新しいパートナーと築く未来
日本調剤は新たなステージへ
日本調剤
代表取締役社長 社長執行役員
小城 和紀 氏
PROFILE
メガバンクにて大企業のファイナンスやMBO案件などに携わった後、2008年に日本調剤に入社。以降、財務部門を担当する。25年6月に代表取締役社長に就任。日本ジェネリック取締役、長生堂製薬取締役、メディカルリソース取締役も兼任している。
( 聞き手:日経ビジネス発行人 松井 健 )
開拓者精神で業界をリードしてきた45年
― 日本調剤が歩んできた45年の歴史と、培ってきた強み、また、2025年6月に代表取締役社長に就任されたことへの思いをお聞かせください。
日本調剤は、1980年の創業当時から「真の医薬分業」を理念に掲げており、以来、業界に先駆けて全国展開してきました。また、ジェネリック医薬品の製造に関しても、いち早く20年前より乗り出しており、患者さまの経済的負担を軽減しつつ、質の高い医療の実現を社会的使命としてまいりました。時代の先を捉える開拓者精神こそが日本調剤のDNAであり、今日まで業界を牽引してきたことには自負があります。
日本調剤グループは、全国に763店舗(25年11月1日現在)を数える調剤薬局事業を中心に、ジェネリック医薬品の製造販売、医療従事者の紹介・派遣、医療機関向けのコンサルティングなど、多角的に事業を展開しています。こうした揺るぎない基盤と組織力を強みに、さらなる変革を成し遂げていくことが、社長としての使命であると感じています。

新たなパートナーと取り組む成長戦略
― 日本調剤が株式の非公開化を決断した背景や理由についてお聞かせください。
一部報道では業績の低迷が理由であるとされていますが、実際は異なります。事実、足元の業績は回復しており、今年度は当初の見込みよりも上回って推移しています。
今回、アドバンテッジパートナーズとLYFE Capitalが設立したAP86によるTOBに賛同したのは、業界の変化に対応し、さらなる成長ステージに移行するためです。
調剤薬局業界は右肩上がりの成長期が終わり、ドラッグストアや異業種が調剤部門に進出するなど、競争が激化しています。各社が、新しい成長モデルを生み出していかなければならない。そこで当社グループは、私たちのDNAを引き継ぎながら、新たなパートナーが持つ幅広い知見や国内外のネットワークを連携させてさらなる成長の可能性を切り開くことにしました。
― 具体的にはどのような方針で事業を展開していくのでしょうか。
長期ビジョン2035において「誰もが一番に相談したくなるヘルスケアグループへ」をグループの目指す姿として掲げました。そこからバックキャストしたロードマップを策定し、現在とのギャップを埋める戦略を実行することで企業価値向上を目指します。
店舗数を拡大するという選択肢もありますが、私たちはまず、患者さまの目線を重視し、社会で求められている薬局像を実現することが必要と考えています。日本調剤の強みである薬剤師の専門性を高めると同時に、地域の在宅医療に貢献するなど、これからは指定された薬を正確に渡すだけでなく、プラスアルファの価値を提供していく必要があります。そして、地域で最初の相談窓口になることが、グループ理念において掲げる「すべての人の『生きる』に向き合う」という使命を示す姿であると考えるからです。

薬剤師の専門性の高さは日本調剤の強み。マイナンバーカードを活用した受診勧奨によってがんの早期発見に貢献した従業員を社内表彰した。
実現のカギとなるのが全国の薬局で働く薬剤師の役割を充実させることです。まず業務効率化の一環として、AI薬歴作成支援サービス「corte」を全店舗に導入しました。薬剤師が薬歴作成にかける時間を削減し、よりきめ細かな服薬指導が実現するなど、対人業務の充実化と医療の質向上につながることが確認できています。
また医薬品製造販売事業では、国内市場での安定供給が大きな前提とはなりますが、今回のパートナーは海外にネットワークを持っているので、将来的には海外連携の可能性もあると考えています。
患者さまに選ばれる調剤薬局を目指して
― 新たな一歩を踏み出した今、手応えは感じられていますか。
手応えはすでに感じています。また、パートナーとはさらなる取り組み、戦略についてアイデアを検討し始めていますので、今後の展開にもぜひご期待いただきたいと思っています。
業界再編が進むなか、外部の目線を取り入れ、どう差別化を図っていくか。どうしたら患者さまに日本調剤を選んでいただけるか。それを考えていくためには、現場の声に耳を傾けて、意見を吸い上げていくことが重要だと考えます。店舗と本部がタッグを組んで、新しいビジネスモデルを見いだし、変革していく。そこにチャレンジしていきたいと考えています。
聞き手:日経ビジネス発行人
松井 健
1994年筑波大学卒業後、日本経済新聞社に入社。日経産業新聞編集長などを経て、24年より日経ビジネスなど経営誌の発行人を担う経営メディアユニット長。
記事中の肩書きやデータは公開時点の情報です

