「まさか」が日々、現実になる。関税摩擦に激甚災害、人手不足……
サプライチェーンリスクがかつてないほど高まる中、A.T. カーニー(グローバルブランド名はKEARNEY)グループ傘下で、
グローバルでの調達とサプライチェーン変革に特化した
コンサルティングファーム・プロキュラ(PROKURA)が日本上陸を果たした。
A.T. カーニーの東京オフィス(六本木)にアジア初となる拠点を設けて協業し、
日本企業の調達・サプライチェーンを、よりレジリエントかつ価値創造型のものへと変革しようとしている。
不確実な世界でどう競争力を確保するのか、両社の経営陣4人に訊いた。
「日本を変える、世界が変わる」というミッションの下、日本の大企業20社と成長企業200社に支援を集中するA.T. カーニー。ウェルビーイングな社会の実現を目指す、少数精鋭のグローバル戦略ファームだ。同社アジアパシフィック代表 兼 日本代表の関灘茂氏は、不確実性の時代、企業競争力を左右するのは「調達・サプライチェーンの最適化」であると指摘する。
A.T. カーニー アジアパシフィック代表 兼 日本代表
関灘 茂 氏

「原材料費の高騰が進み、企業は調達の見直しを迫られています。関税をはじめ、地政学的リスクも一段と変化が読みづらくなっており、近年激甚化する自然災害への備えも欠かせません。単なるコスト削減のみならず、世界がどのように変化しても対応できるよう、持続可能性とコスト競争力のバランスを取りながらの調達の最適化が急務です。しかし、調達機能にのみ手を入れればいい、というわけではないところに難しさがあります」
そもそも多くの日本企業は部門ごとに個別進化を遂げてきた。調達、生産、物流、営業、マーケティング等、機能ごとに最適化を図ってきた結果、大量調達によって調達単価は抑えられたものの在庫が過剰になる、あるいは在庫のスリム化を徹底した結果、販売機会を損失する……といった“部分最適、全体不最適”もたびたび生じていた。
「多くの企業が取り組む必要があるのは、様々な環境変化のシナリオのもとでも事業継続を可能とするための調達を起点としたプロセス全体の最適化です。組織に横串を通して変革を進めるには、調達について十分に知見があり、かつ、サプライチェーン全体も理解している人材が不可欠です。当社の調達やサプライチェーンの専門家が、プロキュラと協業することにより、グローバルに事業を展開する日本企業の創造と変革により力強く貢献したいと考えました」(関灘氏)
プロキュラは2008年にデンマークで創業し、調達とサプライチェーンに特化したコンサルティングを提供してきた。主に欧州市場で成果を収め、21年にKEARNEYグループ入りした。日本のオフィスはアジアでは最初の拠点となる。
「私たちはグローバルにサービスを展開しており、多様な業界ごとに蓄積した最適なノウハウをクライアントに提供することができます。培った知見を日本市場で活用できることをとても嬉しく思っています」とプロキュラでパートナーを務めるChristian Svane氏は言う。
Prokura パートナー
Christian Svane 氏

調達においてプロキュラの持つ高いグローバルインテリジェンスが奏功する場面は多い。「たとえば調達先の分散を検討する際、どの国にどのような調達環境があるのか、サプライヤーにはどのような要求水準を満たす必要があるのか、といった詳細な情報が欠かせません。言語の壁も、ローカルルールも複数ある。日々のオペレーションに忙殺されている企業の調達部門の方々は、詳細な情報を自ら把握し、調達戦略を検討することに時間を割きづらい現状もあります。プロキュラが伴走することで、インテリジェンスを強化しながら、オペレーションの効率化も図ることができます」と、A.T. カーニーのシニアパートナー、小崎友嗣氏も話す。

A.T. カーニー シニアパートナー
小崎 友嗣 氏
そのプロキュラのビジネススタイルには3つの特長がある。
「1つ目は、Think global, act localの実践です。日本企業は独自の調達アプローチを構築していますが、私たちはクライアントと日本語で、密接に協働しながら利益創出まで実行します。2つ目は効率化に貢献するデジタル化の支援です。単にシステムを導入するのではなく、実務において“思わず使いたくなる”ような、価値あるデジタルソリューションを提供します。3つ目は圧倒的なコスト削減です。調達コストが売り上げに占める割合は、業界にもよりますが50~70%にも上ると言われています。調達の効率化は、最も素早く、低リスクで大きな経営インパクトを与えられるものなのです」(Svane氏)
さらに、A.T. カーニーとプロキュラによる協業は、日本企業の調達部門が持つ潜在能力を開花させるともいう。
「私たちは調達業務の効率化と高度化、グローバル化も支援しますが、それだけでなく、調達起点の価値創造の支援もしています」と関灘氏。
Svane氏も「調達への注目は近年非常に高まっています。市場競争力を維持するためのバリューチェーンの要だからです。たとえば過去5年間のスタートアップへの投資額を見ると、最も投資が集中した分野のひとつに“調達向けのソフトウエア”があります。ではこうしたソフトウエアの活用で調達部門の規模は縮小するかと言うと、実際には逆のことが起きています。手数の多いオペレーション業務はテクノロジーで効率化しつつも、事業開発に重点が置かれるようになっているからです」と口を揃える。
背景にあるのは、商品やサービスのコモディティ化だ。
「多くの消費財の商品カテゴリでは、コモディティ化や同質化から抜け出すことが難しくなっています。だからこそ、素材や成分の専門知識をはじめとした調達起点での新たな価値創造が求められています。先進的な企業は開発購買機能の強化を進めています」(関灘氏)
それができるのは、調達に関する高い専門性を有するスペシャリストだけだ。
「コストを抑えることだけが調達部門の仕事ではありません。私たちがご一緒している調達部門の方々の中にも、サプライチェーンのみならずバリューチェーン全体を調達から変え、事業変革につなげたいという意欲、それを実現するアイデアをお持ちの方が数多くいらっしゃいます。私たちのような戦略コンサルタントがハブになることで、これらのアイデアを経営にフィードバックすることができます。アイデアがまずひとつでも形になれば確実に現場は活性化し、会社の風土変革にもつながるのです」と小崎氏も言う。
調達起点での風土改革。そうしたダイナミズムを共に実感できることを、かつて日本企業に勤めた経験があり流暢な日本語を操るMartin Rydland氏は「クライアントとコンサルタントという関係を超え、同僚として働いているような気持ち」と表現する。

Prokura アソシエイトパートナー
Martin Rydland 氏
プロキュラ創業の地であるデンマークは、労働生産性の高さで知られている。2022年度のOECDの調査では、年間平均労働時間は1,363時間とOECD加盟国ではドイツに次いで2番目に短い。一方の日本は1,607時間と、大きな差が生じている。
なぜ高い生産性を保てるのか、Rydland氏の説明は明解だ。
「ニーズの高まりに合わせ、私たちは日々、専門性を磨く必要があります。そして、優れた専門家になるには時間がかかります。そのためには挑戦を厭わない姿勢とそれを許容する環境、さらには、長くこの仕事に情熱を注ぐための健康的なワークライフバランスが必要です。若手にも仕事を任せ、マネジャー層も若手も短い時間で効率的に働く。これが、フラットで公平というスカンジナビアの哲学に由来するプロキュラの基本的な働き方です。もちろん、クライアントの皆さんのワークライフバランスも尊重します」
この考え方・働き方はまさに今、多くの日本企業が取り入れようとしているものだ。
「全体を見通した調達の最適化とサプライチェーンの変革、そして、クライアントの皆さんが仕事により達成感や充実感を感じること。A.T. カーニーとプロキュラは、この両方の実現を支援することで、クライアント企業の皆さんの持続的な成長に貢献していきたいと考えています」(関灘氏)

