Josh Bersin氏
AI時代の人事リーダーシップ発揮のカギを探る

自律的な成長と
企業の持続可能性に向けた
人材戦略の新しい形とは?

世界のビジネスにおいて、もはや当たり前のものになりつつあるAI。人材戦略でAIをどう活用するかは、CHRO(最高人事責任者)やHRリーダーにとって今後の大きなテーマである。2025年9月30日、東京で開催されたLinkedIn主催「Japan Talent Roadshow 2025 Special Edition~AI時代における人事リーダーシップの再定義~」には、このような問題意識を共有する多くのCHROやHRリーダーが集まった。同イベントのセッション内容の一部をレポートする。

12億人のプロフィールデータで
HR課題の解決に貢献

最初に登壇したLinkedIn日本代表の田中若菜氏は、LinkedInが企業の成長にどう貢献できるのかを、数字を交えながら説明した。

それによると、LinkedInは世界の労働力人口約34億人のうち、3分の1近くにあたる約12億人分のプロフィールデータを有し、プラットフォーム上で6900万社の企業が常に1500万件の求人情報を出しているとのことだ。さらに、LinkedInの求人情報がスキルベースであり、学びやリスキリングの面でも大学や研究機関との連携で膨大なLinkedInラーニングを提供していることの強みについても解説した。

田中若菜氏

田中若菜リンクトイン・ジャパン
日本代表

LinkedInで、毎分起きていること

LinkedInは世界最大級のダイナミックな人材ネットワークにより、求人応募やフィード更新、ラーニングまでもカバー。しかも、上記の数字が週次や月次ではなく“毎分”、アクションとして起きている

田中氏は、CHROやHRリーダーの課題として採用ニーズが常に変動していること、スキルの進化に企業がついていけていないこと、そして社内人材の活用が十分でないことを挙げ、LinkedInからの発信として、以下の言葉でオープニングメッセージを締めくくった。

「LinkedInは、世界最大規模の人材プラットフォームです。日本でも急成長しており、Z世代や学生の参画を推進力に500万人規模に迫る勢いです。また、ダイナミックな人材ネットワークとAIを掛け合わせた採用、育成、成長を支える新しいソリューションも提供開始しており、多くの企業の人材課題の解決やHR変革に貢献できると考えています」(田中氏)

企業成長のカギを握るのは
“インターナルモビリティ”

続いて特別ゲストとして、グローバル人材戦略家のJosh Bersin氏が登壇した。同氏は人事、タレント、職場のイノベーションに特化した調査・助言会社「The Josh Bersin Company」の創設者兼CEOであり、HR専門職向けグローバル育成アカデミー「Josh Bersin Academy」の主宰者でもあるHRテクノロジー分野の世界的なインフルエンサーだ。

LinkedInを評価するBersin氏の講演テーマは、「グローバル人材戦略の最新動向とインサイト」。冒頭でBersin氏は、AIは人間を阻害するのではなく、スーパーパワーによって人々に力を与えると説き、「成長の機会を作り、生産性を上げ、企業の競争力を向上させるのがAIです」と話す。

Josh Bersin氏

Josh Bersinグローバル人材戦略家

これを踏まえ、まずBersin氏が言及したのがAIへの投資だ。米国ではAIインフラに多額の設備投資が行われ、さらに「CEOの92%がコスト削減ではなく収益拡大を目的に積極的な取り組みを進めています」と紹介した。テクノロジーへの投資で定型業務がAIに置き換われば、職務の再定義が進み、人はより重要な課題に取り組むスーパーワーカーになるというのが同氏の考えだ。

Bersin氏は、会社が実際にAIを導入するには4つのステップがあると解説する。

「最初はアシスタントとして導入するステップです。次のステップでは再活用できるプロンプトを標準化して自動化を目指します。3番目のステップは、自分のAIと他者のAIを会話させてエージェントを多機能化し、最終的なステップでは自律的なAIエージェントが完成します」(Bersin氏)

AI導入のステップ

Bersin氏が解説したAI導入のステップ。アシスタントとして導入し、自動化、多機能エージェント、自律化と、ステップが進むにつれて、効果が大きくなっていくことが示されている

Bersin氏は、多機能で自律的なAIエージェントは組織全体を俯瞰できるため、採用や育成においても有効だと説く。そして、組織変革の具体的な打ち手として挙げたのが“インターナルモビリティ”(社内人材の流動化・活用)の推進だ。

「実際に社内異動が活発な企業ほど利益レベルが高いというデータがあります。異動を通して経験を積めば、新規事業へのアンテナも高くなりますし、他部署への理解が深まれば企業文化の強化につながるからです。人材アーキテクチャのアップデートにも寄与するでしょう」(Bersin氏)

最後にBersin氏は、「始まったばかりのAIの長い道のりにおいて、新しい役割に挑戦したい人の背中を押し、パフォーマンスやスキルを伸ばせる社内文化を醸成できるのはここに集まった皆さんです。企業の成長を牽引してください」という激励で講演を締めくくった。

学び・成長・挑戦のサイクルで
社員の自律性を促す

続く基調講演では、富士通取締役執行役員専務CHROの平松浩樹氏が登壇。自社での取り組みを引きながらAI時代における企業変革の必要性について語った。平松氏は、「従来の終身雇用型人事は、人を抱え込む一方で人材育成への投資は少なく、社員の自律性や成長が促進できていなかったと指摘した上で、ジョブ型人事制度への移行を進める富士通の取り組みを紹介した。

「どうすれば社員が自分で成長する手助けができるのかを考え、たどり着いたのが学び・成長・挑戦という3つのスイッチのうち、1つでもONにできれば連動していいサイクルが回り始めるという点でした」(平松氏)

平松浩樹氏

平松浩樹富士通
取締役執行役員専務
CHRO(最高人事責任者)

とくに入り口として重視したのが“学び”だ。言い訳の排除、危機感の醸成、好奇心の喚起といったアプローチを導入し、目指すポジションを登録すると、必要な学習コンテンツがリコメンドされたり、職責に報酬をひもづけたりと、学ぶ動機づけを後押しした。その結果、エンゲージメント指標は同業他社を上回り、LinkedInラーニングやAIコーチングの利用率も上がった。富士通グループの国内社員約8万人に対して、LinkedInラーニングの導入1年目で活用率95%を達成したという。

平松氏は、「経営と人事が連携し、強制的な再配置ではなく、社員がキャリアオーナーシップに基づいて自律的に挑戦できる環境を用意することが企業の持続的成長につながると思います」とのメッセージで講演を締めくくった。

社内に市場原理が根付けば、
自律的な組織へと脱皮する

続いて、LinkedIn日本代表の田中若菜氏が再び登壇し、平松氏とのトークセッションが行われた。

田中氏が富士通の取り組みについて「Josh Bersin氏の講演に出てきたインターナルモビリティの成功例ですね」と感想を述べた上で成功のポイントを聞くと、平松氏は自律と信頼をキーワードに挙げた。

「2019年に代表取締役社長に就任した時田(隆仁)が、グローバルDX企業への変革や人事のフルモデルチェンジに舵を切り、信頼して任せてくれていますし、我々人事の人間も社員への信頼が足りなかったという反省の下、自律的な組織へと変わりつつあります。ポスティングも拡充し、社内に健全な競争と市場原理が根付きました」(平松氏)

ジョブベースの人材マネジメントへの転換

時田社長のグローバルDX企業への転換方針を背景に、ジョブ型人事へのフルモデルチェンジを図った富士通。その推進力のカギとなったのが信頼と自律だ

田中氏からLinkedInの人材戦略への貢献度合いを聞かれると、平松氏は「戦略的議論を進める上では仮説が必要ですが、LinkedInのデータがそこを埋めてくれています。AI時代に向けた人材ポートフォリオの解像度アップに役立っています」と応えた。

最後に平松氏は「重要なのは、俊敏性とパーソナライズ化、データドリブンで、信頼に基づく自律的な関係性を築くことです。CEOとCHROが連携し、一貫性を持って取り組めば必ず変わることができます」とエールを送った。

お問い合わせ

リンクトイン・ジャパン株式会社

https://jp.linkedin.com/