場とつながりが共創を生む

1991年に東京大学文学部を卒業後、野村総合研究所(NRI)入社。戦略コンサルタントとして様々な領域を担当の後、2019年経営役・人事部長、21年執行役員、23年常務執行役員を経て、24年6月から現職。神奈川県出身、趣味はクラシックバレエ

1986年に東京大学法学部を卒業後、三菱地所に入社。2014年ロックフェラーグループインターナショナル社代表取締役社長兼CEO、18年三菱地所執行役常務、22年取締役兼代表執行役 執行役専務を経て、23年4月から現職。東京都出身、趣味はマラソン

不確実性を増す世界で、企業の重要課題となっているのが“新規事業の探索”だ。イノベーションフィールドに名乗りを上げる丸の内では「共創」に着目し、新規事業創出を促そうとしている。その目指す地平と可能性について、野村総合研究所の柳澤代表取締役 社長と、三菱地所の中島代表執行役 執行役社長が語り合った。進行役は日経ビジネス発行人の松井健。大企業らしいイノベーションの具体例も交え、日本経済再浮上のヒントを探る。

イノベーションに向け企業がとるべき姿勢とは

中島:自戒を込めて申し上げると、日本企業は長らく「内向き」でした。しかし今はそこから脱却し、外部に開かれたオープンイノベーションを推進する機運が高まっています。不確実性が高まっているこの時代に、どこか1社だけで社会課題を解決するのは事実上不可能だからです。

柳澤:加えて、ミクロとマクロの両方の視点を持つことも欠かせません。イノベーションは個人が身近に感じる不便さのような、小さな課題を起点に起こることが多いと感じています。しかし身近な視点にフォーカスしすぎると、持続可能な形で大きな社会課題の解決に挑み続けることはできませんし、その逆もしかりです。両方をバランスさせることが重要ですよね。また、急激な成長の過程にあるAIなどテクノロジー活用も不可欠です。

中島:失われた20年、30年を経て今、多くの日本企業はそうした意欲を持って成長へとかじを切りつつあることを、私自身も様々な場で実感します。こうした熱意、マインドを定着させ、伸ばすことは重要です。特に、様々なアセットを持つ大企業が関わる共創は社会に与えるインパクトも大きい。だからこそ、このモメンタムを大切にしていきたいと考えています。

大企業はどのようにして共創を始め、育てるか

柳澤:NRIは日本航空と『どこかにマイル』を共創した経験があります。国内線特典航空券の目的地を、空席状況なども考慮したうえでシステムが決めるというサービスです。地方創生やサステナビリティという観点からもご好評をいただいていますが、これも日本航空の顧客基盤、マイレージという仕組み等、大企業ならではのアセットあってこそです。着想のきっかけは、両社のカジュアルな意見交換でした。アイデアがその場で霧散してしまわなかったのは、話をつなげる場を持ち続けることができたからだと思っています。主な目的は他にあってもコンサルタントが足しげく通い、フェイスtoフェイスのコミュニケーションを繰り返すことで、アイデアがぐんぐん成長していったのです。

中島:場とつながりがあったからこその共創事例ですね。そうした事例を増やすためにも、三菱地所では今、“丸の内は、次を問う。 まちまるごとで未来へ。”をスローガンに、丸の内エリア全体を共創のプラットフォームとする“まちまるごとワークプレイス”構想を推進しています。多様なワークプレイスや、一企業での実現が難しい機能を共用施設として提供するといった取り組みですね。

CVCファンド「BRICKS FUND TOKYO」を通じて生まれた共創事例もあります。2024年に障がい者の就労を支援するスタートアップであるVALT JAPANに出資し、丸の内エリアにおいて、DX分野での就労支援に取り組んでいます。これは私たちだけでは生まれえなかった、CVCを持ったからこその事例です。

また、交流の一助になればと17年に始めた「大手町・丸の内・有楽町 仲通り綱引き大会」を今年も大盛況で開催することができました。エリアで活動する仲間の出会いの場として機能し、交流のきっかけや出場する企業の皆さまのチームビルディングにも貢献できていると自負しています。

さらには、350団体以上が参画する、産・官・学・街の連携で事業創出を目指すオープンイノベーションプラットフォーム「TMIP」も運営しています。

柳澤:TMIPのようなプラットフォームは、共創のパートナーとの出会いをサポートし、セレンディピティ=偶発的な価値の創造をより生まれやすくしますよね。21年に、コマツ、NTTドコモビジネス、ソニーセミコンダクタソリューションズ各社とNRIとで建設業界のDXのための新会社EARTHBRAINを設立したときには、あちこちを駆け回ったことを思い出します。丸の内ほどの規模なら、実は同じビルや隣のビル、あるいは綱引きで戦った相手などにパートナー候補がいることもあるでしょう。

中島:TMIPでは、大企業発の新規事業の発信と成長支援を目的とした共創型アワード「TMIP Innovation Award」も主催しています。昨年開催の第2回では、NRIのTalent Market Placeが入賞しましたね。

「TMIP Innovation Award 2024」表彰式

柳澤:生成AIを活用して人材戦略と事業戦略のマッチングを図るプラットフォームというアイデアは、担当者が留学先で着想し、社内でも育ててきたものでした。当社にはかなり以前から、必ずしも本業とは関わりのないアイデアに対しても予算を配分する「インキュベーション分科会」という仕組みがあります。今は本業ではなくても、いずれは事業の柱になるかもしれないという期待もしています。

ただ、日々忙しい人たちに「本業ではないことへも挑戦しましょう」と声をかけるだけでは後押しとしては不十分ですよね。大切なのは転職や起業をしなくても挑戦できる仕組みであり、先駆者です。先駆者の存在は周囲のマインドを変え、組織に大きな活力を与えます。

もちろん、アイデアを具現化するには時間もかかりますし乗り越えるべきハードルも多々あります。そういう時、TMIPのように社内外からの応援や具体的なサポートがあれば諦めずにすみますし、ブレイクスルーのきっかけが得られることもあるでしょう。

課題先進国・日本に共創は何をもたらすか

中島:日本は課題先進国といわれますが、これは課題解決先進国になる可能性がある、ということでもあります。三菱地所は共創のプラットフォームとしてのまちづくりを加速し、その実現に貢献していきたいですね。

柳澤:共創は、どこか1社だけが成果を総取りするものでも、勝敗がつくものでもなく、ともに課題を解決し成長し、成果も共有するものです。今後もコンサルティングで磨いてきた企画力などを共創に活かし、共創によって受けた刺激を社内の活力につなげたいとも思います。様々な技術やお客さまのケイパビリティを統合し、バリューアップすることで社会課題解決に尽力していきたいですね。

中島:ぜひ多くの企業に、丸の内エリアをアイデアの着想や共創のパートナーを得る場、実証実験の場など、様々に“使い倒し”てほしいと思っています。多くの企業が集まる丸の内の成長は東京の成長と深く結びついていますし、さらに「課題解決と成長のモデルケース」となれれば、好循環を地方に拡張していくこともできるでしょう。丸の内からのオープンイノベーションは、日本経済全体を底上げするエンジンになると信じています。

中央の赤いオブジェは、
未来に向けて丸の内が発する「問い(Q)」の象徴

TMIP Innovation Award 2025 事業エントリー大募集 TMIP Innovation Award 2025 事業エントリー大募集

事業成長の起点となる、共創型アワード

大企業における新規事業・イノベーション創出が成果を上げるには「社内外の壁を越える」ことが不可欠と考え、その優れた事例を表彰する「TMIP Innovation Award」。本アワードでは、市場性や革新性、社会インパクトに加え事業創出マネジメントの仕組みや工夫にも着目し、大企業においてチャレンジしている方へのヒントを提示します。アワード受賞事業には発信機会のご提供や事業成長に必要なプレイヤー、技術の探索から共創まで、事業に伴走し支援いたします。ぜひエントリーして、自社のイノベーション促進にご活用ください。

応募資格

大企業において、過去5年間(2020~2024)
立ち上がった自社の事業
または新規事業として設立した
新会社の事業

表彰対象

社内外の壁を越えて新たな価値·事業創出に
取り組んでいる優れた事例

スケジュール
■TMIP最優秀賞(1事業)
TMIP事務局による事業伴走支援【6カ月】
■TMIP優秀賞(2事業)
TMIP事務局による事業伴走支援【3カ月】
■日経ビジネス賞(1事業)
日経ビジネスで事業概要を紹介(記事体広告)
■オーディエンス賞(1事業)
三菱地所イノベーション施設運営部所管施設利用権
審査員
守屋 実
新規事業家
藤本 あゆみ
一般社団法人スタートアップ
エコシステム 協会 代表理事、
A.T.カーニー株式会社
アソシエイテッドスペシャリスト
アドバイザー
松井 健
日経BP
日経ビジネス発行人
過去受賞企業(2023-2024)※50音順

本気の大企業とともに挑戦する
新規事業創発プラットフォーム

Tokyo Marunouchi Innovation Platform、通称TMIP(ティーミップ)は、一般社団法人TMIPが運営する組織で、丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)のイノベーション・エコシステム形成に向けて、大企業とスタートアップ、産・官・学・街との連携で事業創出を目指すオープンイノベーションプラットフォームです。会員、パートナーを含めると330団体を超える組織になります。

お問い合わせ先:TMIP Innovation Award事務局 
award@tmip.jp