ニュートン・コンサルティング株式会社

危機に強い組織をつくるには?「オールハザードBCP」への再構築と定着化を促進する訓練の実施方法 - 日経ビジネス電子版 Special

計画の文書化やルールづくりで終わらせず、有事における実効性をいかにして持たせるか。これがBCPの肝であり、難しい点である。そんな中、リスクマネジメント専門のコンサルティングファーム、ニュートン・コンサルティングが提案するのがオールハザード型BCPへの転換だ。いま日本企業に求められるBCPの形について、同社のキーパーソンに話を聞いた。

多様なリスクが同時に起こる時代
リスク別のBCPでは不十分

ニュートン・コンサルティング株式会社
ERM/BCP事業部
BCPソリューションリーダー シニアコンサルタント
日下 茜

ニュートン・コンサルティング株式会社
dan-lo事業部
エグゼクティブ・コンサルタント
久野 陽一郎

―― 現在は自然災害、戦争やテロ、サイバー攻撃、感染症のパンデミックなど、多様なリスクが高まっています。日本の企業・組織の対応状況をどう見ていますか。

久野氏 BCP(事業継続計画)自体はあるものの、地震、火災など事象ごとに策定した計画が多く、多くの組織は多様化したリスクには十分備えられていない印象です。また近年は複数のリスクが同時に起こるケースも増えています。新型ウイルスの感染拡大中に水害が起きたり、地政学的要因でグローバルのサプライチェーンが分断されたりといった複合的な状況が起こると、事象ごとのBCPでは対応しきれません。

 さらに、個々のBCPを主導する組織が分かれており連携が不十分なこともあります。これでは、実際に災害が起こったときに動けるか未知数です。この状況を脱却するためにも、実効性のあるBCPを再構築することが不可欠です。

―― 再構築は、どのような点に目を付けて取り組むべきでしょうか。

日下氏 有事対応には大きく3つのフェーズが存在します。危機発生直後の「初動対応」、対策本部設置などの「危機対応」、そして「事業継続」です。

 先の2つは初期のアクションに当たるため、事象共通の枠組みを定めた上で、災害ごとのタイムラインやシナリオに沿って進めるのが有効な部分もあります。しかし、最後の事業継続の目的は「ヒト・モノ・カネ・情報という経営資源をどう配置・活用してビジネスを継続するか」であり、これは事象の種類によらずポイントがある程度決まっています。

久野氏 そこで重要なのが「オールハザード」の考え方です。これは地震、テロ、感染症などの事象に関係なく、事業継続フェーズにおける組織の基本方針を決めることです。具体的には、絶対に止められない事業や業務と、それを支えるシステム、外部サービスなどを洗い出したら、それを維持するためにどのような資産をどれだけ投下するかをあらかじめ見据えておくのです。

日下氏 事象ごとに別のシナリオを描くのではなく「何が起きても対応できるようにしておく」。これが、オールハザード型BCPの重要なポイントです。

実効性のあるBCPで重要なのは
継続的に訓練を実施すること

―― 組織のBCP再構築に向けて、ニュートン・コンサルティングが提供できる価値、強みを教えてください。

日下氏 私たちはリスクマネジメント専門のコンサルティング会社で、国内/グローバルを合わせて2100社以上の支援実績を持っています。この経験に基づき、お客様のビジネスに即したBCPの策定をご支援できます。

久野氏 進め方としては、まず社長へトップインタビューを行い、お客様の経営戦略や達成すべきミッション、BCPで目指す姿をヒアリングし、基本方針を決めます。このインタビューを通じて経営者の方の考えが整理、言語化されることが多く、お客様側にとってメリットのある取り組みだと位置付けています。

 その後、事業や業務プロセスの分析、優先順位付けを行って対策を整備したら、実際に訓練・シミュレーションを実施します。ここは当社が特に重要視している部分です。作成した文書の内容が無理なく実現できるのか、課題はどこかなどを明らかにして改善する。PDCAサイクルを最低3周回すことで、実効性のあるBCPを策定していきます。

―― 単に文書をつくるだけではなく、組織への浸透も支援するのですね。

日下氏 その通りです。そのために、PDCAサイクルを3周回したあとも、スポットでお客様の取り組みを継続的にお手伝いするケースは多くあります。

 繰り返し訓練を行うことでBCPの内容を社員一人ひとりに定着させることができます。お客様のBCP担当部署とも協働しながら、組織全員を巻き込んで進めるのが当社の特徴だと思います。

AIを活用した新サービスで
BCP訓練の自走化を支援する

―― 訓練は、最終的には企業が自ら行えるように支援するのですか。

久野氏 そうです。実施のタイミングや内容などを柔軟に決めるためにも、それをゴールにしています。実施の頻度は、理想的には週次や月次での実施ですが、これはなかなか難しく、訓練を企画するBCP担当部署と訓練参加者の双方にとって負荷が高いです。そこで当社は、お客様のBCP訓練を支援するクラウドサービスとして「dan-lo」を提供開始予定です。

―― サービスの内容を教えてください。

久野氏 お客様が自ら訓練を行う上で最も高いハードルになるのが、シナリオの作成です。dan-loを使えば、コンサルタントが用意したシナリオテンプレート活用やAIによるシナリオ作成ができるようになります。

 公的機関が作成した首都直下型地震、南海トラフ地震の被災想定などのデータを学習したAIが、お客様のBCP文書を読み込んで、そのルールに則ったシナリオを提案します。検討事項も提示してくれるので、ファシリテーターなしで訓練を行うこともできるようになります。ただし、AIは全知全能ではないため、AIが生成したシナリオをお客様が確認し、編集する機能を開発中です。

AIによるシナリオ作成機能などにより、手間なくBCP訓練を実践できるようにする。
BCPをより身近なものにすることが可能になる

日下氏 工場や店舗などで複数人が集まって討議する集合訓練のほか、スマートフォンで利用できる個人訓練もリリース予定です。社員がスキマ時間でも訓練を実施できるため、組織の危機対応力の底上げが可能です。日常的に使うスマートフォンを通じて、BCPを身近に感じてもらうことができれば、有事の際の行動が大きく変わるはずです。

―― dan-loには過去の顧客支援実績も生かされているのでしょうか。

久野氏 実際のお客様のデータは学習させていません。当社のコンサルタントの知見として抽象化したものを、AIのベースに生かしています。

―― リスクが多様化する時代、BCPのプロの力を借りることは、多くの企業にとって不可欠になっています。最後に読者に向けたメッセージをお願いします。

日下氏 「『あの時もっとこうしておけば良かった』を世界から失くしたい」。これがニュートン・コンサルティングのビジョンです。リスク対応で後手に回り、後悔することのないよう、まずは自社のBCPの現状を確認することをお勧めします。

久野氏 その上で、もし不安な点があれば当社を積極的に活用していただきたいですね。BCPは終わりのない永続的な取り組みです。時流に即した実効性のある計画を実現し続けるためにも、BCP再構築を真剣に考えていただきたいと思います。