「アジャイル」という言葉を社名に冠し、2022年に KDDI株式会社(以下、KDDI)から分社化して設立されたKDDIアジャイル開発センター株式会社(以下、KAG)。文字通り、その開発手法はアジャイル開発に特化している。AI時代、ますます有効性を発揮するアジャイル開発を武器に、様々な企業のDXを支援。さらに、組織のあり方そのものをアジャイルに最適化した「アジャイル経営」に取り組み、その知見を生かして顧客企業に伴走している。変化が激しい時代だからこそ効果を発揮するアジャイルについて、代表取締役社長/CEOの木暮圭一氏に聞いた。

応力に優れたアジャイル開発が
変化が早い時代のDXに有効

DX推進のためのシステム構築のアプローチとして、アジャイル開発への注目が高まっている。ビジネス環境が激しく変転する状況にあって、システムには継続的な変化対応が求められる。変化に柔軟に対応していくには、短期間のサイクルで素早く構築・改善を繰り返すアジャイル開発が有効である。そういったなかで、アジャイル開発に特化したDX支援を行うためにKDDIから分社化して2022年に設立されたのが、KAGである。

その起源は、2013年に実施されたKDDIの法人向けクラウドサービスの開発にさかのぼる。「このプロジェクトでは従来のウォーターフォール型の開発では実現できないスピード感のあるシステム構築が求められました。そこで、アジャイル開発を採用したのです」と木暮氏は振り返る。当時はまだ数名のチームだった。

KDDIアジャイル開発センター 代表取締役社長 CEO
木暮 圭一 氏

その後、例えば「auでんき」のサービスなど、より幅広いユーザーに利用されるシステムをアジャイル開発で構築。KDDI内の様々な事業部門のニーズに対応しながら、2016年にはアジャイル開発の専任部隊として、社内にアジャイル開発センターを設置した。そして2022年に、そこで培った知見やノウハウを引き継いで同センターを分社化したのが現在のKAGだ。KDDI内にとどまらず、外部の様々な企業におけるシステム構築をアジャイル開発によって支えるべく、新たなスタートを切った。今では、顧客企業の課題感に合わせて、システムの開発から組織文化のアップデート・定着までをオーダーメイドで提案する。

顧客企業が抱える課題に合わせて、プロジェクトのどのフェーズからでも伴走する

アジャイル開発の有効性について、木暮氏は説明する。「アジャイル開発は、ゴールがはっきりとしていないプロジェクトに対して有効な手法です。ゴールが分からないときにどうすればいいか。実際に試してみて失敗したら修正するというサイクルを素早く繰り返すことです。そうすることによって、目指すべきものの形が見えてきて、最後にはゴールにたどり着くことができます。アジャイル開発に向いているのは、小さくはじめて、雪だるまのように価値を増やしていくようなプロジェクトです。ユーザーにとって価値が高いプロダクトとは、ニーズや市場状況をくみ取って常にアップデートしつづけるもの。例えば我々が開発した『auでんき』の契約者向けアプリは、月間100万人以上のお客さまに利用いただく人気アプリに成長した今でも、新機能を次々とリリースしています。そういったプロダクトの構築に、アジャイル開発は適しています」。

ジャイル開発とは単なる開発手法ではなく
組織全体の構造変革そのもの

アジャイル開発を実現するためには、組織全体の変革が必要だと木暮氏は述べる。「スピードが重視されるアジャイル開発を実践するためには、企画部門や開発部門はもちろん、経営層にも迅速な意思決定といったスピード感が求められます。組織全体がアジャイルであるべきなのです。そのため、我々がお客さまに提供するのは、アジャイル開発によるプロダクト開発やシステム構築だけではなく、アジャイルな経営を可能にする組織文化へアップデートするためのサポートです。我々はKDDI時代から10年以上をかけて、アジャイルな組織文化をつくり、定着させるための試行錯誤を繰り返してきました。そこで積み重ねた『実践知』を生かして、お客さまをサポートすることができます」。

アジャイル開発においては、機敏さ、すなわち「AGILITY」こそが最大の価値である。その達成に向けて同社では、まだKDDI本体の部署であったときに、「アジャイル開発センター憲章」を策定。以来、分社後には全社共通の価値観として共有してきている。そこには、「お客さまの体験価値を最大化する」「課題は技術で解決する」「スピードを優先し組織の壁を超える」など、9つの行動指針が示されており、それらを根幹で支えるカルチャーに据えられているのが「楽しくやる」である。この「楽しく」というのは、自分が働いて組織に貢献している、顧客に価値を提供し、喜んでもらえているといった実感によりもたらされる「楽しさ」である。それは言うまでもなく、仕事に前向き取り組む原動力となるものだ。

KAGのコアバリューである「AGILITY」の実現に向け、「楽しくやる」を根源的な企業カルチャーに9つの行動指針を示す

また、ともすればクリエイティブな発想や行動を妨げる「マイクロマネジメント」を行わないことを組織運営における重要テーマとして掲げている。

これについて木暮氏は「マイクロマネジメントを行わない自律的状態が、能動的なエンジニアを育んできました。指示を待つのではなく、自分たちが何をすべきかを考えて自発的に動くことができる。そこから、アジャイル開発に必要なスピードが生まれます」と語る。このように同社は、社員起点のボトムアップ型で、アジャイル開発に最適化された自社組織の運営を行っている。このことが、変化の時代に直面している顧客企業のDX推進に向けた価値提供を最大化することにつながっている。

走型によるプロジェクト支援で
アジャイル開発可能な人材の育成に貢献

同社のサービスを活用して成果を上げている企業の事例を紹介する。ある精密機器メーカーでは、変化する市場を見据えて、新規事業創出へ向けたプロジェクトを始動させた。その第一歩として、商用アプリの開発に着手するとともに、アジャイル開発を社内に定着させるための人材育成と体制構築に取り組んだ。そこでは、KAGのスクラムチームが伴走してアジャイル開発を実践。アプリ開発だけでなく、エンジニアのスキルアップのための育成や、サービスのその後の成長に向けた支援などもワンストップで提供した。1年間の実践を経て、その精密機器メーカーでは、自立してアジャイル開発を実践できるようになった。「DXを推進するためには、内製開発が必須です。お客さまに伴走することによって、我々が持っているスキルセットを伝えることができます」(木暮氏)。

また電力小売事業を展開する「auエネルギー&ライフ」では、これまでのウォーターフォール開発によるプロジェクトでは開発が長期になることに課題を感じていた。これに対し、アジャイル開発センターがあらかじめ準備していたアジャイル開発のプロセスに沿って進めることで、スムーズなプロジェクト進行を実現。複数のスクラムチームが連携して開発を行う「スクラムオブスクラムズ」と呼ばれる大規模な人員体制で、アプリの運用と新規開発を並行して進められるようになり、新機能の追加や既存の機能を改善するなど案件が多いプロダクトでありながら、開発スピードを大幅に上げることに成功した。

そのほか、現在、KAGが注力しているのが生成AIの活用だ。「昨今のDX推進には、生成AIの活用が欠かせないものとなっています。例えばシステム開発の際には、生成AIによってプログラムコードを自動生成することによって、大幅なスピードアップが図れます。また、顧客企業における日常的な業務の効率化にも生成AIの力が役立ちます。生成AIを組み込んだDX推進によって、新たな価値を提供していきたいと考えています」(木暮氏)。変化が早い時代だからこそ有効性を発揮するアジャイル開発の強みを生かすべく、また顧客企業の一層のDX推進・競争力の強化といった支援で、KAGの挑戦は続く。

KDDIアジャイル開発センター

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