シンポジウムマイクロソフトがAIエージェントで描く新次元の金融
生成AIの最新動向は? 年間4億ドルのコスト削減
日本マイクロソフト
代表取締役社長
津坂 美樹氏
シンポジウムの冒頭に登壇した日本マイクロソフト 代表取締役社長の津坂美樹氏は今年50周年を迎えるマイクロソフトの歴史をまず振り返った。当初のミッションは「世界中のすべてのデスクにパソコンを置く」ことだったが、テクノロジーの進化と共に「クラウド、そしてAIビジネスへの展開へと拡大してきました」(津坂氏)。
日本マイクロソフト
代表取締役社長
津坂 美樹氏
2年前に始まった生成AIブームによりChatGPTのユーザーが3カ月で1億人に達したことを紹介。「携帯電話で16年、インターネットで7年、SNSは5年かかったのに比べて、生成AIは驚異的な速さで広がっていきました」と述べる。
IDCの調査では、企業は生成AIに1ドル投資するごとに3.7ドルのリターンを得ている。さらに、2023年には55%だった生成AIの使用率が、2024年には75%へ増加したことを紹介し、「この数字は引き続きどんどん増えていきます」と加えた。
そしてAI導入に必要なアプローチについてBCGのレポートを踏まえ、「人とプロセスが70%を占め、技術やデータは20%、アルゴリズムは10%に過ぎません」と語る。「さまざまな企業の皆様と話して感じたことは、本当の意味で生成AIの効果を得るには、トップはもちろん組織の全員がしっかりとAIを使いこなし、今までと違った働き方をする必要があります」(津坂氏)。
ここで津坂氏は、マイクロソフト コーポレーションの最高経営責任者(CEO)のサティア ナデラ氏が2023年1月に発表した、「マイクロソフトのあらゆる製品にAIを搭載していく」という宣言に触れる。例えばマイクロソフト内でも、コーディングチームが GitHub Copilot を使ってタスクの終了時間を55%早め、「さらにはAIを使うことで、チームメンバーがより仕事に満足感を感じるようになりました」と説明を加えた。
他にもKPIの社内事例として、カスタマサービス部門ではAIが基本的な回答に応じ、難しい回答が必要な場合は人が答えるようにすることで12%速く案件を解決し、年間で4億ドルのコストを削減できたと紹介。他にも人事やファイナンス、営業などさまざまな部門で、Copilot の導入によって業務効率が上がっているという。
津坂氏によると「各国のマイクロソフトの中で日本の社員の Copilot 使用率はトップクラス」であるという。「私自身ミーティング前には必ず資料を分析させていますが、社長が使っているなら自分たちも、と従業員に思ってもらうことも重要。英語のドキュメントを日本語化したり、日本語を多言語化したりすることで言語の壁がなくなりプロダクトのレベルが上がってきました」と成果を語った。
マイクロソフトにおける Copilot の導入効果
現在マイクロソフトのクラウドプラットフォーム Azure では、LLMやSLMなど1800(※注)を超える幅広い言語モデルが使われているという。またワールドワイドで60の Azure リージョンと、300のデータセンターを24時間稼働させているが、「2030年までにエネルギー効率のネットゼロを実現することを念頭に、データセンターをオペレーションしています」と環境への取り組みもアピールした。
さらに津坂氏は、生成AIのキートレンドについて「個人の生産性アップからビジネスプロセスへ展開され、顧客へのプロダクト提供につながってきました。そこからAIエージェントが提供されるようになり、今はマルチモーダル化の段階にありますが、Copilot がAIにつながるUIであると理解していただきたい」と述べる。
その事例として、津坂氏はトヨタ自動車とマイクロソフトが構築したマルチエージェントAI「O-Beya」に触れ、「車体やエンジンなど、分野ごとのエンジニアの知見がAIエージェントで継承できるようになりました」と紹介した。
マイクロソフトはセキュリティーの確保を至上命題に掲げている。「Secure Future Initiative」を立ち上げ、3万4000人のエンジニアが「設計としての安全性」「既定設定での安全性」「安全な運用」に係わっていると津坂氏は最後に付け加えた。
※注 2025年3月現在
マイクロソフトが考える生成AIのキートレンド
日本の金融機関の動向は? 飛躍的な思考力の進化を受けて
日本マイクロソフト
執行役員 常務 金融サービス事業本部長
荒濤 大介氏
続いて登壇した日本マイクロソフト 執行役員 常務 金融サービス事業本部長の荒濤大介氏は「ChatGPTが登場した2022年から2年間で、日本の金融機関での生成AI活用が非連続の成長を遂げています」と紹介する。同時に、この2年余りでLLMがどのように進化を遂げてきたかを、「出力品質の向上」「マルチモーダル化」「思考力の深化」という3つの例を示して説明した。
日本マイクロソフト
執行役員 常務 金融サービス事業本部長
荒濤 大介氏
特にここ1年で思考力が飛躍的に進み、「こうしたLLMの進化を背景に、AIエージェントが世の中の仕事を変えていく時代に突入すると思っています」と述べた。
2年間のLLMの進化
そのポイントは、さまざまなエージェントを組み合わせた「マルチエージェント」だと荒濤氏は語る。例えば、あるエージェントを使って作ったレポートを、別のエージェントにレビューさせることで精度を向上。また部門ごとに専門のエージェントを作って組織化し、最終的に人間が統合的に管理するような階層構造も描けるという。
AIオペレーターサービスで、リピート率7割以上に
大和証券グループ本社 執行役員
大和証券 常務取締役
板屋 篤氏
ここで、壇上には大和証券グループ本社 執行役員 大和証券 常務取締役の板屋篤氏が迎えられる。大和証券で2024年10月から導入されている、人のオペレーターを介さずに顧客からの問い合わせに直接AIが回答するAIオペレーターサービスが披露された。
大和証券グループ本社 執行役員
大和証券 常務取締役
板屋 篤氏
板屋氏はサービス導入の経緯を語る。「NISAをはじめ日本全体で貯蓄から資産形成へとシフトしていく中、コンタクトセンターへの問い合わせは大きく増えています。育成や採用などの観点から、全て人だけで対応するのが現実的ではなくなってきました」。
AIオペレーターサービス導入以来、半年弱ですでに1万件以上の問い合わせが入ってきており、利用者のリピート率も7割以上となり「一定の評価を受けていると感じています」と板屋氏は述べる。今後は「できるだけ早く24時間365日体制にして、いつでもすぐにつながる状態を目指しています。加えて、お問い合わせの対象範囲を広げて、お客様に利便性をより感じてもらえるようにしたい」という。
最後に荒濤氏は、マイクロソフトが提供するエージェントと作成基盤を紹介する。例えば Copilot を入り口に、サードパーティが提供しているエージェントを利用したり、自社開発のエージェントを Copilot のようなプラットフォーム上で展開することも今後は可能と考えているという。
また、マイクロソフトではそうしたエージェントをノーコードで簡単に、また本格的に構築できるツールも用意する。「より多くの方々に、エージェントワールドを切り開いていただきたいと思っています」と展望を語った。


