ビットコイン価格が急騰
背景にあるのは世界的な規制の整備
記録的な高値を更新し続け、2025年7月末には11万5000ドル(約1700万円)を記録したビットコイン。ビットコインをはじめ、主要暗号資産のかつてないほどの急激な価格上昇は、暗号資産への資金流入が“新たな次元”に突入したことを示している。
「急激な価格上昇の背景にあるのは、機関投資家が暗号資産市場に参入する動きが加速していることです。2024年1月に米証券取引委員会(SEC)がビットコインの値動きに連動するETF(以下、ビットコインETF)を承認し、複数銘柄が上場したことで、運用ポートフォリオに組み入れる機関投資家が増えているのです」
そう語るのは、PwC Japan有限責任監査法人のパートナーで、暗号資産や銀行、証券を専門分野とする鈴木智佳子氏である。
パートナー
鈴木 智佳子 氏
盛り上がりを見せている米国の暗号資産市場。それを後押ししているのは、トランプ政権による積極的な規制の整備だ。
2025年7月中旬には、米下院が、暗号資産に対する規制の明確化を目的とする「クラリティ法案(CLARITY Act)」、ステーブルコイン※の信頼性を高める「ジーニアス法案(GENIUS Act)」、金融プライバシーを保護する「反CBDC監視国家法案(Anti-CBDC Surveillance State Act)」の3つの法案を、わずか1週間で立て続けに審議・可決した。暗号資産関連の法案を集中審議する1週間であることから「Crypto Week」と称され、米国のみならず、世界中の暗号資産・ブロックチェーン市場の関係者たちが注目した。
「規制の整備や明確化は必ずしもビジネスを制約するとは限りません。むしろポジティブに捉えるべきです。国や自主規制団体がよりどころとなる考えを示すことにより、多くの事業者やステークホルダーが共通した目線でビジネスに取り組むことが可能になります。とくに暗号資産をはじめとするブロックチェーンビジネスは、個別検討事項が多くグレーであるが故に、規制の導入に伴い今までは保守的な対応が求められていたビジネス活動にメリハリが生じ、適切な事業戦略の立案や財務面の安心・信頼感をもたらします。それによって投資家の積極的な参加を促し、これまで以上に市場が活性化することが予想されます」
と話すのは、PwC Japan有限責任監査法人 ディレクターの須田真由氏である。
ディレクター
須田 真由 氏
同様の動きは世界中で広がっている。EUの最高意思決定機関である欧州理事会は2023年5月、欧州議会と共にEUの包括的な暗号資産規制であるMiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)を正式に承認。アジア諸国も、マネーロンダリング対策、税制、消費者保護などの観点から、暗号資産に関する法的枠組みの整備を進めている。
いずれも、明文化されたルールの下で、市場参加者が安心して取引できる環境を実現し、暗号資産・ブロックチェーン市場の発展を促そうという流れに沿ったものだ。
翻って、日本の動きはどうか? 実はかつて、日本は世界に先駆けた“暗号資産先進国”であった。それが今や、市場規模は欧米やアジアに追い抜かれ、安全な市場形成に不可欠な規制の整備もリードするに至っていない。むしろビジネス活動をけん制しすぎる傾向も生じていた。
なぜ、そのような状況に陥ってしまったのか? 日本の暗号資産・ブロックチェーン市場を甦らせ、成長させるためには何が必要なのだろうか。