2021年から大規模改修工事が進められてきた関西国際空港第1ターミナルビルが、3月27日にグランドオープンした。大幅に向上した利便性と快適性で、大阪・関西万博のインバウンド客を迎える構えだ。関西国際空港および大阪国際(伊丹)空港、神戸空港を運営する関西エアポートの代表取締役社長CEO山谷佳之氏に詳細を伺った。
関西国際空港は、1994年の開港以来初となる大規模なリノベーションを、2021年から進めてきた。目的は第1ターミナルビルを再設計して効率性と利便性を高めること。それにより関西国際空港全体の国際線旅客の受け入れ能力を、約4000万人に引き上げることだ。2018年の国際線旅客数が約2300万人だったことを鑑みると、非常に意欲的な数字だといえる。
足掛け4年に及ぶ工事は、空港の運用を止めず、かつコストや環境負荷を削減するために既存の建物を利用しながら内部だけを変更するという、厳しい制約の下で進められた。
関西エアポート株式会社
代表取締役社長 CEO
山谷佳之 氏
(やまや・よしゆき)/1980年神戸大学農学部卒業後、オリエント・リース(現オリックス)入社。オリックス信託銀行(現オリックス銀行)、オリックス不動産等の代表取締役社長を歴任。2009年オリックス取締役兼専務執行役、2015年同取締役兼代表執行役副社長を経て、同年12月から現職。関西国際空港、大阪国際空港、神戸空港の運営に従事する。
開放感のある空間で
日本旅行への期待を高める
具体的な改修点を山谷氏に聞いた。
「まず国内線エリアをビル中央から南側に移して、南北に分断されていた国際線エリアを1カ所にまとめ、かつ広げました。それに伴い保安検査場の面積も広げ、大型スマートレーン等の設備を導入しました。また国際線の出国審査後の商業エリアのスペースを拡大し動線も整理しました。結果、スループット(処理能力)が上がり、ターミナルビルの形を大きく変えることなく、より多くの国際線旅客の受け入れと送り出しが可能になったわけです」
また、関西エリアにおいては空港だけでなく、新たな飛行経路も設定された。4月13日から始まる大阪・関西万博の期間中は、多くの旅客が関西を訪れると見込まれるが、大阪・関西万博を契機に拡大が予想される、将来の航空需要を受け入れる体制が整ったといえる。
空港内には旅行者の気分を盛り上げる工夫も施されている。注目すべきは3階に移設された入国審査エリアだ。多くの国際空港の入国審査エリアは、四方を壁に囲まれた重苦しい雰囲気だが、関西国際空港は外光が入る開放的な空間に仕上げた。高い吹き抜けの天井の下、ガラス越しに海と泉州の街並みが一望できる。大阪・関西万博期間中は、色鮮やかな特別ビジュアルも掲示され目にも楽しい。
「関西旅行や大阪・関西万博への期待感を醸成する作り込みをしました。大阪・関西万博の“万博のファーストパビリオン”にふさわしいターミナルビルになったと思います」(山谷氏)
関西国際空港を後にした人は、関西や中国、四国地方を旅して、また関西国際空港に戻ってくる。自動チェックイン機、自動手荷物預け機があるので搭乗手続きもスムーズだ。保安検査場は22台の大型スマートレーンが稼働し、10分以内での通過を目指す。
出国手続きを終えると、ウォークスルー型免税店を通って商業エリアに入る。ここにも大阪・関西万博の機運を高めるようなビジュアルが掲示され、「ラストパビリオン」として旅の思い出に色を添える。
「関西国際空港のターミナルビルは世界の国際空港と比べて、決して大きくはありません。しかしコンパクトだからこそ実現できる使いやすさや快適性の提供を目指しました。」
山谷氏が手応えを語る。
2025年3月27日にグランドオープンした第1ターミナルビルは、国際線の出国審査後の商業エリアを拡大。国際線キャパシティ拡大や旅客体験向上を図り、大阪・関西万博来訪者増加にも対応。関西のゲートウェイ空港として進化した
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新たに13店舗が出店。ショッピング、グルメが充実
出国審査を終えると、一本道を歩きながら買い物を楽しめるウォークスルー免税店に入る。この形式の免税店としては国内最大級。通り抜けた先の商業エリアは、物販店や飲食店がコンセプトの異なる4つのゾーンに配置され、それぞれの客層が楽しめる設計に。
あわせて、点在していた国際線ラウンジは、1カ所に集約され3階に設けられた。広々とした空間は、高級感と関西の古都の趣が演出され、インバウンド客を満足させる作り込み。
自然と調和し地域振興にも寄与
もともと大阪国際(伊丹)空港の航空機騒音問題の解決策として、大阪湾の沖合5㎞に建築されたという経緯もあり、関西国際空港は開港時より“人と自然との調和”を重視している。建築家のレンゾ・ピアノ氏による設計も、長年使われる中で趣旨が変わったが、本来は“自然との調和”をコンセプトに、高い天井空間を利用し、館内を風が自然にめぐるよう計算されたものだった。そこでリノベーションでは“自然との調和”を再度重視し、風の流れを再現するなど当初の設計を踏襲した。リノベーション以外でも太陽光発電施設の新設や空港周辺海域の保全のほか、航空機騒音をはじめとする周辺環境の監視など、環境に対する取り組みも行っている。来たる大阪・関西万博のテーマは「いの輝く未来社会のデザイン」だが、サステナブルな社会を描く取り組みも忘れてはいない。
もう1つのテーマである“人との調和”に関しては、関西国際空港が地域の誇りであり自慢の職場であること、リノベーション自体が地域の人々の生活や経済に資するという点を見逃せない。
「関西エアポートが関西国際空港の運営を引き継いだのが2016年春です。同年夏には改修の検討が始まったのですが、2018年の台風で大きな被害を受け、防災性能の強化に迫られました。電源の地上化や護岸のかさ上げなど足掛け3年の工事が終わると、今度は新型コロナ禍で売上が激減し、リノベーションに人やコストを割けない状況に陥った。何度も計画が棚上げになりました。それでもこうして実現できたのは、関係する機関や会社の協力に加え、自分たちの空港をもう一度輝かせたいという職員らの粘り強い努力があったからこそです」(山谷氏)
関西国際空港のリノベーションが、大阪・関西万博に沸く関西の人々をさらに活気づけ一体感を強くすることは間違いない。
開放感のある入国審査エリア
到着便の乗客が最初に足を踏み入れる入国審査エリアを3階に設置。緩く弧を描く高い天井の開放感あふれる空間の中、ガラス越しに大阪湾や泉州の街並み、緑の山々を眺めることができる。手続きの列に並ぶ時間が観光の時間になる仕掛けだ。大阪・関西万博期間中はイメージビジュアル「歩こう、大阪・関西。」が掲示され、“ワクワク感”も醸成。大阪・関西万博の「ファーストパビリオン」の役目を果たす。
大型スマートレーンを増設
複数の旅客が同時に荷物検査を受けられるスマートレーンを、日本で最初に採用したのが関西国際空港だ。このたびのリノベーションでは、4階の国際線出発エリアにスマートレーンを増設し、22台体制を構築。保安検査場の処理能力を、1時間あたり4500人から6000人にまで高めた。これまで通過に30分程度かかっていた保安検査を、10分で通過できる計算だ。
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関西の飛躍を支える空港に
地元との調和をはかりつつ、世界に向けて「大阪、関西の魅力を発信したい」と山谷氏が語る。
「現在、大阪市の中心部で大規模な都市公園開発が進み、2030年には大阪IR(統合型リゾート)ができるなど、大阪は他の都市にない試みを展開しています。大阪はこれからも成長します。その大阪と、同じく成長を続けるアジアの都市を結ぶのがエアラインで、空港はその受け皿です。したがってアジアをはじめとした世界中の方々に大阪を体験しファンになっていただくことが大切です。その役割をゲートウェイ空港としてしっかり担いたい。また、大阪が東京とは違う成長を果たすことができれば、関西国際空港の存在感も増します。これからも大阪の都市力向上を支えていきたいですね」
これからも関西国際空港は地域と共に成長していくことを目指す。





