イトーキの「Data Trekking」で進化するオフィス イトーキの「Data Trekking」で進化するオフィス
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「生産性の正体」をAIで解き明かすイトーキ×松尾研究所が挑む、働き方とオフィス空間の再定義

「生産性の正体」をAIで解き明かすイトーキ×松尾研究所が挑む、働き方とオフィス空間の再定義

「オフィス投資は、今や人的資本投資である」。そう語るのは、イトーキ代表取締役社長 湊宏司氏だ。働き方が多様化し、オンラインとリアルが混在する時代において、果たして“生産性を上げる因子”とは何か。誰もが重視しながらも、その定義が曖昧なこの問いに、イトーキと松尾研究所がAIを用いた共同研究で挑み始めた。センシングとAIを駆使し、リアルとオンラインのデータを統合。生産性向上の鍵を構造的にモデル化する試みは、オフィス空間の再設計にどのような変革をもたらすのか。

なぜ今、生産性の再定義なのか
コロナ禍が変えたオフィスの意味

「オフィスは必要なのか」。この問いが現実味を帯びたのは、コロナ禍の経験があったからだ。出社は“義務”から“選択”へと変わり、リモートワークが定着。すべての社員が同じ場所・同じ時間に働くという前提は崩れた。結果、オフィスは“コスト”から“戦略投資”へと性格を変えつつある。

イトーキと松尾研究所は、この変化を“オフィス投資=人的資本投資”と捉え、働きやすい環境づくりの先にある生産性の本質に向き合おうとしている。そのために今こそ、「生産性とは何か」という問いを再定義し、オフィス空間における“生産性の可視化”と“因果関係の特定”を目指す共同研究を発表した。これは、位置情報、生体データ、オンラインでのコミュニケーションログ、アンケート結果など多様なデータを掛け合わせ、AIが働き方と成果の相関や因果を解析するという壮大な取り組みである。

背景には、イトーキが変わらず持ち続けてきた“健康経営”や“働く場の最適化”への確かな思いがある。
「コロナ禍を経て、オフィスの意味は大きく変わりました。単に“働く場”であることから“従業員が自ら足を運びたくなる空間”へと進化し、そこでの体験がウェルビーイングを育み、エンゲージメントを高め、優秀な人材の確保と成果の創出につながる場へと大きく変化しています。今やオフィスづくりは“コスト”ではなく、人的資本を最大化するための戦略的“投資”と多くの経営者は捉えています。費用対効果を科学的に示すために、オフィスが生産性向上にどのように寄与しているのかを、データドリブンなアプローチで明らかにしていくことが不可欠だと考えています」(湊氏)

ただし業種や職種、働き方により生産性の定義は様々。取り組みを難しくしてきたのは、まさにこの“定義の曖昧さ”や“影響する要素の多さ”だった。

イトーキ 代表取締役社長 湊宏司氏

イトーキ 代表取締役社長 湊宏司氏

松尾研究所 技術顧問 東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻/人工物工学研究センター 教授 松尾 豊氏

松尾研究所 技術顧問 東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻/人工物工学研究センター 教授 松尾 豊氏

リアル×オンライン上での
生産性を可視化するために

イトーキと松尾研究所が挑むのは、働き方やオフィス環境の何が本当に生産性に寄与しているのかを、感覚や雰囲気に頼った評価ではなく科学的に明らかにすることだ。その鍵となるのが、“マルチモーダルデータ”と“因果関係”である。

マルチモーダルとは異なる種類の情報を組み合わせて分析する手法のことで、今回の研究では、リアル空間では、ビーコンにより移動や滞在を計測して、場所と行動がどのように生産性と関係しているかをヒートマップのように視覚化する。一方、オンラインでは、チャットやメールの頻度・構造を分析。さらにアンケートによる主観的パフォーマンス評価を加えるなど、多様なデータを統合分析し、個人や部署間の情報流通や見えない関係性を明らかにする。

マルチモーダルデータ分析

オフライン・オンライン・主観評価それぞれのデータの匿名化処理を行い分析

働く環境とパフォーマンスの関係を明らかにしようとするとき、立ちはだかる大きな壁がハイブリッドワークだ。今や4人に1人はリモートワーク(※)が当たり前になり、企業が働き方の実態をつかむのは容易ではない。出社時の状況は把握できても、在宅勤務中の社員がどこで誰とどう働いているかは捉えきれないのだ。この可視化の断絶を埋めるためには、リアルとオンライン双方の働き方を統合的に捉えるマルチモーダルデータを用いた可視化が重要になる。
※出典:国土交通省 令和5年度テレワーク人口実態調査

今回の共同研究では、リアル空間データとオンライン行動データを掛け合わせ、ハイブリッドワーク下でも一人ひとりのパフォーマンスを多面的に捉えられる測定モデルの構築を目指している。

リアル空間の計測では、イトーキが従来から保有していたオフィスデータ分析サービス“Data Trekking(データトレッキング)”の仕組みを活用している。これは、オフィス内のレイアウトデータをベースに人やモノの動き、空間の稼働状況をセンサーやログデータで継続的に計測・記録し、そこに様々なデータを掛け合わせて分析するプラットフォームで、これまでも空間設計や利用効率化に生かされてきた。

一方オンライン空間では、松尾研究所が強みとするオンライン空間でのコミュニケーションや情報共有のデータ解析を実施。メールやチャット、Web会議など、リモートワーク時に発生する行動データを精緻に構造化し、パフォーマンスとの関係性を見極めてきた。

パフォーマンスの
正体を解き明かす

生産性の向上を語るとき、これまでは成果そのものの数値に目が向けられがちだったが、なぜ成果が上がったのか、どの要素が寄与しているのかは十分に解明されていなかった。そこで今回の研究では、働く人の行動や状態を多角的に捉え、その因子を明らかにすることに挑んでいる。

「なぜパフォーマンスが上がったのかを捉えていく時に、仕事への熱意、同僚へのサポート、有益なフィードバック、アクティビティ、コミュニケーション、コラボレーションなどの中間指標がとても重要で、何が良くなれば何が向上するのか構造化していくことが重要だと考えています」(松尾研究所 技術顧問 松尾豊氏)

たとえば「オフィス投資と業績には相関関係がある」という事実に対しても、「オフィスに投資すれば業績が上がるのか、業績の良い会社がオフィスに投資しているのか」どちらなのかは大きな違いがある。今回の研究では単なる相関関係ではなく、「この行動がこの結果を引き起こした」という因果関係の構造を明らかにしていくつもりだとイトーキ執行役員の八木佳子氏はいう。

「たとえば『フリーアドレスオフィスで働く人のパフォーマンスが高い』というデータがあっても、どちらが原因でどちらが結果なのかはわかりません。そこで意図的に行動変化を促し、その前後を比較する“介入研究”を活用して因果パターンを探っていきます」(松尾研究所シニアデータサイエンティスト 大西直氏)

介入研究を行うためには、成果を左右する要素を洗い出し、構造として整理することが欠かせない。イトーキではすでに、日々のパフォーマンスに影響を与える20以上の因子を定義している。メンタルや身体の状態、対人関係、業務負担などが複雑に絡み合い、その強弱や組み合わせによって成果は大きく変わる。こうした多面的な要素をAIを活用して精緻に分析し、「何が改善されれば、どの成果が向上するのか」という因果の道筋を可視化する。それが今回の研究の核心だ。

イトーキ 執行役員 ソリューション事業開発本部 ソリューション開発統括部 統括部長 八木 佳子氏

イトーキ 執行役員 ソリューション事業開発本部 ソリューション開発統括部 統括部長 八木 佳子氏

松尾研究所 シニアデータサイエンティスト 大西 直氏

松尾研究所 シニアデータサイエンティスト 大西 直氏

パフォーマンスに関わる20の因子

多様なデータで中間指標を客観的に把握する

実証実験から得られた知見

ここからは、これまでの実証実験から得られた知見を紹介する。

パフォーマンスが高い人同士は
同じエリアに集まりやすい

パフォーマンスが高い社員同士は、物理的に近くにいる傾向がある。これは偶然か、それとも空間側に要因があるのか。あるいは、相性の良いチームが自然と集まっているのか。仮説の検証が進められている。

移動頻度とパフォーマンスの関係

さらに、複数エリアを使い分ける人のほうが高いパフォーマンスを示す傾向も見られた。活動範囲の広さが成果に影響している可能性がある。現在は、設計・開発、企画、管理業務など職種別に移動とパフォーマンスの関係にどういった傾向があるか分析を進めている。

睡眠時間とパフォーマンスの関係

実証実験では、5〜7時間程度の睡眠をとっている人が最もパフォーマンスが高いという傾向が明らかになった。一方で、5時間未満の睡眠しかとっていない人は集中力や生産性が低下する傾向が見られた。短時間睡眠でも成果を出せる人は例外的であり、多くの人にとって適度な休息こそが生産性の土台であることが示唆された。

もう一つ研究チームが注目しているのが“リアルの接触”がオンラインの関係性に与える影響だ。リアルでの接触回数が多いことでオンライン上の関係性にどのような影響が生まれるのか。リアルでの接点が増えるとオンラインでのやり取りも活発になるのか、あるいは、リアルでの接触を増やせば、オンラインでのコミュニケーションも増えるのか。こうした仮説を検証することで、接点設計の最適解が見えてくる。オフィスは“働く場所”から、“人と人の接点を戦略的に生む装置”へと進化しようとしている。

オフィス設計は“勘と経験”から
“仮説と検証”の時代へ

イトーキと松尾研究所の生産性研究で得られた知見は、やがてイトーキのソリューションや空間づくりにも活用されていくという。
「従来は経験則や蓄積したノウハウがオフィス設計を支えていましたが、今は働き方が多様化し、ビジネス環境に応じてチューンアップを続けていかなければいけない時代です。オフィスもつくったら終わりではなく、エビデンスとなるデータを用いて仮説を検証するPDCAを繰り返し進化させていく姿勢が不可欠だと考えています」(湊氏)
その循環が、これからのオフィスの“常識”になっていく。

パフォーマンスの可視化が進むことで、社員の心理的安全性やプライバシーへの懸念の声もある。イトーキでは、データを取得する際には本人の許諾を得たうえで、さらに個人を特定できる形ではなくあくまで統計的・匿名化されたデータとして扱うことで、プライバシーへ配慮した形でデータを取り扱っており、データと人間が共存できるバランスを模索するという。

この研究の根底には、快適な空間が心身を整え、生産性につながるというイトーキの長年の信念がある。イトーキが本研究に期待するのは、生産性という数字だけではなく、人が心地よく、幸せに働ける環境をつくること。企業ごとに最適な働き方を、AIとデータで描ける時代。すべての人が力を発揮できる場をどうつくるかという普遍的な問いに、この研究は一石を投じていくだろう。その挑戦は、これからも続いていく。

「働き方×働く環境」を
データドリブンで改善する

Data Trekking

「Data Trekking」は、イトーキが開発したオフィス空間の可視化・分析サービス。オフィス空間内の人の動きや滞在時間、エリアごとの利用状況を可視化し、働く人や組織に関わる様々なデータを掛け合わせて、生産性の高い働き方や空間活用を定量データを根拠に検討できる。従業員のエンゲージメント向上をオフィス構築を通じて実現したい、移転・リニューアル後の効果測定を行いたい、ハイブリッドワーク下でも出社率を高めたい、フリーアドレスを導入したい――そんな多様なニーズに、人流や利用傾向など、オフィス環境に関する幅広いデータを活用して支援する。

  • スペース稼働データ:各スペースの稼働状況・人の状況
  • 組織サーベイデータ:個人と組織のパフォーマンス・コンディション
  • レイアウトデータ:各スペースの席数・面積・用途
  • 独自指標データ:お客様が独自でお持ちの指標
  • スペース稼働データ:各スペースの稼働状況・人の状況
  • 組織サーベイデータ:個人と組織のパフォーマンス・コンディション
  • レイアウトデータ:各スペースの席数・面積・用途
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複数のデータを収集し掛け合わせる独自のアプローチ

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