コンプライアンスに抵触する企業倫理の欠如や不正・不祥事は、企業の経営危機につながる重大なリスクとなる。それだけに企業は厳正なコンプライアンス施策を打ち出しているが、思うような効果が出なかったり、管理側の“コンプラ疲れ”を引き起こしたりといった課題もある。ポジティブなコンプライアンス・カルチャーを醸成し、PwC Japan有限責任監査法人(以下、PwC Japan監査法人)の「コンプライアンス意識調査サービス」を活用することで、コンプライアンスへの意識を企業風土から変えようとしている株式会社アドバンテスト(以下、アドバンテスト)の取り組みを紹介する。

半導体検査装置の開発や販売を行う世界トップクラスのメーカーとして、グローバルにビジネスを展開するアドバンテスト。
「拠点が多国籍に渡っており、従業員の半数以上を外国人が占める中、以前から全社的なコンプライアンスの意識統一の必要性を感じていました」と語るのは、同社 法務知財コンプライアンス統括部長の東健介氏だ。
東 健介 氏
株式会社アドバンテスト
管理本部 法務知財コンプライアンス統括部
統括部長
「企業にとって社会やステークホルダーから信頼されることは、企業が持続していくための重要な要素です。こうした問題意識の下、当社では2020年にコンプライアンス部を立ち上げました」(東氏)
アドバンテストは2019年に企業理念や行動指針を「The Advantest Way」として策定し、コア・バリューとして真摯・誠実・高潔を意味する「INTEGRITY」を掲げている。コンプライアンス部を立ち上げたのも、このような流れの一つであろう。しかし、同社にはグローバルカンパニーとして成長を続けるからこその悩みもあった。
「事業拡大においては海外企業の買収は不可欠ですが、国ごとに企業文化やコンプライアンスに対する解釈の違いがあります。どうやってグローバルに同じ指標を設け、当社のフィロソフィーを行き渡らせるのかは、コンプライアンス部設立時からの大きな課題でした」(東氏)
さらにアドバンテストが目指していたのが、“コンプラ疲れ”、“コンプラ警察”といった言葉に代表されるネガティブなイメージの払拭だ。
「コンプライアンスを統括する部署として厳しく言わざるを得ない部分はあるのですが、これは事業を持続させるための前向きな取り組みであり、すべての社員と同じ方向を目指す仲間だというのがコンプライアンス部の立ち位置です。ですから、現場の事情を無視して取り締まったり一方的に押し付けたりする組織ではないというメッセージを伝えたいという思いはありました」(東氏)
アドバンテストが企業理念として策定した「The Advantest Way」は、経営理念とビジョンを支えるコア・バリューに、真摯、誠実、高潔を表す言葉である「INTEGRITY」を掲げる。さらに「GLOBAL」「RESPECT」「INCLUSION AND DIVERSITY」といった個別項目もあり、異なる文化や習慣を受け入れ、グローバルに展開する価値観を強調している
同社のコンプライアンス部で実務を担当する尾崎祐子氏も「私たち運営側も実際に遵守する社員側も、双方が負担になり過ぎないような効率的な仕組みにしていくことで、前向きにコンプライアンスへ向き合おうというカルチャーが醸成され、会社を良くすることにつながると考えています」と語る。管理する側だけでなく、現場の社員にも“自分事”としてポジティブにコンプライアンスに取り組んでもらいたいという姿勢がうかがえる。
尾崎 祐子 氏
株式会社アドバンテスト
管理本部 法務知財コンプライアンス統括部
コンプライアンス部

アドバンテストがグローバルなフィロソフィーの浸透やコンプライアンス・カルチャーの醸成を目指す中で実施を思い立ったのが、PwC Japan監査法人の「コンプライアンス意識調査サービス」だ。
「具体的な施策を講じるにしても、自社のコンプライアンスがどのような状態なのかを正確に知る必要があります。こうしたことを客観的に測る指標として、意識調査を実施しようと考えました」(東氏)
同社がコンプライアンスの状況を“見える化”する意識調査サービスを選定する上で重視したポイントは、“グローバル対応”だったという。
「調査の精度を担保するには母国語であることが必須だからです。当社は世界数十カ国に拠点があるので、日本語だけの調査では目的を達することができません。そこで、最低でも英語、中国語、韓国語に標準対応している調査サービスを検討したところ、PwC Japan監査法人が提供する『コンプライアンス意識調査サービス』に行き着きました」(東氏)
PwC Japan監査法人の「コンプライアンス意識調査サービス」の主な特徴は4つだ。同法人のガバナンス・リスク・コンプライアンス・アドバイザリー部でシニアマネージャーを務める吉岡美佳氏はこのように説明する。
「1つ目はAIやデジタルツールを活用した視覚的なデータ分析。2つ目は個人情報に配慮した匿名性の確保。3つ目は多言語のグローバル対応。そして4つ目は地域や所属部門、職位、職種など、様々な属性を掛け合わせることができる多様な視点からの調査です」(吉岡氏)
吉岡 美佳 氏
PwC Japan有限責任監査法人
シニアマネージャー
ガバナンス・リスク・コンプライアンス・
アドバイザリー部
アドバンテストの東氏が選定の決め手になったと語った多言語対応については、日本語・英語・中国語・韓国語に標準で対応しているだけでなく、必要に応じてより多くの国の言語にも対応するという。PwC Japan監査法人でパートナーを務め、執行役員でもある竹内秀輝氏は、その意図についてこう解説する。
「当法人はPwCのグローバルネットワークを構成するファームである以上、グローバルに事業展開されているクライアントのニーズを満たすサービスを提供したいという思いがあります。クライアントからは、共通指標でグローバルにデータを分析したいという要望をいただくこともありますし、国民性や文化の違いを踏まえた助言・支援をして欲しいという相談もあります。しっかりニーズにお応えできるサービスを目指しています」(竹内氏)
竹内 秀輝 氏
PwC Japan有限責任監査法人
執行役員 パートナー
ガバナンス・リスク・コンプライアンス・
アドバイザリー部
アドバンテストが実施した「コンプライアンス意識調査サービス」の結果は、「楽しい」という声が上がるほどポジティブに受け止められ、同社のコンプライアンス・カルチャーの醸成やネガティブイメージの払拭に寄与したという。同サービスが実際にどのように実施され、どのように寄与したのかについては次ページで見ていきたい。