「カイゼン×デジタル」で業務変革を目指す
――東京電力パワーグリッド(以下、東電PG)では、業務にどのような課題を抱えていましたか。
技術・業務革新推進室
データ戦略・高度化グループ
グループマネージャー
大福 泰樹 氏
大福 当社は東京電力ホールディングスの子会社で、首都東京を含む関東一円の送配電事業を担っています。管轄地域の電力の安定供給とともに、事業領域の拡大を通じて福島への責任を貫徹することを使命としています。
当社の技術・業務革新推進室は、部門を横断して業務革新とDXを推進する組織です。その中で、私たちが所属するデータ戦略・高度化グループ(以下、DSG)は、データ活用によるビジネスモデルの変革や、それを通じた新たな価値創出への取り組みなどを担当しています。
長い事業の中で順次更新されてきた送配電設備は、非常に多くの種類が混在しており、中には数十年の長期間にわたり使われている設備もあります。これまで設備のメンテナンスは、どうしてもベテラン社員の知識、ノウハウに頼ってきた部分がありますが、社員の高齢化も進んできています。彼らの退職時期が同時期に訪れることに加え、自然災害が激甚化、高頻度化しており、設備メンテナンス等の業務量も膨大となっていることから、事業の継続のためにはノウハウの伝承、業務プロセスの自動化が急務となっていました。
業務の効率化で注目しているのが、デジタル技術を用いたデータ分析、とりわけ生成AIの活用です。これまで引き継ぐことが難しかったベテランのノウハウの継承だけでなく、社員が本来の業務に注力するためにも、生成AI活用への期待がありました。こういったデジタル技術を活用した業務改善の取り組みを「カイゼン×デジタル」として全社で重視しており、今回、DSGが中心となって生成AIによる業務効率化を目的にしたプロジェクトをスタートさせました。
技術・業務革新推進室
データ戦略・高度化グループ
富岡 遼 氏
――社会インフラの一端を担う企業でいらっしゃいます。生成AIといった先進技術に対する慎重な見方がある中で活動を推進するには、ご苦労があったのでは。
大福 ご認識の通り、様々な苦労がありましたが、経営層のリーダーシップによって実現しました。本プロジェクトを統括する経営層は、常に「目の前にある技術は小さくてもいいからすぐ始める」「長い時間をかけて検討するより、早く試して早く失敗するほうがいい」と社員に言っています。
富岡 とくに生成AIについては、ポテンシャルの大きさへの期待もあり、できるだけ早く導入し活用を推進する、という意志を経営層が示しておりました。社会インフラを担う当社のような企業にしては、早期にスタートすることができたと思っています。
テクノロジーよりもビジネス課題の抽出に注力
――今回の生成AIプロジェクトは、東電PGのDSGとPwCコンサルティングのチームが共同で進められたそうですね。
執行役員 パートナー
テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部
三善 心平 氏
三善 当社は従来から、東電PGの業務改善や人財育成などの支援をさせていただいてきましたが、その中で、2023年の初頭から生成AIが企業にとって有用だという気運が盛り上がってきていました。こうした流れで、東電PG側から当社へ生成AIプロジェクトについてのご相談がありました。
テクノロジーの導入においては、技術的な領域に特化したチームによる導入・実装を行うケースもありますが、生成AIに関しては、テクノロジー以前に、DX構想の策定やデータ利活用に関する戦略立案が重要です。今回のプロジェクトにあたっては、まず、ビジネスコンサルティング領域でのヒアリングを行い、東電PGが抱えている業務の課題を抽出し、その中で生成AIによって改善や自動化ができるものは何か、ユースケースを洗い出していくことから始めました。
大福 当時、企業の生成AI活用は、汎用的な生成AIをいち早く導入し、テキスト生成や文章の翻訳、要約などの業務効率化に適用するケースが目立っていました。当社でも、どの業務部門でも使える汎用型の生成AIの導入を進めることはもちろん、特定の業務課題に対しても生成AIを活用したいと考えております。そのため、特定の業務に特化した「業務特化型生成AI」のPoCを並行して進めることにしました。
――本プロジェクトでPwCコンサルティングではどのようなチームを編成されましたか。
シニアマネージャー
テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部
青木 英隆 氏
青木 三善も私も、当社の中でデータアナリティクス活用のご支援を行う組織に所属しており、チームには業務コンサルタントや、データサイエンティストなどを含めた多種多様な人財をそろえています。しかし私たちは、技術を導入することを目的とはせず、まずクライアントの課題を見いだし、理解して、その上でベストな解決法を探るコンサルタントとしての視点を第一に支援に当たっています。
そのため今回のプロジェクトでは、どのような課題にも対応できる人財を用意する必要があり、様々な業務知識、技術の専門性を備えたメンバーを編成した上で、まずは真の課題がどこで何であるかを東電PGと対話を重ねながら共に考えるところから始めました。その結果、業務に直結しかつその効果が大きいユースケースを選定することができたと考えています。
大福 プロジェクトの開始当初は「生成AIを活用したいが、何から進めていいか分からない」という状況でした。PwCコンサルティングは、当社の置かれている状況を理解し、プロジェクトを具体的に進められるように支援してくれました。まずは各業務部門のビジネス課題の抽出に注力したことが、PoCの成功と実業務への適用を多く実現させた最大の要因だと思います。