Special Talk マイクロソフトとSAPのAIサービスが統合!
津坂 美樹氏/鈴木 洋史氏

AIの無限の価値をビジネス現場に届ける「情報系+基幹系」で見えてくる新たな世界

約30年にわたり、強固なパートナーシップを築いてきた日本マイクロソフトとSAPジャパン。
その関係性が今、「生成AI」をキーワードとして新たなフェーズに突入しようとしている。
2024年6月にグローバルで発表された、「Microsoft Copilot for Microsoft 365」と
SAPの生成AIアシスタント「Joule」の統合。
その背景や実現したい価値について両社の経営トップに聞いた。

日本マイクロソフト株式会社 代表取締役社長 津坂 美樹氏
SAPジャパン株式会社 代表取締役社長 鈴木 洋史氏

生成AIの領域では、日本企業は決して遅れていない

米マイクロソフトは2025年に創立50周年を迎えます。その半分以上の約30年にわたり、日本マイクロソフトと SAPジャパンはパートナーシップを構築してきたわけですが、互いにどのようなパートナーと位置付けていますか。

鈴木パートナーであると同時に、互いにユーザーでありサプライヤーでもあるという、360度の戦略的な関係性を構築してきた間柄であることは間違いありません。当社はMicrosoft 365の世界最大規模のユーザーの1社ですし、日本マイクロソフトは、「RISE with SAP」の初期ユーザーの1社です。また、当社の基幹系システムをMicrosoft Azure上でご利用いただいているお客様も多くいます。このように、この関係がなければSAPのビジネスは成り立たないともいえるほど、重要なパートナーの1社だと私は考えています。

津坂まさに私も同じ思いです。両社に共通するのは、「カスタマーゼロ」となって自社プロダクトを使い、完成度を高めてパートナーと一体になってお客様に届けるという姿勢だと思います。その過程でつくり上げたエコシステムが、生成AIをはじめとする先進ソリューションの価値を、一層増大させています。

その生成AIについて、多くの日本企業が活用に取り組んでいます。現状をどう見ていますか。

津坂テクノロジーの活用について、日本はとかく「遅れている」と言われてきました。ただ、生成AIに関しては決して後れを取っていないと感じます。

鈴木同感です。高度な使いこなしはこれからだとしても、少子高齢化による人材不足、生産性向上といった喫緊の課題の解決に向けて「生成AI活用がチャンスになる」と感じている経営者は多いと思います。

“AI筋トレ”を継続する中で、スキルが身に付いてくる

生成AIのビジネス実装には、経営層のコミットがカギになるといわれます。お二人の日頃の使い方を基に、経営層に向けた活用のアドバイスをお願いします。

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津坂私は“AI筋トレ”と呼んでいますが、スポーツジムに通うのと同じで、変化を実感するには継続が必要です。使い続けることで、最初は数時間かかった作業が数分、数秒でできるようになります。ビフォー/アフターの効果が明確に出るのは生成AIの特徴ですが、劇的な変化を身をもって体験するためにも、「まず使ってみる」ことを経営者の方には強くお勧めしたいですね。

鈴木SAPは昨年、世界規模でMicrosoft Copilotを導入し、私自身も率先して使っています。まさに“AI筋トレ”の真っ最中ですが、議事録を取るのも資料を翻訳するのも圧倒的に楽で、速いです。

津坂私の場合は、1年前と現在で使い方が変わりました。以前は効率化が中心でしたが、今はアウトプットの質を重要視しています。

例えば、商社に関するリサーチをした際、「あの投資家はなぜ日本の商社に投資しているのか」とCopilotに質問することで、興味深い回答を得ることができました。このように、質問を工夫して壁打ちすると、あたかも経験豊富なアナリストに相談したようなインサイトが得られます。継続して使う中で、そのようなスキルアップを図ることができるはずです。

情報系データと基幹系データを生成AIで横断的に扱える

2024年6月に発表された、「Microsoft Copilot for Microsoft 365」とSAPの生成AIアシスタント「Joule」の統合は、そのような生成AI活用にチャレンジする企業や経営層を強力に後押しする動きといえます。狙いや目指すことを改めて教えてください。

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鈴木この統合によって、ユーザーはマイクロソフトとSAP両社のアプリケーションやデータを、生成AI経由で横断的に利用できるようになります。

SAPはERPの世界シェアの多くを占めており、事業活動の生命線といえる基幹系データを多数保有しています。マイクロソフトはユーザーのコミュニケーションに関わる膨大な情報系データを持っています。それらを統合的に扱うことができれば、生産性の向上、意思決定の迅速化、セキュリティー強化など様々なメリットを享受できます。

津坂「人がデータを探す」時代から「AIがデータを見つけて人に提供する」時代への転換点になると私は考えています。これまで事業部門やIT部門に依頼しなければ入手できなかった経営指標を、Copilotに話しかけるだけで入手できるようになれば、圧倒的なスピードメリットが生まれます。コスト削減やROI向上の効果も大きいはずです。

2経営層の仕事における想定ユースケースがあれば教えてください。

鈴木例えば人材採用では、求める人材の職務経歴書を「Joule」がMicrosoft Wordで作成し、適合する応募者の選定、面接の順番までを考えて提案してくれます。また、経営者が社内外にメッセージを発信する際も、目的やテーマに沿った下書きをかなりの精度で書いてくれます。いずれも、SAPの基幹系データを扱えるからこそ実現できるものだと思います。

津坂鈴木さんが紹介したような作業は、経営者が直接行うことはなくても、担当する社員がこれまで多くの時間と労力をかけて行ってきた作業です。これを生成AIに任せられれば、組織全体の業務負荷を減らし、コア業務に専念するためのリソースを増やすことができます。

当社では、私が自らCopilotとの対話で情報を得られるようになったので、それまで週次の提出をルール化してきた業績目標管理書類を月1回の提出にしました。「Microsoft Copilot for Microsoft 365」と「Joule」の統合後は、このようなメリットをより多くの企業が得られるようになるはずです。

今こそクラウドでFit to Standardを加速してほしい

一方、オンプレミスでSAPシステムを使っている日本企業もまだ多くあります。今回の統合の恩恵を受けるにはクラウド化が必須ですが、クラウドの価値はどう訴求していきますか。

鈴木大きなメリットはFit to Standard(標準化)を加速できることです。特に、差別化の必要性が少ない基幹系業務には、標準的な仕組みを使うことで組織の生産性や変化への対応力を向上できます。この考え方をSAPは「クリーンコア」と呼び、お客様に提案していますが、これはクラウドだからこそ実現できる世界といえるでしょう。

津坂「『データ』はあるが使える『情報』になっていない」というお客様の声をよく聞きます。Fit to Standardを進めることで、データがきれいな状態に整います。そうすれば、欲しい情報をより容易に得られるようになり、生成AI活用も加速できます。今こそクラウド化、標準化にかじを切っていただきたいですね。

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最後に、今後の展望をお聞かせください。

鈴木数年以内には、AIエージェント同士の連携によって多くの業務を完結できる世界がやってくるでしょう。しかし、新しい事業を起こしたり、アイデアをゼロから生み出したりすることは、引き続き人間にしかできない作業です。

効率化・標準化する領域とそれ以外の領域の切り分けを進めるとともに、人が人らしさを発揮できるような環境を実現する。そのために、マイクロソフトは欠かせないパートナーであり、今後も一層の連携強化を進めることで、新たな価値を共に生み出していければと思います。

津坂ボストン コンサルティング グループにいた頃、同社が提唱する「10-20-70の鉄則」をお客様にご提案していました。DXにおいて大事なのは「アルゴリズムが10%、システムが20%、人やプロセスが70%」というものです。

我々のようなテクノロジーパートナーがどれだけ便利なツールを提供しても、その効果はせいぜい30%止まり。一方、経営者やリーダー層が生成AIを理解し、使いこなせば、その影響は全体の70%に及ぶということです。生成AIによるテクノロジー革命をチャンスと捉え、ぜひ積極的に利用していただきたい。そのようなお客様の取り組みを支援するため、これからもSAPとのパートナーシップを強化していく予定です。


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