン インダストリアル パワー」「パワー&センサー システムズ」「コネクテッド セキュア システムズ」と製品種別を軸にした事業部を展開してきた。
2024年3月には抜本的な組織変更を実施。顧客企業の業界別に3つのセグメント「A(オートモーティブ)」「I2(インダストリアル&インフラストラクチャー)」「C3(コンシューマー、コンピューティング&コミュニケーション)」を再編した。顧客窓口を一本化することで、従来以上に包括的かつ効率的な提案・対応を可能にする狙いだ。
インフィニオンの日本法人でC3部門の責任者を務める澤田和重氏は、「プロダクトアウト的な個々の製品の提案ではなく、システムレベルで最適化したマーケット志向のソリューションを提供可能になったことが最大の変化です」と語る。
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン
澤田 和重 氏
バイスプレジデント C3事業本部 事業本部長
様々な外資系半導体メーカーにおいて、車載関係、産業機器、FPGAまで、25年以上の実務経験を持つ。2019年にインフィニオンに入社。代理店統括本部長や車載セールスのバイスプレジデントを歴任。2024年6月から現職のC3部門の責任者を務める。
日本市場におけるインフィニオンは、数ある外資系半導体メーカーの中でも指折りの、国内製造業のビジネスを支える存在だ。同社にとっても日本は極めて重要な市場であり、グローバル売上の10%以上を占めている。
「近年、多くの外資系メーカーは日本市場をアジア・パシフィック地域の1市場に位置付けていますが、当社は現在も変わらず独立したリージョンとして、日本市場固有のニーズや商習慣、価値観に合った販売戦略を策定・実践しています。ドイツ企業らしく、中長期的な視点での関係構築を重視してきたことが、日本のお客様の信頼獲得に繋がっていると感じています」(澤田氏)
東京・渋谷の日本法人オフィス内には、アプリケーションラボや解析ラボを設置。営業、マーケティング、品質管理、さらには開発部門の一部も同一拠点に集約することで、顧客要求や技術支援に迅速対応できる体制を整えている。製品開発や高度な技術サポートに関しても、ドイツ本社と直接密に連携しながら、固有のニーズを反映した対応を進めている。
インフィニオンの新たなセグメント管理領域のうち、自動車産業と産業機械・インフラ分野については、既に日本企業には高い国際競争力がある。
他方、C3部門の管轄である民生機器やIT機器の領域に関して、澤田氏は「日本市場は、非常にユニークなポジションにあります。いたずらに世界の潮流に乗るのではなく、日本固有の強みを生かして価値創造することで、伸び代は大きいと見ています」と話す。こうした考えを背景に、同社日本法人のC3部門は、今後5年間で売上高を倍増させる目標を掲げている。
グローバルにおけるC3領域の中で、特に注目が集まる半導体応用分野はAIデータセンターである。ただし、その中心市場は北米と中国。日本企業がここで強みを持つのは、ボード、ラック用やバックアップ用の電源、冷却設備などの周辺機器だ。加えて、AI応用で進化する機器の中には、カメラやプリンター、ゲーム機など、日本企業が高いグローバルシェアを持つ固有の分野も多い。
インフィニオンでは、これら日本固有の技術・製品を扱う顧客との関係を強化する戦略を実践。特に他国の追随を許さない競争力を持つゲーム機は、AIデータセンターと同等に重視している。
インフィニオンは、C3領域における日本企業の価値創造を強力に支援する体制を保有している。
同社がリードするパワー半導体では、従来のシリコンベースに加え、注目の炭化ケイ素(SiC)と窒化ガリウム(GaN)ベースの新半導体材料を利用したソリューションも用意(図1)。それぞれの技術開発・生産設備に継続的かつ積極的に投資することで、用途に応じた最適技術を提案し、必要とされる量を供給できる体制を整えている。とかく新技術は高コストになりがちだが、GaNデバイスの量産に適用するウエハーの大口径化(300mm)の推進など、コスト削減施策も先駆けて実践している。
特性と応用適性の異なるシリコン、SiC、GaNベースのパワーシステムソリューションを、用途に応じて提案・安定供給できる数少ない半導体メーカーであるインフィニオン。
また、単にパワー半導体を提供するだけでなく、センサーやマイクロコントローラー、ドライバーICなど周辺チップの事業も強化。それぞれの技術仕様を擦り合わせてシステムレベルで最適化した技術を提案可能だ。
一方、パワー半導体以外の分野においても、2020年には、サイプレス・セミコンダクターを買収。IoT機器に不可欠なWi-FiやBluetoothなどコネクティビティーチップ、マイコン、メモリーなどの製品ラインアップを一気に拡充させた(図2)。これによって、従来の強みである産業系応用に加えて、民生系での技術提案の幅が格段に広がった。
家庭やオフィスなどのスマート化に不可欠なIoTデバイスやウエアラブル機器などに投入する高度な半導体技術を保有。センサーやハードレベルでのセキュリティ、ネットワーク接続に向けたコネクティビティ、コントローラー、電源などのチップを、最適仕様で組み合わせて、システムソリューションとして提案することが可能だ。
電卓、インターネット接続できる携帯電話機、プリンター、ゲーム機、液晶テレビなど、C3領域において、過去に日本企業主導して市場創造された機器は極めて多い。
「C3領域における日本企業の新市場創造力は、過去の実績からも明白です。その具現化を支える存在として、インフィニオンは常に準備を整えています。また、単なる準備にとどまらず、日本企業の皆様と共に未来を切り開き、新しい成長市場を築く挑戦に取り組んでいきます」と澤田氏は話す。



