小売現場を変える
新発想のストアロボット
― マルチユース型ストアロボットを開発するMUSE。その特徴は。
当社の主力製品は、店舗内を自律走行するストアロボット「Armo(アルモ)」と、ロボットが撮影した画像データをクラウド上で可視化する「Eureka Platform(ユーリカプラットフォーム)」です。
Armoの最大の特徴は「マルチユース」という設計思想にあります。ユニットと呼ばれる拡張モジュールを交換することで、品出し時の搬送や棚割り確認、販促や防犯といった多様な業務に対応できます。これにより、一日を通して稼働し続けるロボットを実現し、費用対効果を最大化しています。
従来は従業員が時間単位でさまざまな業務を担ってきました。午前は品出し用の搬送、午後は棚割り確認、夜間は防犯パトロールといった業務を、用途に合わせたユニットの切り替えにより1種類のロボットで担うことを実現しました。ロボットの休む時間をなくすことで、導入コストを抑えながらROIを高められる点が高く評価されています。
従来のロボットは「機能に特化する」傾向がありましたが、当社は「環境に特化する」という逆転の発想で製品を設計しています。多様なオペレーションが混在する店舗環境に合わせ、必要な機能を後から付け替えられる柔軟性が差別化の鍵です。
店舗オペレーションに革命を
店舗内を自律走行するストアロボット「Armo(アルモ)」
ストアロボットArmoは単なるロボットではない。最先端のAIテクノロジーと
お店の魅力をシームレスに融合し、記憶に残る買い物体験を演出する。
効率性を高め、高度なオペレーションを実現
品出し、在庫管理、顧客対応などを効率的に行い、店舗スタッフをより複雑で
付加価値の高い作業に集中させ、生産性向上に貢献
タイムリーな補充で、常に棚に在庫を確保
在庫管理・補充をリアルタイムで実現し、顧客満足度を向上
シンプルに導入でき、設置作業も簡単
直感的な操作と分かりやすさで、日常業務を中断することなく自動化へ
シームレスな移行を実現
―なぜロボット開発での起業を考えたのか。また、東京都も出資するファンドから支援を受けた経緯とは。
学生時代、愛知万博(愛・地球博)で最先端のロボットに触れたことが、ロボット分野を志す原点でした。「いつかロボットで起業したい」と考えるようになりましたが、まずはビジネスの基盤を身につけようと公認会計士資格を取得し、監査法人でキャリアをスタートしました。その後、ゴールドマンサックスへと進み、事業を見る眼と財務の専門性を磨きました。
インキュベイトファンド株式会社※1の代表パートナー・和田圭祐氏とは、個人的なつながりもあり、早くから相談できる関係でした。和田氏が主宰する、起業を志す人が集まる勉強会コミュニティー「Fellow Program(現Blue Field Program)」に参加してロボットビジネスの構想を議論する中で、実務経験の不足を痛感。和田氏の助言もあり、自動運転技術を扱うスタートアップへ転職し、倉庫・工場向けロボットの開発・導入に携わりました。
その現場で意外にも多かったのが、小売企業からの「店舗にも使えないか」という相談でした。店舗特有の環境差や運用の違い、費用対効果に対する考え方などが障壁となり導入には至らなかったものの、課題の大きさを実感したことが、起業への決意を後押ししました。こうして2022年にMUSEを設立。シード段階からインキュベイトファンド社が運営するベンチャーファンド(インキュベイトファンド5号投資事業有限責任組合※2)による出資を受け、2024年には2度目の出資も実現。単なる資金提供にとどまらず、創業期から経営の伴走者としてご支援いただいています。
※1創業初期の投資・育成に特化した独立系VC。コンセプトの段階から起業家とキャピタリストが一体となって事業を立ち上げて行く独自の支援スタイルを特徴とする。
※2東京都、民間事業者等が出資し、インキュベイトファンド株式会社が運営する、IT技術を活用したイノベーション創出に向け、リスクが高く資金調達が難しいスタートアップへの投資を目的としたファンド。
ファンドスキーム図

経営全体を支える
ファンドの支援で成長を加速
―事業を進める上で直面した課題。また、経営面でファンドから受けた支援とは。
店舗という環境では、常に人が動き、什器や商品の配置も日々変化します。安全性と効率性を両立しながら自律走行を行うことが最大の課題でした。安全を優先すれば動きは遅くなり、効率を重視すればリスクが増す。このトレードオフを克服するため、現場での検証を重ねています。エンジニアを含めたチーム全員が頻繁に店舗へ赴き、ロボットを走らせ、スタッフや来店客の反応を観察して改善を続ける。この「現場主義」の開発体制こそが、当社の技術を進化させる原動力です。
一方で、経営面ではファンドの支援が大きな後押しとなりました。隔週で経営課題を議論し、戦略の方向性を率直に意見交換しています。足元の課題に集中しすぎる時は中長期の視点を促し、将来構想に偏ると現場へと引き戻してくれる。その「目線の調整」が意思決定を支えています。和田氏は、私にとってまさにメンターのような存在です。創業以前から親身に相談に乗ってくださり、どんな局面でも一貫したアドバイスをいただいています。経営者として迷いが生じた時も、短期的な成果ではなく「今、本当にやるべきことは何か」を冷静に問い直してくれます。
ファンドからは、経営支援に加え、採用面や資金調達面でも助言を受けています。スタートアップにおいて人材獲得は最重要課題の一つですが、ファンドのネットワークを通じてエンジニアや事業開発人材との接点を得ることができました。また補助金やイベント活用の情報提供など、実務支援の幅も広く、経営基盤の安定化に寄与しています。
経営者と株主は時に利害が対立しますが、インキュベイトファンド社をはじめ当社の株主は常に中立的な意見をくれます。短期的な利益よりも、製品を磨き、現場で確かな価値を示すことを重視しており、共通の目線で議論できる点が大きな強みです。
日本発ロボティクスが
描くグローバル戦略
―スタートアップを成長させる上で重要なことは何か。
大きく二つあります。一つは、プロダクトに集中すること。注目を浴びると外向きの活動に意識が向きがちですが、最も重要なのはお客様の課題を本質的に解決できるかどうか。その一点にリソースを注ぐべきです。プロダクトが磨かれれば、結果として売上も広がり、チャンスも自ずと生まれます。
もう一つは、自社のフェーズを正確に認識すること。今は製品開発の段階なのか、営業拡大の段階なのか。これを誤るとリソースも意識も分散します。フェーズごとに優先課題を明確にし、チーム全体に共有することが経営者の責務だと考えています。
―今後の事業展望は。また、東京都のファンド事業へ寄せる期待とは。
今後はマルチユースの概念をさらに拡張し、ユニットの多機能化を進めます。現在6種類のユニットを展開していますが、狭小店舗でも活用できるよう設計を進化させています。例えば、KDDIとはローソン店舗で店内撮影や販促支援など複数業務の実証実験を行い、コンビニのような小型フォーマットにおけるマルチユースの価値を検証しています。今後は、店舗規模や業態ごとに最適な運用モデルを構築し、あらゆる店舗で使えるロボットの開発を進めます。
海外展開も加速させています。アメリカ・テキサス州に現地法人を設立、米国小売企業とのPoCに向けて複数の商談が進行中です。米国最大級の小売展示会「Groceryshop 2025」ピッチコンテストで優勝するなど、日本市場で磨いた技術がグローバルでも評価され始めています。小売現場の課題は国を問わず共通しており、ユニット交換による柔軟な運用は海外の小売企業でも十分通用すると考えています。
我々のようなスタートアップが海外展開を進める上で、資金やネットワークの支援は不可欠です。東京都や政府がベンチャーキャピタルと連携し、スタートアップが安心して海外市場に挑戦できるスキームが整えば、国内発のロボティクス企業が世界で戦う機会は大きく広がります。資金・人材・知見が循環し、挑戦が挑戦を生むエコシステムの構築に期待しています。
店舗に最適化されたスタッフと協働するロボット
店舗のさまざまな業務にマルチユースで対応し、営業時間中ずっとスタッフのパートナーとして働き続ける
拡張ユニットを活用し、マルチユースで費用対効果を拡大
特長1
商品の搬送
Armoは品出し作業やEC向けのピッキング業務の際にバックヤードと商品棚の間の搬送を自動化し店舗のオペレーションを効率化し、スタッフの生産性を高める。
特長2
商品棚のスキャン
Armoは商品棚などの売場状況をスキャンし、撮影された画像はEureka Platform上に蓄積される。これにより、店舗に行かずとも売場の状況を正確に把握。さらに、欠品や棚割りとの乖離、売価チェックなどの解析結果とともに提供される。
特長3
買い物客の案内
Armoは商品を探している買い物客に対し、場所の案内が可能。さらに必要に応じてその場所まで誘導することで、買い物体験の向上に貢献する。
以下の事業を通じて支援を行っています
中小企業支援「DXスタートアップ成長支援ファンド」
将来のネクストユニコーンとなり得るスタートアップを創業から支援し、医療、教育、金融など、DX活用が進んでいない分野でのイノベーションの流れを後押ししていく制度。
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