脱炭素化に挑むMAHLEと日本特殊陶業の戦略
脱炭素化に挑むMAHLEと日本特殊陶業の戦略
電動化や知能化といった大きな変革に見舞われる自動車業界。MAHLE(マーレ)とNiterraグループ 日本特殊陶業は、どちらもエンジン(内燃機関)部品で市場をリードしてきた独立系部品メーカーとして、カーボンニュートラル社会に向けて企業変革に取り組む点も共通する。マーレグループCEOのアルンド・フランツ氏と、日本特殊陶業代表取締役社長の川合尊氏が、両社の時代認識と、変革に取り組む経営姿勢について語り合った。
—自動車業界は現在、100年に一度の変革期と言われています。お二方は現状をどのように認識していますか。
川合 これだけの大きな変化は自動車業界にとって初めてです。とはいえ、環境問題や利便性の向上を考えると、起きて当然の変化とも言えます。日本特殊陶業としても、この変化が柔軟性ある企業へと変革するためのチャンスと捉えています。
フランツ 今起きている変化はとても重要かつ必要なものです。脱化石燃料という業界共通の目標があるからです。恐らく今後10年は、自動車の長い歴史の中でも最もエキサイティングな期間になるでしょう。
—日本特殊陶業はスパークプラグで世界シェアトップ※を誇り、マーレも内燃機関部品で市場をリードしてきました。脱炭素という大きな変化の中、どのような思いで舵取りをしていますか。
フランツ マーレは将来に向けた戦略「MAHLE 2030+」を策定しました。これは重点領域を「電動化」「熱管理」「内燃機関」の3つに定め、集中的に投資していくというマルチパス戦略です。電動駆動システムは、もちろん中心的な役割を果たしていきますが、熱管理も、今後のパワートレーンで重要になっていくと考えています。そして当社は、内燃機関が今後も重要な技術として残ると確信しています。
川合 当社としてもスパークプラグは今後も必要とされる部品と考えており、企業として、その需要に責任を持って応えていきたいと思っています。同時に、当社のコア技術であるセラミックスを活用し、モビリティに限らず様々な分野で新しいエネルギーを活用して新しい価値を提供していくことが今のビジョンです。
—脱炭素の一方、世界的にEV(電気自動車)の成長がスローダウンしているという報道が目立ちます。世界の情勢をどのように見ていますか。
川合 EVの初期需要が一巡し、インフラ整備の制約もあって、今は需要が落ち着いていますが、今後もEV化、脱炭素化が推進されるのは変わらないでしょう。EVだけではなく、様々なエネルギーやモビリティが各々の地域に適した形で発展していくと思っています。
フランツ 大きな流れとしてはEVを買いたいという意識は世界的に強くなっています。ただし予想の難しい様々なファクターがあり、こうなると断言するのは危険だと思います。また世界では現在、15億台を超えるクルマが走っており、ここから出るCO2排出量をいかに減らすかも大きな課題です。例えば、世界でバイオ燃料を増やしていくことはCO2排出量減少に大きく貢献するでしょう。
※2023年3月末時点の日本特殊陶業推計
SOFC発電システムの要となる「SOFCスタック」
—マーレと日本特殊陶業は両社とも水素の活用に力を入れていると伺っています。日本特殊陶業は燃料電池の開発に力を入れていますね。
川合 SOFC(固体酸化物形燃料電池)という、セラミックスを電解質に使う燃料電池の開発を当社グループの森村SOFCテクノロジーで進めてきました。SOFCは水素と酸素から電力をつくるだけでなく、逆反応で、水を電気分解し水素と酸素をつくることができます。ただ、水素活用は当社単独で実現できるものではありません。2024年5月には、水素・炭素循環型社会の早期実現に向け、CVCファンドによる投資と実証フィールドを通じた成長支援により、スタートアップのアイディアを実現へと後押しする「水素の森」プロジェクト(SUISO no MORI)を開始しました。
フランツ 燃料電池は水素を活用する上で効率が良い技術ですが、システムや車両のコスト、水素供給のインフラ整備などに課題があり、量産に移行するには時間がかかるでしょう。そのためマーレでは水素エンジンの普及も想定した開発を行っています。既存のインフラや部品生産ラインが活用でき、特に商用車にとって水素エンジンは有用だと思っています。
マーレグループが掲げる2030年に向けたマルチパス戦略「MAHLE 2030+」
—最後に、お二方がそれぞれ目指す企業像についてお聞かせください。
フランツ Climate Neutral(気候に中立) なモビリティ社会を実現することは、マーレグループ企業理念の根幹です。私たちは2040年までに自社事業のカーボンニュートラルを達成すべく、中間目標として、2030年に2019年比で49%のCO2排出量を削減します。既に2023年の時点で43%削減しており、いい進捗状況と言えると思います。
川合 当社は2050年にカーボンニュートラル達成を目指しており、昨年度は2018年度比で31.7%削減しています。現在は再生可能エネルギーの購入分も含まれていますが、将来的にはCO2排出量の削減や、新しいエネルギーの生産に直接関与していきたいと考えています。そして持続可能な社会の実現に向けて新たな企業価値を提供していきたいと思っています。
1936年に自動車用スパークプラグメーカーとして創立。スパークプラグ、排ガス用酸素センサの他、環境・エネルギー、モビリティ、医療、情報通信の各事業分野に注力し、社会課題解決に貢献する製品やサービスの提供を推進している。2023年4月1日に、英文社名を「NGK SPARK PLUG」から、「Niterra(ニテラ)」に変更した。
1920年に創立。内燃機関用の軽合金ピストンの製造を皮切りに、エアフィルターやオイルフィルターの開発にも着手し、世界最大級の自動車部品サプライヤーとなる。現在では「Climate Neutral(気候に中立)」なモビリティの実現に向けて、「電動化」「熱管理」「内燃機関」3つの事業領域に焦点を当てている。
日本特殊陶業株式会社
https://www.ngkntk.co.jp/
マーレジャパン株式会社
https://www.jp.mahle.com/ja/