イトーキの「Data Trekking」で進化するオフィス イトーキの「Data Trekking」で進化するオフィス
イトーキ

働き方が大きく変化する中、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、単なる業務空間の刷新にとどまらず、人的資本経営を実現するための「オフィスの再定義」に踏み出した。中野セントラルパークサウスに構築した新たなフロアは、Z世代やDX人材といった新たな働き手にも響く、先進的かつ柔軟な空間を追求している。株式会社三菱UFJ銀行 執行役員 総務部長 鯛洋太郎氏、調査役 岩佐育恵氏、調査役 山本雄貴氏にMUFGが挑んだ空間戦略について話を聞いた。

オフィスの経営的価値とは

「コロナ禍を契機にリモートワークやハイブリッドワークが広がり、働く場所の自由度が高まりました。一方で、出社や対面によるコミュニケーションの価値が再認識されています。MUFGでは『オフィスに集う意味』を再定義し、社会や環境の変化、業務特性、これから台頭する世代の新たな価値観も踏まえ、未来の働き方に柔軟に対応するオフィスづくりを行っています」

そう語るのは、MUFGのファシリティ戦略を統括する三菱UFJ銀行 執行役員 総務部長の鯛洋太郎氏だ。その一環として2024年夏、システム開発拠点である中野セントラルパークサウスにおいて新フロアを構築。多様化する働き方や開発業務の複雑化、高度化するチーム連携に応える空間として、今後展開していくオフィス戦略のパイロットとしてオフィスの開発に取り組んだ。

株式会社三菱UFJ銀行 執行役員 総務部長 鯛洋太郎氏

株式会社三菱UFJ銀行 執行役員 総務部長 鯛洋太郎氏

「従業員が活き活きと仕事の出来るオフィスづくりは、エンゲージメントや人材採用の競争力向上といった観点からも重要であり、人的資本経営と密接なつながりがあります」と同社 人事部長の江連氏もいう。

総務部は経営戦略に資するオフィス構築を進めるべく、人事部と協働で戦略的なオフィスづくりを進めている。昨今では人的資本経営への注目が高まり、財務情報だけでなく非財務情報の開示も求められている。社員のエンゲージメントや健康経営を実現する上でも、オフィスというリアルな接点が担う役割は大きい。

「我々のグループが人的資本経営や健康経営に真剣に取り組んでいることを、言葉や数字だけでなく、ビジョンを具現化したオフィスを通じて伝えたいという想いがありました」(鯛氏)

株式会社三菱UFJ銀行 執行役員 人事部長 江連雅紀氏

株式会社三菱UFJ銀行 執行役員 人事部長 江連雅紀氏

回遊動線と偶発性が生む
イノベーション

中野セントラルパークサウスに増床した約1500坪1100席ある新フロアは、社員の能力を引き出しパフォーマンスを最大化する「快適性」、社員が働く環境を選べるようにした「選択性」、今後システム開発や組織のあり方の変化に応じてレイアウトを変えられるようにした「可変性」の3要素を軸に設計。業務特性の違いに応じた5つのエリア(開発業務、集中業務、アジャイル開発業務、クリエイティブ業務、4つの執務をつなぐマグネットエリア)を設定し、プロジェクト単位や個人単位で「今すべき業務」に適した働く場所・働き方を社員が選択できる環境を整備している。

新フロア「Around the SKY PARK」

5つのエリアをつなぐ動線がつながりを演出。
共に学び、共に考え、共に成長を活性化する

新フロア「Around the SKY PARK」

特徴的なのが「回遊動線」だ。フロア全体をぐるりと円形につなぐように設計された動線により、エリアを超えた偶発的な出会いや会話が生まれイノベーションの種が撒かれていくのだ。ちょっとした立ち話ができる小さなテーブルや新入社員や異動者の紹介などをカジュアルに行えるオープンなスペースも設けられており、自然な形で交流や自己紹介の場が生まれ、部門を超えた関係構築にもつながっている。ホワイトボードを囲んだブレインストーミングや、ふとした雑談から新たなアイデアが生まれるシーンも多く観察されているという。

株式会社三菱UFJ銀行 執行役員 総務部長 鯛洋太郎氏

株式会社三菱UFJ銀行 総務部
ファシリティ戦略室 企画グループ 調査役 岩佐育恵氏

加えて、社員の集中力を引き出すために、視線を遮り集中を促すパネルや上下昇降デスク、高い背もたれの椅子を使用するなど、随所に工夫を盛り込んでいる。さらに、グリーンの配置やテント型のスペース、靴を脱いで座れるカジュアルな打ち合わせ空間も用意され、心理的安全性にも配慮した。

「働き方の多様化が進む中、個々がより良いアウトプットを出すために、自ら働く場所を選ぶ時代になっています。その選択肢の多様性そのものが企業の魅力として映るようになってきました。特にZ世代やDX人材は、自分らしい働き方や成長機会に強いこだわりがあり、個単位での『行動力』が高い傾向にあります。そのような新世代の価値観も踏まえ、彼らにとって魅力ある環境を提供することは、採用競争力や社員の定着率を高めるためのリテンションに直結します。金融業界として“社員ファースト”な職場を打ち出す意義は大きい」と総務部 調査役の岩佐氏は語る。

  • カジュアルな打合せを促進するテント型スペース

    カジュアルな打合せを促進するテント型スペース

  • 回遊動線

    回遊動線

  • リフレッシュ兼打合せスペース

    リフレッシュ兼打合せスペース

  • 飛び入り参加も可能な打合せスペース

    飛び入り参加も可能な打合せスペース

  • 集中を促す上下昇降デスク

    集中を促す上下昇降デスク

データを起点に進化する
オフィス戦略

この取り組みを支える重要な基盤が、イトーキが提供するオフィスデータ分析サービス「Data Trekking」だ。フロア全体に設置した400台以上のセンサーで人流や滞在時間、使用エリアなどを細かくトラッキングし、そのデータを個人のパフォーマンスやソーシャルコンディションと掛け合わせて分析。空間との相関を可視化することで、定量的な示唆が得られる。

「パフォーマンスが高い社員が好んで使うエリアとそうでないエリアとを比較することで、空間の質を高めるヒントが得られました。例えば上位30%のハイパフォーマーが多く利用するエリアの特徴や、回遊動線近くでアクティブな働き方が生まれていることなど、アンケートでは得られない実態を定量データから把握しレイアウトを柔軟に見直すことで、改善の方向性が明確になりました。
また、フロア開設当初にはチームごとに使える座席を大まかに割り当てていたのですが、各チームの働き方を十分に把握しきれておらず、コミュニケーションを重視するチームを個人の集中作業を促すエリアに配置してしまうような、運用面でのミスマッチも発生していました。『Data Trekking』の分析結果を活用して、定期的なモニタリングを行いながら継続的に改善点を抽出し、ゾーニングや座席配分の再設計の検討にも大いに活用できました」(総務部 調査役 山本氏)

株式会社三菱UFJ銀行 総務部 ファシリティ戦略室 企画グループ 調査役 山本雄貴氏

株式会社三菱UFJ銀行 総務部
ファシリティ戦略室 企画グループ 調査役 山本雄貴氏

オフィスというと、従来は“箱”や“ハード”の印象が強いかもしれないが、パフォーマンスに関わる20の因子を紐解くと、空間の価値は働き方や組織運営とも密接に結びついていることが見えてくる。人的資本経営やインターナルブランディング、経営企画、ITなど、他部門と連携して戦略的にファシリティに落とし込んでいくことが、空間の価値を最大化するカギであり、「Data Trekking」はその起点として非常に有効なのだ。

パフォーマンスに関わる因子

パフォーマンスに関わる20の因子

幅広いコンディションを把握し、パフォーマンスを可視化

「特に今回は、新フロア構築という大きな投資を行ったタイミングでもあり、その効果を客観的に測定できる点が大きな魅力でした。パフォーマンスに関わる20程度の因子の中で、オフィスに関する項目で改善を確認できました」(総務部 調査役 山本氏)

フロアに配置したセンサーで使用エリアをトラッキング。
運用モニタリングへの活用や、個人のパフォーマンスと掛け合わせて定量的な示唆が得られる。

企業戦略を体現する「働く場」へ

今回の取り組みは、単なるオフィス刷新にはとどまらない。社員一人ひとりの働き方、成長、エンゲージメントにどう向き合うかというMUFGの“人的資本への姿勢”を可視化するプロセスでもある。その根底には「オフィスを通じて社員に経営からのメッセージを届けることが、人材の成長、エンゲージメント向上、ひいては企業価値の向上につながる」という信念がある。

今後も定期的な効果検証と改善を重ねながら、「働きやすさ」だけでなく「企業としての戦略」を体現する空間づくりを進めていく方針だ。
「社員が毎日を過ごす場所にこそ、企業の本気の姿勢が表れます。職場が目に見えて良くなっていく――その変化が社員の意識や働き方を変え、最終的には企業の成長につながるのだと思います」
人的資本経営のリアルな実践としての「オフィス戦略」。その挑戦は、すでに次のステージへと歩みを進めている。

※記事中の肩書きは2025年4月2日時点の情報です

「働き方×働く環境」を
データドリブンで改善する

Data Trekking

「Data Trekking」は、イトーキが開発したオフィス空間の可視化・分析サービス。オフィス空間内の人の動きや滞在時間、エリアごとの利用状況を可視化し、働く人や組織に関わる様々なデータを掛け合わせて、生産性の高い働き方や空間活用を定量データを根拠に検討できる。従業員のエンゲージメント向上をオフィス構築を通じて実現したい、移転・リニューアル後の効果測定を行いたい、ハイブリッドワーク下でも出社率を高めたい、フリーアドレスを導入したい――そんな多様なニーズに、人流や利用傾向など、オフィス環境に関する幅広いデータを活用して支援する。

  • スペース稼働データ:各スペースの稼働状況・人の状況
  • 組織サーベイデータ:個人と組織のパフォーマンス・コンディション
  • レイアウトデータ:各スペースの席数・面積・用途
  • 独自指標データ:お客様が独自でお持ちの指標
  • スペース稼働データ:各スペースの稼働状況・人の状況
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複数のデータを収集し掛け合わせる独自のアプローチ

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