持続可能かつ革新的な未来の構築に向けて【ブルーエコノミーを先導するポルトガル】

大阪・関西万博で「海」をテーマにしたパビリオンを展開したポルトガルは、ブルーエコノミーの取り組みを積極的に推進している。本稿では、同国におけるブルーエコノミー施策と日本企業との協業の可能性について同国首相であるルイス・モンテネグロ氏に話を伺った。
ポルトガル共和国首相「ルイス・モンテネグロ」氏

Espinho市の市議会議員および自治体組織(Municipal Assembly)の議長を務めた後、2002年に国民議会議員に初当選。以後4期連続当選を経て、2022年に社会民主党党首となり、2024年にポルトガル共和国首相に就任。2025年の総選挙でも勝利し、再び首相となる。写真は大阪・関西万博でのスピーチの様子。

ポルトガル共和国首相「ルイス・モンテネグロ」氏

Espinho市の市議会議員および自治体組織(Municipal Assembly)の議長を務めた後、2002年に国民議会議員に初当選。以後4期連続当選を経て、2022年に社会民主党党首となり、2024年にポルトガル共和国首相に就任。2025年の総選挙でも勝利し、再び首相となる。写真は大阪・関西万博でのスピーチの様子。

ポルトガル共和国首相「ルイス・モンテネグロ」氏

補完関係により深化を続ける日台連携補完関係により深化を続ける日台連携

ポルトガルのブルーエコノミー施策とは、どのようなものでしょうか?
 地球の約70%は海であり、ポルトガルはEUの海洋水域の48%を管轄、170万平方キロメートルに及ぶ世界有数の排他的経済水域を有しています。私たちのブルーエコノミー戦略では、持続可能性・革新性・レジリエンスに重点を置いており、国内外の研究機関や企業による先端的な海洋プロジェクトに対する支援制度を確立し、投資を呼び込むための環境を整えてきました。
 ブルーエコノミー成長の原動力となっているのは、豊かな天然資源、明確なビジョン、革新的研究開発に対する的確な受け入れ態勢、そして産学一体による挑戦的な取り組みの存在です。そしてもちろん、海洋国家としてのDNAも、この戦略を力強く支えています。

ブルーエコノミー領域における、これまでの成果をお教えください。
 養殖業から海洋バイオテクノロジー、洋上再生可能エネルギーまで、多様なプロジェクトで国内外からの投資を誘致してきたポルトガルは、「海洋イノベーション拠点」としての地位を確立しました。
 これらのプロジェクトには日本企業も参画しています。例えば丸紅や三井物産は、再生可能エネルギーやインフラ整備で積極的に投資を行っており、中でも三井物産とガルプ社によるプロジェクトでは、再生可能ディーゼルや持続可能航空燃料の生産を進め、欧州のエネルギー転換のけん引役としての存在感を示しています。

東京ガスが出資する浮体式洋上風力発電所「ウインドフロート・アトランティック」。
東京ガスが出資する浮体式洋上風力発電所「ウインドフロート・アトランティック」。

ブルーエコノミーが日本の産業界・学術界に与える影響は?
 日本は世界有数の海洋国家であり、ポルトガルは洋上風力発電や海洋モニタリング、持続可能な漁業、海洋バイオテクノロジーといった分野に強みを持っています。補完関係を築ける両国が新市場を開拓し、最先端の研究を共同推進することは、地球規模の課題解決に寄与できると考えています。
 既に洋上風力発電や海洋ロボティクス分野では両国の共同事業が始まっており、両国が国際的リーダーシップを発揮する基盤は整いつつあります。

どのような分野の日本企業に、プロジェクト参画を期待していますか?
 第1は、日本の技術力が生かされるロボティクス分野です。日本企業が持つ高度な技術は、海洋探査やモニタリングの分野で大きな成果を生むに違いありません。第2は、浮体式洋上風力発電や太陽光発電、水素関連技術などを含む再生可能エネルギー分野です。第3に注目している養殖業では、持続可能な養殖や新飼料の開発などでの共同事業に可能性を感じています。そのほかにも、航空宇宙・防衛、先端デジタルイノベーション、ライフサイエンスを含む医療分野など、幅広い領域で良好な協力関係が築けると期待しています。

環境負荷を低減し、生産量を増やすことに貢献するAQUASOJA社の養殖魚向け総合給餌ソリューション。
環境負荷を低減し、生産量を増やすことに貢献するAQUASOJA社の養殖魚向け総合給餌ソリューション。

大阪・関西万博でのブルーエコノミー領域の将来性大阪・関西万博でのブルーエコノミー領域の将来性

どのようなビジネス効果を期待して大阪・関西万博に出展されましたか?
 ポルトガル館のテーマは「海−青の対話」。これは、ポルトガルと海との歴史的な深いつながりを示し、持続可能な海洋資産の活用を目指す未来志向の意思を明示したテーマでした。
 万博は、海洋資源の重要性を伝えるとともに、ポルトガルの海洋研究や技術的イノベーションを発信することで、日本との歴史的な絆を再確認する場と位置付けました。そのためパビリオンでは、展示だけでなく、両国の企業の協業機会の拡大や投資誘致などの活動も精力的に行い、産業界・学術界に向けて「信頼できるパートナー、ポルトガル」の存在を示すことができたと思います。

万博での成果や反響についてお聞かせください。
  ビジネス交流を創出する場としての万博の有効性を実感しました。また、会期中に開催したイベントを通じ、ブルーエコノミーに関する知識と実践の拠点としての役割を果たせたと思います。
 中でもNOVA University Lisbonと東京外国語大学による協定締結は印象的でした。これは産官学連携を象徴するものであり、研究協力やビジネス交流の新しい道を切り拓いたと感じています。
 また、会期中235万人以上もの方々にご来場いただき、その多くの方々にポルトガルの食文化を体験していただけたことも、大きな成果の一つです。

大阪・関西万博のポルトガルパビリオンは、持続可能性と循環型経済というテーマに沿って、建築家 隈研吾氏が設計した。
大阪・関西万博のポルトガルパビリオンは、持続可能性と循環型経済というテーマに沿って、建築家 隈研吾氏が設計した。

今後、貴国のブルーエコノミーはどのように発展していくのでしょうか?
 EUにおけるブルーエコノミーの推進役としての地位をさらに強化することが主要な目標の一つです。そのために、今後も海洋研究開発の拡充、国内外企業・スタートアップ・投資家の誘致を積極的に行っていきます。また、日本企業を含む国際的なパートナーとの連携を深め、ポルトガルの専門性をアフリカや中南米市場に展開することも視野に入れています。万博では10件の覚書を締結しましたが、それらは全て将来の発展に向けた第一歩といえるでしょう。

日本の読者へ、メッセージを。
 ポルトガルと日本の約5世紀にわたる交流の歴史は、信頼の証しであり、国際社会で価値観を共有する力になっています。既に約1000社のポルトガル企業が日本への輸出を行い、120社以上の日本企業がポルトガルで活動しています。
 日本企業や起業家・研究者には、ポルトガルをヨーロッパ、アフリカ、中南米へのゲートウェイとしてご活用いただきたい。これまで築いてきた基盤をさらに発展させ、世界の課題解決に貢献する未来を共に切り開きましょう。

CorPower Ocean社が開発した波力発電システム。コンパクトかつ高効率なシステムは、エネルギーソリューションの新たな可能性として注目されている。
CorPower Ocean社が開発した波力発電システム。コンパクトかつ高効率なシステムは、エネルギーソリューションの新たな可能性として注目されている。

500年前、ポルトガルと日本を結んだ「海」が大陸と人々をつなぐ

駐日ポルトガル大使 
ジルベルト・ジェロニム氏
からのメッセージ

 日本とポルトガルは、遠く離れながらも古くから印象的な交流を重ねてきました。その足跡は、約500年を経た今もなお息づいています。
 大阪・関西万博は、この長い友好の歴史を祝う特別な舞台であり、両国の関係をいっそう深め、新たな未来を描く契機となりました。235万人を超える方々にご来場いただいたポルトガル館では、ポルトガルと日本の絆をあらためて感じるとともに、海が大陸と人々をつなぎ、私たちを一つの地球共同体として結ぶという、ポルトガル発の普遍的なメッセージに触れていただけたことでしょう。万博で深まった両国の絆が、未来の交流をさらに広げていくことを願っています。

駐日ポルトガル大使 ジルベルト・ジェロニム氏
AICEP ポルトガル投資貿易振興庁
公式ホームページ(英語/ポルトガル語)
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