変革を企業価値向上につなげる

変革を企業価値向上につなげる「データドリブン経営をアップデートする」今、日本企業に求められるアプローチは?

ビジネス変革の取り組みやそのためのDXの強化は進めている。だが、成果がなかなか上がらない――。この状況に悩んでいる企業経営者は多いのではないだろうか。要因の1つといえるのが、取り組みを進める際の優先順位付けの間違いだ。DXのD(デジタル活用)が目的化しており、より重要なはずのX(変革)が後回しになっている。この状況を脱却する方法と、真に実効性のあるデータドリブン経営へのアップデート方法について、総合プロフェッショナルファームRidgelinezのエキスパートに話を聞いた。

DXの本質をとらえている日本企業は一握りしかない

 2023年3月に東京証券取引所が出したPBR(株価純資産倍率)改善要請、いわゆる「東証要請」をきっかけに、企業価値を高めることが企業の重要課題になっている。

 PBRが1倍を下回る場合、市場はその企業の将来の収益性や成長性に懐疑的であると見なされる。一方で、現在の日本企業は約40%がPBR1倍割れの状態にある。この割合は欧米企業と比べてかなり多い数字だ。企業価値を高めるためには、「稼ぐ力」を示すROE(自己資本利益率)と、「成長力」を示すPER(株価収益率)を向上させることが必要だが、2023年には上場企業の配当金総額が9兆円を突破。小手先の改善に莫大なキャッシュが費やされている格好だ。

 「現在の日本企業には、既存事業の『稼ぐ力』を高めるだけでなく、将来に向けた『成長力』を高める価値創造ストーリーが求められています。その実現に向けて不可欠なのがデジタルトランスフォーメーション(DX)です。しかし残念ながら、DXの取り組みが限定的な改善にとどまっており、大きな成果につなげられていない日本企業が多いのが実情です」。そう語るのはRidgelinezの西尾 佳祐氏だ。
Ridgelinez株式会社 執行役員 Partner 西尾 佳祐氏
Ridgelinez株式会社
執行役員 Partner
西尾 佳祐
 DXの本質は「データやデジタル技術を活用した業態変革・新規ビジネスモデルの創出」にある。だが、これを実現できている日本企業はほんの一握り。多くの場合、DXのD(デジタル活用)が目的化しており、データ整備やテクノロジー導入がゴールとなってしまっている。本来、より重要なはずのX(変革)が後回しになっているため、いわゆる「データドリブン経営」も、十分な効果につなげられていないという。

 また、組織内でマネジメントの責任範囲・役割分担が曖昧なことも問題だ。例えば、現在の日本企業では、本社と事業部門の間で利害や言い分、責任や役割が異なるため、両者が一体となって横断的な変革に取り組めているケースは少ない。

 「この状態では『稼ぐ力』や『成長力』を高めることは困難です。経営と各事業部門が、3~5年の中長期を含めた変革の道筋について合意した上で、共に取り組むことが重要です」と同社の浦谷 秀一氏は述べる。
Ridgelinez調べ
Ridgelinez株式会社 Director 浦谷 秀一氏
Ridgelinez株式会社
Director
浦谷 秀一

成果が上がる形へと、データドリブン経営をアップデートするべき

 とはいえ、これまで企業はDX推進やデータ活用に向けて様々な挑戦を続けてきたことだろう。現状を脱却し、企業価値を高めるためには、今後どのようなアプローチが求められるのか。

 「データドリブン経営をアップデートすることが欠かせません。正しい現状認識に基づく改善ポイントの洗い出し、そのための機能や施策などを可視化し整理することで、迅速・高度な意思決定(MX:Management Excellence)を実現するのです」と西尾氏は強調する。

 具体的には、まず自社の「稼ぐ力」と「成長力」の現状を把握する。市場環境や競合他社のデータを用いて自社のポジショニングを明確化し、自社が今どのレベルにあるのか、「稼ぐ力」と「成長力」のどちらに問題があるのか、市場や取り巻く環境における自社のポジションなどを確認。その上で、事業ポートフォリオの改善、他社との差別化、利益向上に向けた改善などに関する仮説を立てる。先に紹介したようなDとXの優先順位付けの逆転が起こるのも、このような現状認識の視点が弱いためだという。

 「また、大切なのは経営層・キーパーソン自らがリーダーシップを発揮して、自社の変革に向けた仮説を立案・推進することです。『成長力』を高めるためにどう変わればよいか、どこにチャンスを見いだせるか、『稼ぐ力』で生み出したキャッシュをどこに投入するべきかなどをデータに基づいて検討し、変革の設計図を描くのです」と浦谷氏は話す。

MXを起点とした「4X思考」で全社的な変革をドライブする

 さらに、MXを実現するデータドリブン経営には大きく3つの入り口があるという。1つ目は事業査定や投資判断を含めた「事業ポートフォリオの最適化」。2つ目は各事業施策の進捗や成果を把握する「事業パフォーマンスの評価」。3つ目が、日本企業が長年にわたり多くの労力を費やしている「集計・報告のデジタル化・自動化」だ。

 「1つ目は『成長力』、2つ目は『稼ぐ力』の強化にそれぞれ寄与します。そして3つ目は、前提となるデータの収集を支えるものに当たります。これはいずれかを選ぶものではなく、企業ごとに描いた変革の設計図にしたがって進めていくことが大切です」と浦谷氏は説明する。

 なお、MXだけを見据えていると効果は限定的になってしまう。データをより広範な価値創出につなげる上では、業務プロセスや業務運営の高度化(OX:Operational Excellence)、顧客体験の変革(CX:Customer Experience)、従業員体験や組織の変革(EX:Employees Experience)とMXを合わせた「4X」混成型の活動へと昇華し、さらにデジタルの力に最適に活用しながら、それを加速していくことが肝要だという。

 「例えばMX×EXの観点を持つことで、MXに組織構造や人材、制度・プロセスを含めた変革を組み合わせることが可能です。部門からの集計・報告に基づいた表面的な評価を脱却し、経営インパクトの大きい重点施策を立案・実行できます。また、MX×OXの観点では、経営会議のレポーティングに関わる業務を標準化・効率化するといったことが実現できるでしょう」(浦谷氏)。

 このように、MXを起点とした「4X思考」で、経営意思決定と業務、人の体験などを連動させて考えることが、データドリブン経営の価値を組織全体に波及する上でのポイントといえる(図)。
MXを起点とした「4X思考」によるデータドリブン経営
図 自社のポジションの現状把握を行ったのち、「稼ぐ力」と「成長力」の双方の視点で、課題解決に向けた戦略策定・実行を繰り返し、組織への変革の定着を促す。これにより、実効性のあるデータドリブン経営を実現する(図中、SXはSustainability Transformation、TXはTechnology Excellenceのことを指す)

エンド・ツー・エンドの支援で変革に挑むチェンジリーダーを支え抜く

 Ridgelinezは、データドリブン経営をアップデートするための取り組みを伴走型で支援している。「稼ぐ力」と「成長力」の診断から、課題解決に向けた戦略策定・実行、そして組織への定着までをエンド・ツー・エンドでサポートする。

 変革の取り組みにおいては、戦略立案に強みを持つ戦略コンサルタント、業務機能の効率化・高度化に強みを持つ業務コンサルタント、そしてITベンダーが、取り組み内容ごとにバトンリレーしながら企業に伴走することが一般的だ。ただ、この方式の場合、バトンリレーの際に情報が欠落したりスピードが低下したりすることがある。また、その過程の中で「稼ぐ力」や「成長力」の向上という目標がいつの間にか薄まり、「業務効率化」にすり替わってしまうことも多々あるという。

 「その点、当社は全フェーズに一貫して伴走することで、構想に沿った施策の実行と具体的な体験への落とし込みまでを支援可能です。人起点と4X混成の変革アプローチを創業時からのDNAとしており、変革を全方位で支援するマインドとケイパビリティ、お客様のチェンジリーダーの覚悟や思いに伴走する組織文化がある点は、我々の強みです」と西尾氏は述べる。

 支援に当たってはOX、EX、CXとMXの整合性を常に考えながら、成果やビジネスインパクトに徹底的にこだわる。Ridgelinezはコンサルティングファームとして後発といえる存在だ。しかし、だからこそ既存のコンサルティングの課題に対する意識を出発点として、サービスを設計できているのだという。

顧客ごとに適したデータドリブン経営の推進手法を選択

 データドリブン経営を推進する手法には、経営層のリーダーシップに基づく「トップダウン型」のほかにも、事業部門におけるデータ活用環境構築、組織文化の醸成を核とする「ボトムアップ型」、両者を組み合わせる「ハイブリッド型」が存在する。顧客企業ごとの課題や変革の目的に合わせて、適した手法を用いるという。

 例えば自動車メーカーのSUBARUは、データ主導型のものづくり革新を推進するため、Ridgelinezと共に企業文化の変革と最適な仕組みづくりに取り組んだ。

 課題であった生産物の品質向上と、それを支える業務プロセスの改善に向けてボトムアップ型で施策を推進。Ridgelinezのコンサルタントが実際に製造現場を訪れて業務を観察したり、現場へのヒアリングを行ったりしながら、「企業文化を変える」という根本のところから共に取り組んだ。

 データを収集・活用する仕組みの構築と併せて、社員向けのトレーニングも提供。人の教育や意識改革も同時に進めることで、新しい業務プロセスの現場定着を促進した。また、成功事例を横展開することで、取り組みへの理解と賛同を得ながら効果を波及。「お客様の経営層、チェンジリーダーの方からは、結果にこだわる当社の姿勢を高くご評価いただきました」と西尾氏は語る。

 また、ある建設会社は、トップダウン型の変革をRidgelinezと共に進めている。経営者が描いた変革の設計図を、各事業にどう適用していくか。全社の変革に向けた戦略の立案・実行に伴走しながらサポートしているという。

 ほかにも様々な日本企業が、Ridgelinezと共に実効性のあるデータドリブン経営の実現に向けて取り組んでいる。PBR1倍割れの日本企業にとって、データに基づいた「稼ぐ力」と「成長力」の向上を図ることは喫緊の課題である。戦略の立案・実行、成果の創出から組織への定着化までトータルに伴走するRidgelinezは、データドリブン経営に取り組む多くの企業にとって頼もしい変革パートナーとなるはずだ。