東健介氏、尾崎祐子氏、吉岡美佳氏、竹内秀輝氏
健全な企業活動はポジティブな風土・カルチャーの上に育つ

管理側も現場側も“自分事”として前向きに取り組めるコンプライアンス意識改革とは?

分析も視覚的にも楽しめるコンプライアンス・データ そこから見つかる新発見が改善を加速する

アドバンテストは、4年前の2021年にPwC Japan監査法人の「コンプライアンス意識調査サービス」を実施した。同社にとっては初めての取り組みだったため、まずは調査票の設問を検討するところからのスタートだった。

「設問は一定のひな型はありますが、クライアントのご要望でカスタマイズ可能ですので、まずはミーティングでお話を丁寧に伺いながら提案する流れで進めました」(吉岡氏)

PwC Japan監査法人が用意した100問以上のリストから50問ほどに絞り込んで実施した調査の結果について、東氏はこう振り返る。

「当社はエンジニアが多く、真面目な企業風土であることは常日頃意識していたのですが、ベンチマークスコアで他社さんと比べても優秀な結果が出て、これまで取り組んできた方向が間違っていなかったことが確認できたのは、報われた気持ちがありました。グローバル全体で見たときに当社のフィロソフィーが届いていないケースがあったのも事実ですが、どこから手をつけるのが効果的なのかがこの調査でデータの形で可視化され、マネジメントを説得する材料として、また具体的な施策を打つための客観的な根拠として役立ってくれたと思っています」(東氏)

さらにアドバンテストがデータを活用する上で有効だったのが、PwC Japan監査法人「コンプライアンス意識調査サービス」の特徴である「視覚的なデータ分析」や「多様な視点からの調査」だったという。

「アウトプットがグラフィカルなので見やすいですし、これまで分析できなかったものが明確に見える“楽しさ”もありました。調査結果の報告書をもらって終わりではなく、データセットの形で提供いただけたので、地域ごとや部署ごとにパラメーターを変えたりデータを組み合わせたりすることでリアルタイムに反映され、そこから新たな気付きもありました。フィードバック先の各部門からも『この切り口で見せて欲しい!』と関心が得られ、教育の検討など活発なディスカッションにつながっています」(尾崎氏)

「コンプライアンス意識調査サービス」アンケートシステムのダッシュボード画面(※)

図2 図3 図4

「コンプライアンス意識調査サービス」アンケートシステムのダッシュボード画面。生成AIを活用することで人間だけでは分析できないデータ処理が可能となり、人間が陥りがちなバイアスも排除することができる。今後も継続的な改善を行い、対象言語の拡大などを実施する予定だという※画面のデータはサンプルです

PwC Japan監査法人も「コンプライアンス意識調査サービス」開発の際には、その使い勝手についてこだわりがあったという。

「尾崎さんから“楽しさ”というお言葉がありましたが、コンプライアンスに携わる担当者の方が新たな発見を改善に生かせることを前向きに楽しめるように、UIやUXを重視しています」(吉岡氏)

「アウトプットが分かりやすければ、コンプライアンス部署が経営陣に説明する際にも、営業部門にフィードバックする際にも効果的です。データの組み合わせによる拡張性も含め、活用の可能性は幅広いと自負しています」(竹内氏)

正解もゴールもないからこそ定期的なチェックとアップデートを

アドバンテストは2024年、「コンプライアンス意識調査サービス」を利用し、3年ぶりとなる2回目のコンプライアンス意識調査を実施した。

「コンプライアンスの状況の定点観測をしたかったからです。前回もスコアは良かったので、今回の結果が劇的に良くなったわけではありませんが、新たに買収した海外企業の意識の確認、この3年間の施策の効果などは確認でき、有意義な調査になりました」(東氏)

自社のコンプライアンスについて調査する際は、定点観測を行うのが重要な視点になるという。この点を吉岡氏は“ヘルスチェック”に例えて説明する。

「コンプライアンスリスクは、以前は不正や不祥事が起きてから対処するものと考えられていましたが、現在のトレンドはヘルスチェックのようにリスクの芽を早期発見し、最小限の投薬で未然に防ぐものへと変化しています」(吉岡氏)

そしてもう一つ、コンプライアンス対策の重要な要素となるのが、組織風土の醸成だ。

「組織風土が土壌だとすれば、コンプライアンスも含めた企業活動の施策は木です。施策という大きな木を育てていくには、そもそもの土壌を豊かにしていくことが必須の前提ですが、土壌改良の道しるべとなるのがコンプライアンス意識調査だと思っています」(吉岡氏)

アドバンテストは、この組織風土の醸成にあたって、コンプライアンス意識調査のみならず、会社全体での取り組みにも挑戦している。

「研修や教育を実施する際にも前向きに取り組んでもらえるようなカリキュラム作りを心掛けています。CEOからのメッセージ発信や、海外社員の負担を減らすための17言語のオプション、社内のオリジナルマスコットを使ったゲーム風の演出など、社員のモチベーションにつながるような施策を全社的に実施しています」(尾崎氏)

コンプライアンスにどう取り組むべきか。コンプライアンスには正解もなければゴールもないとよく言われる。だからこそ常にアップデートを続けていく必要があるが、コンプライアンス部を立ち上げたばかりのアドバンテストがそうであったように、どこから手をつければいいか、悩む企業は少なくないはずだ。

「まずは自社のコンプライアンスの現在地を可視化することがすべての土台になります。当社の場合は、意識調査という形で外部の客観的な指標を活用することでこの土台づくりがスムーズに進みました。専門的な知見を持つエキスパートのサポートは有効だと思います」(東氏)

「コンプライアンスをネガティブワードとして使うのは、もはや時代遅れだと思います。東さんや尾崎さんがおっしゃるように、コンプライアンス部署の目的は、取り締まることではなく会社をより良くすること。だからこそ前向きに取り組むことが成果を生むポイントだと思いますし、私たちもその取り組みに貢献していきたいと思います」(竹内氏)

東健介氏、尾崎祐子氏、吉岡美佳氏、竹内秀輝氏