日本の生産年齢人口(15~64歳)は、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少※1するという厳しい予測が立てられている。新卒採用市場は大きな変革期を迎えており、若者への期待が高まる一方で、企業は人材確保に苦慮している。少子高齢化が進むなか、人材確保は企業にとって喫緊の課題だ。このような状況において、株式会社リクルートは、学生と企業の双方の希望を叶えるマッチングを実現するため、2027年4月以降に就職予定の学生を対象とした就職活動準備サイト『リクナビ』を抜本的にリニューアルした。今回、プロダクト責任者である菊池浩太氏に同社が考える新たな就活のあり方について話を伺った。

※1 出典:総務省「令和4年版情報通信白書」より

学生のニーズが多様化
変革を迫られる採用市場

株式会社リクルート

新卒プロダクトマネジメント部 部長
『リクナビ』 プロデューサー

菊池 浩太

―労働環境が大きく変化するなか、新卒採用市場において企業側が抱える課題とは

 人材採用の難易度がますます高まっている、その一言に尽きます。2024年卒の新卒採用計画に対する充足状況を企業に調査※2したところ、「採用予定数を充足できた」と回答した企業は36.1%で、調査を開始した2012年卒以降で最低値となっています。最近では内定承諾の際に勤務地や職種の確約を学生から求められるケースもあり、学生の多様な価値観や働き方に対応するため、企業側も採用活動を多様化、複線化していく必要が出てきています。

―ヒアリングなどを通じて見えた、学生側が抱える悩みや課題とは

 最も多いのが、「自分に合う企業がわからない」という声です。弊社の調査では、就職活動を始める前で約8割、終わった後でも約6割の学生がそう答えています。これまでの『リクナビ』では、学生の皆さんが「企業情報の詳細画面」を見る時間よりも、「企業検索画面」で検索結果一覧をスクロールする時間のほうが長いというデータもあり、たくさんある情報の中から、自分に合ったものを選べないのかもしれないと感じました。

 一方、興味深い調査結果※2も見えてきました。それは、「自分らしい進路選択ができた」と強く実感している人は、その半数以上が「人生に満足している」という回答をしていることです。つまりここから、「自分の意思で納得した進路選択ができると、その後の人生にもポジティブな影響がある」という因果関係が示唆されます。しかし、2024年卒の大学生・大学院生の就職活動期間の平均は約8カ月※2。自分に合った進路を短期間で選択するというのは、学生にとって大きなプレッシャーとなります。「自分に合う企業がわからない」という学生の悩みに、就職情報サイトを運営する私たちも向き合わなくてはならないと考えました。

※2 出典:リクルート就職みらい研究所「就職白書2024」より

「自分らしい進路選択」を通じた、
仕事との幸せな出会いを

―2024年9月、新しい『リクナビ』のβ版がリリースされた。従来と何が違うのか

 これまでの「大学3年生になったら就職活動の準備を始める」という固定観念を越えて、学生がいつでも自律的にキャリアを考えられるサービスへと大きく方向転換したことです。この背景には、自分に合った仕事に出会い、納得して自己決定するためのきっかけを学生の皆さんに提供したい、そのために一人ひとりが自分に合ったタイミングでキャリアを考えて欲しいという思いがあります。そのため「就職活動準備を始める大学3年生以降を対象としたサイト」ではなく、1年生からでもキャリアを考える機会に触れられる、全学年を対象としたサイトへとリニューアルしました。

 特徴的な変更点として、学生一人ひとりに合った求人をおすすめする「レコメンドフィード」という新機能の導入があります。学生が就職活動準備サイトに登録した際、最初に行うのが企業の検索です。しかし、社会をよく知らない状態では何をどう検索すればいいのかわからず、名の知れた企業ばかりが検索されがちでした。そこで、自身と同じ専攻の学生がよく見ているコースを表示する「注目企業」や、自身の興味関心を最大で5つ選択し、その選択結果に基づいておすすめのコースを表示する「好きに関連」など、7つの切り口から自分に合った仕事・コースと直感的に出会える仕組みをつくりました。

 その他にも、「会社」単位での情報の掲載から「仕事・コース」単位への掲載に変更し※3、より細やかな情報発信やマッチングの可能性を追求。さらに、多くの学生が頭を抱えるエントリーシート上の「学生時代に力を入れたこと」の素案が4つの質問に回答するだけで作成できる、「ガクチカAIアシスタント」も新たな機能として追加しました。

※3 掲載される情報は、インターンシップ、オープン・カンパニー&キャリア教育などのコースの情報、選考期にはコースごとの求人情報となります

―開発をする上でどんな課題があり、それをどう解決したか

 「ガクチカAIアシスタント」については、当初社内でも「学生の思考力が奪われるのでは」という懸念の声がありました。しかし、我々がこだわったのはあくまで気づきの最大化です。音声入力機能を搭載し、AIからの質問に対して対話するように情報をインプットできるようにしました。その結果、文章としてまとまっていない状態でも、学生の本音や思いを引き出し、自分自身の強みや成長を確認できるツールに昇華させることができました。

 その他の機能も含めて、新しい『リクナビ』の開発では、500名以上の学生にヒアリング協力を依頼。どの部分で操作が止まったのか、なぜ前の画面に戻ったのか。細かく確認しながら1年以上にわたって修正を重ね、リリースに至りました。

掲載コストを最適化し、
採用活動のチャンスを拡大

―新しい『リクナビ』は、企業の採用活動にどのようなメリットをもたらすか

 仕事・コース単位の掲載への変更、学生が自分に合った仕事・コースと直感的に出会える機能の実装などを通じて、企業は人材要件にマッチした学生に出会える可能性が高まると考えています。

 また、採用活動におけるコストの最適化を図れることも大きなポイントです。今回のリニューアルに際し、料金体系をクリック課金型に変更しました。従来は求人情報の掲載時に料金が発生していましたが、新しい『リクナビ』では掲載情報がクリックされた場合にのみ料金が発生するため、費用を最適化することが可能です。また、企業単位で一律にかかっていた掲載料を、掲載しているコースごとに配分可能にすることで、限られた予算をより有効に活用することが可能になります。

 じつはこのクリック課金型の導入は、学生にも同時にメリットがあります。募集中の仕事・コースのみが掲載され、常に鮮度の高い情報に触れられることで、自分に合った仕事に出会えるチャンスが広がるからです。こうした利便性が上がることは、『リクナビ』を利用する学生の増加を促し、ひいては企業の求人掲載への効果向上にもつながっていきます。

―β版のリリース以降、企業や学生からはどんな反応があったか

 企業の採用担当の方からは、「新しい取り組みに期待している」「知名度ではなく、仕事の魅力や内容で学生にアピールできるチャンスになる」といった期待が寄せられています。

 また、「ガクチカAIアシスタント」を利用した学生のうち、約96%が満足と回答※4。「質問も難しくなかったので、これなら自分でもガクチカが書けそうだと思った」という喜びの声も届いています。

※4 2024年9月25日(水)~12月31日(火)の間に、『ガクチカAIアシスタント』利用後に表示される「良かった」「良くなかった」の2択アンケートにて「良かった」と回答した学生の割合 総回答数:5,535人 

―これから搭載予定の新機能とは

 β版リリース後も検証作業を重ね、2025年1月に新しい『リクナビ』を正式リリースしました。正式リリース後もアップデートを続けているのですが、今後搭載予定の機能の1つが、学生と相性の良い仕事・コースをつなぐ「マッチポイント」です。学生は「自分の志向性」を、企業は「求める人物が持つ志向性」をそれぞれ登録し、両者を共通点(マッチポイント)で結ぶ新しい機能です。その他にも、学生が無意識に見ている情報には傾向があるため、テクノロジーの力を使って解析した共通点を基に、「あなたはこういう仕事をよく見ているので、この仕事をおすすめしています。興味はありますか?」と学生にフィードバックするような機能も開発予定です。また仕事との出会いだけでなく、自己理解、キャリア形成を目的としたコンテンツも順次開発していきます。

―これからの『リクナビ』はどのように進化していくのか

 今回、リクルートが提供する転職希望者向けのサービスで先行導入していた機能を一部応用する形で、新しい『リクナビ』の開発を進めました。ワンチームで進化のスピードを加速させることができるのは、リクルートならではの強みであると感じています。

 どのようなテクノロジーやサービスを提供する場合でも、透明性があり、しっかりと説明できるものであることが不可欠です。学生や企業の皆さまにとって安全で信頼できるサービスを提供するため、その根幹を揺るがすことなく開発を進めています。未来のキャリア形成を支えるために、常に改善を重ね、発展を続けることで、さらなるサービス向上への挑戦を続けてまいります。

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