佐藤寛之 氏

非公開化で“攻め”の成長軌道へ カオナビが拓く、人と組織の新ステージ

株式会社カオナビ 代表取締役社長 CEO 佐藤寛之 氏

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非公開化で“攻め”の成長軌道へ カオナビが拓く、人と組織の新ステージ

株式会社カオナビ 代表取締役社長 CEO 佐藤寛之 氏

2012年、国内でいち早く「タレントマネジメントシステム」を掲げて創業したカオナビ。以降、人材開発領域のパイオニアとして市場を牽引し、2023年には8年連続で国内シェアNo.1を獲得した。そんな同社が2025年6月、米カーライル社の資本参加による株式非公開化という大きな決断を下した。背景にあるのは、“未来への投資”に対する強い意志だ。パーパス実現への新たなビジョン「Talent intelligence™」の実践。佐藤寛之社長が語る「5年後の再上場」を見据えた戦略とは。

非公開化は「守り」ではなく
「攻め」の決断

佐藤寛之 氏

 2010年代初頭、国内には人材開発領域を一気通貫で支援するシステムがほとんど存在しなかった。そんな中でカオナビは先駆者として市場を切り拓き、今や日本を代表する多くの企業に導入される存在へと成長した。一方、近年のHRSaaS市場ではプレイヤーの集約が進み、タレントマネジメントに加え、労務・勤怠・給与計算などHR全体の境界が曖昧になりつつある。「この数年で勝敗が決まるフェーズに入ったのは間違いありません。そこで、中長期の投資をスピーディーに実行するため、非公開化という選択をしたのです」と佐藤氏は語る。

 決断の背景にあったのは、業績の停滞ではなく、企業価値をさらに押し上げるという攻めの姿勢だ。「米カーライル社による資本参加は財務再生ではなく、成長を加速させるためのパートナーシップです。彼らはIT分野への投資実績が豊富で、我々の戦略を最も理解してくれる存在です」と同氏は説明する。

 一般的にTOBという言葉には「買収」や「リストラ」といったネガティブな印象がつきまとう。しかし、カオナビが選んだのはそれとはまったく異なる“成長投資型”のスキームだ。「今回のTOBはLBO(レバレッジド・バイアウト)型再生ではなく、成長投資を目的としたエクイティ参加です。短期転売を目的とせず、長期的な企業成長をともに描くものです」と佐藤氏は強調する。競争が激しさを増すSaaS市場で、非公開化はむしろ次の成長ステージへと踏み出すための前向きな選択であり、同社は5年後の再上場を予定している。

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AIが生み出す「自走型」人事

 カオナビが掲げた新たなビジョンは、「HRに“データとAIの知”を掛け合わせ、個の可能性を拓く」というものだ。従来のタレントマネジメントから、AIを軸にした「Talent intelligence」へ――同社は、プロダクト企業からAIソリューション企業へと進化を遂げようとしている。その中心にあるのが「インフィニットモデル」と呼ばれる成長循環の仕組みだ。SaaSを使えば使うほど人事データが蓄積し、AIエージェントが学習して精度を高める。AIの価値が上がれば利用が進み、さらにデータが増える。この好循環こそが、同社のAI戦略を支える原動力である。

 カオナビが目指すのは、企業が外部に頼らず“自らの力で”人事変革を進められる「自家発電型のソリューション」だ。企業独自のデータをAIエージェントに学習させることで、その企業に最適化されたソリューションを自ら生み出せる状態をつくる。「例えばコーチングを想像してみてください。これまでは上司が外部研修を受け、時間をかけてスキルを身につける必要がありました。ですが、AIエージェントを活用すれば、上司と部下の間に“AIコーチ”が立ち、過去の対話内容を踏まえて次に話すべきテーマやアプローチを提案してくれる。研修に何年も費やす必要がなくなります」(佐藤氏)。

 AIが力を発揮するのは、人事データの多くが“定性情報”で構成されているからだ。面談記録や評価コメント、キャリア希望などのテキストをAIが解析し、育成や配置のヒントを導く。これまで勘や経験に頼っていた領域に、AIが新たな示唆をもたらすのである。こうしたAIエージェントの基盤となるのが、カオナビが持つ3つのデータだ。「我々は長年にわたり、さまざまな企業の人事施策を支援してきました。そこで得た“企業ごとの独自性の高いデータ”、最新の“リアルタイム人事データ”、そして4,000社以上の利用で蓄積される“実践的な施策ノウハウ”。この3つが、カオナビの強みです。これらを掛け合わせることで、この領域において圧倒的に価値の高いソリューションを提供することが可能になります」と同氏は話す。

 “どんなデータをどう活かすか”――その設計力こそが、次のHRテックを決定づける競争軸になりつつある。

人とAIの共進化が
“働く”を変える

 AIの進化により、ここからHRの世界はどのように変わっていくのだろうか。「これまで人の手でしかできなかったことを、データとAIが担う。それは単なる効率化ではなく、働き方そのものを変える挑戦です」と佐藤氏は語る。

 ただし、AIが人の感性や判断を奪うわけではない。「AIは最適な選択肢を示しますが、最終的に決断し、実行するのは人です。AIが道筋を整え、人が想いを持って進める。その共進化こそが理想の姿です」と佐藤氏が言うように、これからの時代はAIによって、人がより創造的な仕事に集中できるようになる。

 こうした変化の中で、カオナビが求める人材は、新しい価値を生み出す“Game Changer”だ。佐藤氏は「常識を疑い、自ら新しいルールを描ける人。AIを使って企業の戦略を支援できる人。ITとコンサルティングの両面から顧客の課題に踏み込める人に、ぜひジョインしてほしい」と呼びかける。

 非公開化により、“Game Changer”が挑戦できる環境は整った。ここからは全力で走るだけだ。その先に、佐藤氏はどんな未来を描くのだろうか。「今は産業構造の一大転換期です。我々のようなベンチャーにも大きなチャンスがあります。今後5年で事業を一気に加速させ、AIとデータの力で日本の“働く”を変革していきます」。

 新たな成長局面へと舵を切ったカオナビ。AI時代の“人と組織”の在り方を変える挑戦は、すでに始まっている。

佐藤寛之 氏

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