日経ビジネス電子版 日経クロステック
PR

オンラインセミナーレポート 次世代SCM経営フォーラム2025 変動する世界とサプライチェーンの新常識 Review

基調講演 明治大学

グローバル化によるSCMの問題を
生販計画の精度向上で乗り越える

富野 貴弘 氏
明治大学
商学部 教授(博士・経済学)
富野 貴弘

 製造業は形と重さのある製品を扱っている。したがって、製品の物理的な制約から逃れることはできない。明治大学の富野貴弘氏は次のように説明する。「モノをつくったり、運んだりするには時間がかかります。したがって、需要を予測して製品をつくることになりますが、未来の正確な予測は難しい。それはSCMの抱える本質的な問題といえるでしょう」

 加えて、「生販の壁」がある。生産側はモノをつくるリズムを変えたくない。一定のリズムで大ロット生産することで、コストを下げたいと考えている。他方、販売側は需要に追随して売り物を変えたい。売れるときに、売れる量だけを確保したいし、欠品は防ぎたいと望んでいる。短期間での受注生産は販売コストを最小化できるが、生産コストが上がる。逆に、見込み生産は生産コストを最小化できる一方、予測が外れたり過剰在庫を抱えたりするので販売コストが上昇する。「両者の間にはトータルコストを最小化するポイントがあるはずですが、その見極めは非常に難しい」と富野氏は語る。

 SCMが注目されるようになったのは、1990年代の終盤から。その背景には、ものづくりのグローバル化があるという。「かつて、日本メーカーは日本で生産した完成品を米国などに輸出していました。エレクトロニクス産業では2000年ごろから、部品を東アジアに輸出し、そこで生産した完成品を米国に輸出するという流れが強まりました」と富野氏は指摘する。また、自動車産業では米国での現地生産の比率が増大したが、そこで使われる一部の部品は今でも日本からの輸出だ。いずれの産業においても、サプライチェーンはグローバル規模になり、リードタイムも伸びた。

 グローバル化によってSCMの問題は増大した。その解決アプローチは大きく2つ。リードタイム短縮、生販計画の精度向上である。リードタイムを短くするには、生産現場力を高める地道な取り組みが求められる。ただし、船便で運ぶような製品で、リードタイムの短縮は容易ではない。在庫増という選択肢もあるが、あまり望ましい解決策とはいえないだろう。「ならば、生販計画の精度向上が必須です。生産と販売の壁をなくし、密に連携を取るようにします。ITやAI(人工知能)などのツールは有用ですが、あくまでも手段です。生販の壁がなぜ生まれるのか、一度立ち止まって考えてみてはどうでしょうか」(富野氏)

 例えば、販売側が欠品を恐れて在庫を持ちたがる。あるいは、生産側が販売側の計画を信用しない。販売側は量のサバを読み、生産側は納期のサバを読む、等々の理由が浮かび上がってくるかもしれない。理由が分かれば的確な打ち手が見えてくるはずだ。

生産側と販売側の間には「壁」がある

[クリックすると拡大表示されます]

講演 ザイオネックス

充実した評価機能と計画系機能
経営課題としてのSCMに向き合う

ザイオネックス株式会社
代表取締役
藤原 玲子

 サプライチェーンの複雑化に伴い、それら全体をコントロールする難易度は高まっている。

 「顧客から受注しても出荷できない、売れるはずの商品が売れずに在庫が過剰になっている。多くの企業でそうした問題が起きていると思います。生産と販売のバランスが悪くなると、キャッシュフローが悪化したり、事業成長が止まったりします。マネジメントの方は、こうしたSCMの問題を現場のオペレーションに任せっきりにするのでなく、経営の課題と捉えしっかりと目を向けて対処すべきです」とザイオネックスの藤原玲子氏は語る。

 製造業にSCMは普及してきた。ただ、実行系システムはあっても、「需要計画→供給計画」という計画系プロセスでは人手に頼る部分が少なくない。

 「以前、需要予測は熟練社員の勘と経験に頼っていましたが、やがてExcelに統計的な手法を組み込むやり方が広がりました。今も人手とExcelを利用して需要を予測している企業は多いでしょう。最近はAIを活用した手法が広がりつつあります」(藤原氏)

 ただ、AIへの過度な期待は禁物である。例えば、新商品などでは過去データが十分揃っていないからだ。

 「需給の問題を解決するためには、目標から方針、戦略、戦術への落とし込みが重要です。しかし、方針(重要管理品目と管理方針)と戦略(品目ごとの在庫の持ち方)は十分考慮されているでしょうか。在庫金額や日数などの経営目標が、そのまま現場のオペレーション(戦術)に落ちてきているケースが少なくありません」と藤原氏は指摘する。全体像が曖昧なまま、現場ごとに個別最適で対策を進めていては、有効なSCMとは言えないだろう。

 ザイオネックスのSaaS型SCMソリューション「PlanNEL」は、こうした課題への解決策を提示している。実績レビューや需要確認などの評価機能、需要計画・供給計画という計画系の機能を持ち、実行系のシステムと連携してサプライチェーンの全体最適化を推進するソリューションだ。

 「PlanNELも需要予測AIを搭載していますが、我々は人による『意思入れ』を重視しています。事業部門や地域販社などが入れた意思をPlanNELが自動集計し、在庫の基準値を算出。人による確認を経た上で、基準値を基に生産計画や部品の調達計画などが決まります。さらに、工場設備などの能力を踏まえて、需要計画に対する供給が可能かチェックできます」(藤原氏)

 ザイオネックスは韓国生まれで、韓国系グローバル企業の多くに導入されている。PlanNELの提供を通じて、製造業の生産性向上に貢献する。

SCMは企業経営の要(かなめ)

[クリックすると拡大表示されます]

ザイオネックス株式会社

講演 o9ソリューションズ・ジャパン

環境変化に即応するための
計画・意思決定プラットフォーム

o9ソリューションズ・ジャパン株式会社
インダストリーソリューションズ本部
本部長
石 鵬(シー・ペン)

 o9ソリューションズの「o9デジタルブレイン」は、AI(人工知能)を活用した次世代の計画・意思決定プラットフォームである。「リアルタイムかつエンドツーエンドでの可視化、高速・同期化された計画によって需給の変化への迅速な対応を支援します」と、o9ソリューションズ・ジャパンの石鵬氏は話す。また、高度なシミュレーション機能により将来の不確実性に備えられ、早期のリスク検知も可能だ。さらに、AIを活用して人の分析力や意思決定能力を強化する。

 o9デジタルブレインはERPなどの企業システム、担当者の持つExcelデータをはじめ、SNSデータ、IoTデータなど、あらゆるデータを収集・分析してサプライチェーンの最適化を図る。2016年の販売開始以来、o9デジタルブレインは多くのグローバル企業に採用され、大きな成果を実現している。

 o9デジタルブレインの4つの活用例を見てみよう。

 第1に、関税の製品原価への影響評価だ。まず、外部データを基に、自動的にサプライチェーンネットワーク図を作成する。特定製品についてサプライヤーと調達価格を確認の上で、シナリオプランニングを実施し、関税変更の粗利益への影響を評価する。入力する関税率の増減により、様々なシナリオのシミュレーションができる。

 第2に、需給調整への活用だ。下の図は需要計画と供給状況を示した画面だ。赤色の棒グラフは、需要に対する供給不足の程度を示す。

 「まず、供給不足の原因特定です。例えば、トラックによる配送リードタイムが長く、出荷に間に合わないことが原因であると判明した場合には、代替手段として航空便の利用を含む他の物流手段によるシナリオを検討。その場合の売り上げ・利益への影響を算出し、取るべき対策を推奨します」と石氏は説明する。

需要計画と供給状況を示したo9デジタルブレインの画面

[クリックすると拡大表示されます]

 第3に、多層サプライヤーコラボレーションとリスク管理。無線通信基地局などを建設する通信会社は、サプライチェーン計画と建設プロジェクトを同期させ、設備や資材の確実な納品と在庫の削減を目指した。その際、サプライヤーと協力し、在庫状況や納品能力を可視化した。同時に、外部リスク監視サービスと連携して、サプライヤーのリスクを可視化し、リスク緩和策を策定。サプライチェーンの安定性を高めた。その結果、在庫金額を導入前の10億ドルから6.5億ドルに削減。建設速度は7倍になったという。

 第4に、生成AI及びAIエージェントの活用例である。多くの意思決定プロセスで、3つの問いがあると石氏は話す。『何が起きたのか/なぜ起きたのか』『今後、何が起こり得るか』『どのような対策を講じるべきか』だ。「その3つの問いに答えるために、データ準備や分析、レポート作成などが行われていますが、その多くをo9デジタルブレインが担うことができます」と石氏。o9デジタルブレインにより意思決定のスピードを大幅に速めることができるだろう。

o9ソリューションズ・ジャパン株式会社

講演 Anaplanジャパン×オムロン ヘルスケア

SCMだけでなく、事業全般を支援する
プランニングのプラットフォーム

Anaplanジャパン株式会社
社長執行役員
中田 淳
オムロン ヘルスケア株式会社
コーポレート経営変革本部 本部長
井沢 晃将

 Anaplanは最適な意思決定をサポートするシナリオ プランニング及び分析プラットフォームである。世界では2400社以上、国内では約200社が採用するエンタープライズSaaSで、SCMや経営管理など幅広いエリアで意思決定の質向上に役立っている。

 「起こり得る将来をいくつかのシナリオとして描き、それぞれのシナリオへの準備を進める。世の中の不確実性が高まる中、そんなシナリオプランニングの考え方が注目されています。最近は、Anaplanをシナリオプランニングのプラットフォームとして導入する企業が増えています」とAnaplanジャパンの中田淳氏は語る。

 サプライチェーンの現状を見ると、調達計画や生産計画、配送計画などが分断されている企業は少なくない。これらを統合するプラットフォームとしてAnaplanを導入することで、一貫性のある計画づくりが可能になる。それはSCM分野にとどまるものではない。

 「例えばSCMと販売計画を統合して需給計画を精緻化する。あるいは生産計画とひも付けて工場の要員計画を最適化するといった使い方もできます。計画と分析に特化したプラットフォームとして、Anaplanは企業活動全体をエンドツーエンドでサポートします」と中田氏は言う。

 好例が2017年からAnaplanを導入したオムロン ヘルスケアである。同社は血圧計などの医療機器でグローバルビジネスを展開している。「以前は世界各地の販売拠点がそれぞれに在庫管理などをしていました。しかし、海外事業が拡大する中で、グローバルでの集中管理が必要と考え、Anaplanのプラットフォームを活用して在庫の一元管理を実現しました」と同社の井沢晃将氏は振り返る。

 新たに構築したSCMの最初の試練はコロナ禍だった。半導体不足などから供給に遅れが生じた一方で、血圧計や体温計などの需要が急増したのである。「大きな需給ギャップが発生し、すべての需要を満たすのは難しい状況でした。しかし、Anaplanのプラットフォームを活用することで、必要なエリアに必要な商品を送るという全体最適のオペレーションは有効に機能しました」と井沢氏は言う。成果は業績にも表れ、2020年度の売上高・営業利益は過去最高を記録した。

 オムロン ヘルスケアはSCMでの取り組みを拡張し、経営管理の領域にもAnaplanのプラットフォームを適用している。井沢氏は「SCMを起点に経営変革を進めています」と語る。SCMと経営管理がワンナンバーでつながり、迅速な意思決定を実現するなど成果は着実に表れつつあるようだ。

 Anaplanの守備範囲はあらゆるビジネス活動に及ぶ。Anaplan プラットフォームはサイロ化された部門機能をつなぎ、全体最適に資する意思決定をサポートする。オムロン ヘルスケアのように、計画業務の効率化・質向上のみならず、業績へのインパクトを実現した導入企業は多い。

Anaplan プラットフォームは、サイロ化した機能を連携させて、より良い意思決定を実現する

[クリックすると拡大表示されます]

Anaplanジャパン株式会社

特別講演 花王

AIを活用した需要予測モデルの構築で
SCM計画の立案業務におけるDXを加速

花王株式会社
デジタル戦略部門 DXソリューションズセンター
チーフデータサイエンティスト
石渡 健祐

 花王では、AI技術の活用をベースに、複雑なサプライチェーンの計画業務にかかわるDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させている。需要計画はSCMの基点となる重要な計画業務であり、その精度の担保は欠品や在庫過多など、消費者や小売店に影響する経営指標の維持にも密接に関連する重要なテーマだ。特に多品種少量生産で返品率が高い商品である化粧品では、廃棄削減にも大きく影響するため、ESG経営上の重要な課題ともいえる。

 花王の化粧品については、同社小田原工場や周辺の委託先工場で製造した商品を、厚木のマザーセンターに納入し、そこから全国6つの物流拠点に配送して、最終的に小売店に届けている。他社の場合、一般には卸業者を使って商品を運んでいるケースが多いだろう。だが、花王では花王グループカスタマーマーケティングを荷主に、花王ロジスティクスが卸物流を担っている。「サプライチェーンの下流のデータをタイムリーに収集できることが、当社の大きな強みとなっています」と花王の石渡健祐氏は説明する。

 こうした強みを活かし、花王では原材料の発注量決定のタイミングと、初回の生産量決定という2つのタイミングにおいて、化粧品の新製品の売れ行きを高精度で予測する需要予測モデルの構築を目指した。

 具体的には、化粧品の画像データと商品説明のリリース文章を活用する。化粧品の売り上げを左右する商品の「肌なじみ(色相)」や「深み、透明度(彩度、明度)」「輝き(明度の分布)」を、RGBに比べて人間の感覚に近いとされるHSV色空間とAI(人工知能)を利用して画像解析やテキストマイニングにより数値化する。さらに、人間が理解しやすい統計的な線形モデルによる「統計予測」や、複雑なデータの基礎となるパターンを機械が学習することによる「機械学習予測」を用いて需要予測モデルを完成させた。人間の感性や営業情報を加味した「人的予測」は、属人化するので可能な限り使用しないようにしている。

 花王ではこうしたモデルを業務に適用することにより、従前の人手によるやり方に比べて85%の予測精度向上を実現するとともに、前年度比で約25%の廃棄金額の削減を達成した。「後者は特に、当社におけるESG経営の推進に大きな貢献を果たしているものと考えています」と石渡氏は強調する。

 データサイエンスを駆使して、複雑なサプライチェーン上の計画業務におけるDXを積極的に推進する花王。今後も、需要予測モデルのさらなる精度向上に加えて、モデルの理解可能性を一層高めていくことにも注力していきたいという。

需要予測モデルの構築が花王の業務にもたらした成果

[クリックすると拡大表示されます]

講演 アスエネ

ESG規制・リスク対応が企業価値に
次世代SCMの実践的アプローチ

アスエネ株式会社
コーポレート本部
経営企画部
General Manager
萩原 康仁

 現在、欧米諸国を中心に、CSRDやCSDDD、欧州電池規則といった、サプライチェーンに関わる規制を取り巻く動きが活発化している。企業間でのサステナビリティ報告や、人権・環境に関する悪影響の把握と解消、サーキュラーエコノミーの推進など、最終的な目的はそれぞれ異なる。しかし、「サプライチェーンをめぐる様々な情報を取得して、自社並びにサプライヤーが抱える課題を分析し、そこで浮上した課題を解決する施策を講じて、必要なESG情報の開示を行うというステップを踏むことは、各規制に共通していると言えます」とアスエネの萩原康仁氏は指摘する。

 日本企業に求められる手順としては、「統合ESGデータ&報告プラットフォーム」を社内のハブにして、既存の財務システムと連携したESGデータベースを構築することだ。ダブルマテリアリティ分析などを毎年実施して更新し、監査に要するデータを蓄積して、将来の外部保証に耐える環境を整備することが肝要と言える。加えて、「リスクベース・デューデリジェンス体制」を構築し、サプライヤーの全層に展開。人権や環境にまつわるリスクマップを作成して、ハイリスクな領域では契約条項や監査、能力構築支援などをセットにした対策を目指していくことも必要である。

 さらに「製品循環設計×トレーサビリティ」への投資をプロダクト思考によって行い、製品のライフサイクルアセスメントとデジタルパスポートによる記録を実践し、サプライチェーン全体で共有する。製品の原材料からリサイクルまでの再生率をリアルタイムに計測し、再生材比率などをKPI化して資材購買条件に盛り込むといった活動も重要だ。「『データベース構築→デューデリジェンス体制構築→循環設計へのプロダクト思考反映』を実施していく体制を整えて、CSRD、CSDDD、欧州電池規則への対応を単一の運用フレームワークに収めていくことが急務と言えるでしょう」と萩原氏は強調する。

 アスエネでは、SCMにおける取り組みの全体像の中で、それぞれの基盤構築、サプライヤー調査の企画、実施、情報開示といった各ステップにまたがる支援を「ASUENE ESG」というクラウドサービスで行っている。例えば基盤構築ではガイドラインの策定、実際のサプライヤー調査の企画に関する調査票の評価ロジック作成、調査票の送付先の検討などを支援する。さらに、調査結果の分析や開示、リスクの特定、サプライヤーとの対話に関わる能力開発など、幅広い領域でサポートが可能だ。

 萩原氏は、「個々の規制の内容に即して、個別に対応を考えるのではなく、経営視点から統合的に対応していく体制を整えるべきです」と提案する。

持続的なサプライチェーン調達を実現するESG評価クラウドサービス「ASUENE ESG」

[クリックすると拡大表示されます]

アスエネ株式会社

講演 キナクシス・ジャパン

生成AIにより実現される
サプライチェーン全体の最適管理

キナクシス・ジャパン株式会社
ビジネスコンサルタント
久米田 泰佑

 サプライチェーンの管理がますます複雑化を遂げる今日、ESGへの配慮を行いながら、不測の事態に向けた迅速な対応策の策定や、新しい計画手法への変革が企業には求められている。例えば直近では、米国による関税問題がそうした不測の事態の1つとなっている。「関税問題の影響を分析するために、現場では分断化されたデータをつなぎ合わせるなど、大変な苦労されているというケースも多いはずです」とキナクシス・ジャパンの久米田泰佑氏は語る。

 「Kinaxis Maestro」は、サプライチェーンプランニングに必要な情報の管理を、単一のプラットフォームで実現する。これまでバラバラであった情報を瞬時につなぎ合わせて、全体を俯瞰し、直ちに最適な意思決定を図っていける。現在の計画とシミュレーションシナリオとの違いを比較したり、スコアカードによってシナリオを評価することも可能である。「さらに重要なポイントと言えるのが、生成AI(人工知能)を活用したサプライチェーンオーケストレーションの価値を提供していることです」と久米田氏は強調する。設計から製造、配送、輸送、返品といったすべてのプロセス間の断絶を排除し、混乱を事前に予測して回避したり、問題が起きた場合に迅速に対応していくことが可能となる。

 具体的には、何が起きているかを生成AIが感知(Sense)して、その影響に関わる予測(Predict)を行い、対応策等を提案(Prescribe)し、実行(Execute)していくという流れとなる。さらにこれら一連のプロセスは自動化され、結果を分析して意思決定を継続的に改善していくという学習機能も装備されている。

 「生成AIが、過去の需要実績に加えて、経済統計データや各種イベント、プロモーション、競合情報といった外部データを自動的に取り込んで需要予測を行い、需要予測が大幅に下がると予想されれば、その旨アラートを出して、人がそれを確認して先回りで対応できます」と久米田氏は紹介する。

 Kinaxis Maestroであれば、標準機能で4カ月、ある程度画面などのカスタマイズを行う前提でも8カ月という非常に短期間で導入でき、ERPなどを導入してサプライチェーン管理を行っているケースでも、直ちにそれを置き換えて新たな価値を享受できる。

 最後に久米田氏は「サプライチェーンの仕組みが、すでに企業間の差異化要因になっており、それが継続的に格差を膨らませています。そうした状況をしっかり踏まえ、決して後回しになることのない速やかな対応を、ぜひ検討いただければと思います」と訴える。

Kinaxis Maestroはサプライチェーンオーケストレーションの価値を提供する

[クリックすると拡大表示されます]

キナクシス・ジャパン株式会社

講演 Blue Yonderジャパン

AI活用とネットワーク化による
新時代のサプライチェーン構築

Blue Yonderジャパン株式会社
執行役員 ソリューションコンサルティング
シニアディレクター
白鳥 直樹

 組織の各部門や多段階の取引先を結びEnd-to-Endのサプライチェーンソリューションを提供するBlue Yonderは、米国アリゾナ州に本社を置き、2021年にパナソニックの事業会社の一部となった。日本では約70人体制で100社以上への導入実績を持ち、日本企業のサプライチェーン変革を支援している。

 同社は多くのサプライチェーン関連企業の買収を通じてサービスの範囲を拡大し、プラットフォーム化を推進してきた。Blue Yonderジャパンの白鳥直樹氏は、「複数のサービスを単一のプラットフォーム上で統合的に利用できるように投資を進めてきました」と説明する。「統合データクラウド&プラットフォーム」「AI主導の洞察とアクション」「ネットワーク全体にわたるEnd-to-Endの計画と実行」の3つの軸で事業を展開している。

Blue Yonderのストラテジーは不確実性の時代に向けたチャレンジを支援

[クリックすると拡大表示されます]

 白鳥氏は「多くの企業では計画、業務、物流の情報が部門ごとに閉じていて、全体では無理と無駄が発生しています。当社のストラテジーは全体での管理のコントロールを高度化します」と語る。

 「1つの企業の持つデータに加えて、パートナーやサプライヤーのデータ、IoTからのデータも単一のプラットフォームにつなぎ、お互いの制約を可視化します。顧客に商品を届けるために、意思決定のスピードと計画実行のサイクルの高速化を図っていくのが大きな特徴です」(白鳥氏)。

 さらに、大規模処理が可能な自律型AIを活用することで、迅速かつ正確な意思決定支援を実現している。白鳥氏は「予測AIと生成AIを組み合わせてより良い成果を引き出します」と話す。同社のAI技術を活用したプラットフォームでは、1日あたり約250億件の予測処理を行っている。これはGoogleの1日の検索数の約2倍に相当する規模だ。また、毎月数テラバイトという膨大なデータを分析・活用しており、AIなしでは処理できないほどの大規模な情報処理を実現している。

 専門性を持ったAIエージェントにより、正確でスケーラブルな処理が可能となっている。「欠品などKPIから逸脱した状況が検知されると、どこにどんな影響を与えるのかエージェントが状況を把握して分析し、ビジネス指標に基づいて選択肢を提案します。そして人の承認を得た上で一定の制限内に自動でアクションを実行します」(白鳥氏)。

 このような高度な対応が可能なのは、すべてのデータが単一のプラットフォーム上に統合されているためである。これからのサプライチェーンは、多段階のサプライヤーも結んでネットワーク化されリアルタイムでの状況把握が可能となり、AIによる提案を人が活用する形へと進化していく。Blue Yonderジャパンの取り組みは、そうした次世代のサプライチェーン管理の先駆的な事例と言えるだろう。

Blue Yonderジャパン株式会社

講演 富士通

データドリブンな意思決定を超えた
Decision Intelligenceの実現のために

富士通株式会社
グローバルソリューションビジネスグループ
Customer Acquisition&Engagement本部
エグゼディレクター
瀧澤 健

 地政学的リスク、労働人口の減少、生成AIの進化などサプライチェーンに変化をもたらす要因は多い。そこで求められるのは意思決定と迅速なアクションの実行だ。しかし、情報量と複雑さが膨大となり、かつ労働力が不足していき、今後は企業にとっての意思決定プロセス自体も確実に変化していく。

 「経験と勘に頼った意思決定が、データドリブンに変わりつつありますが、将来はAI(人工知能)と対話しながら自動的に意思決定する『Decision Intelligence』へと変化していきます」と富士通でサプライチェーンのコンサルティングをリードしてきた瀧澤健氏は語る。

 その変化を阻むのがデータの散在だ。サイロ化されたシステムごとにデータが分散し、社内外の情報やプロセスが分断されることで、経営の目標とのギャップが生まれる。これは業界を超えたサプライチェーン共通の課題だ。

 「この課題を乗り越えるには3つのフェーズが必要です。サイロ化されているデータやネットワークをつなぎ、データにもとづいた最適な業務プロセスをつくり、迅速な意思決定のための仕組みをつくることです」と瀧澤氏は指摘する。

 主要サプライヤーの工場で火災が起きた世界中に工場を持つ電材メーカーでは、データのサイロ化によって対応が後手に回ったという経験から全拠点のデータをつなぎ事業全体の最適化を実現した。ポイントは既存システムを活かして必要なデータのみをつなげたことだ。

 「富士通でもコロナ禍での大混乱を契機に属人化していた業務を見直し、必要なデータだけでシミュレーションして迅速な意思決定を行うようにしました。2週間かかっていた納期の回答を2日に短縮し、在庫を50%削減できました」(瀧澤氏)

 瀧澤氏が提案する進め方のポイントは、データをつなぐ業務プロセス改革から、既存のシステムはそのままに、経営効果につながる「意思決定レイヤー」を創設し、中長期目線と短期目線の両輪を回すことだ。それが効果をもたらす。

 富士通ではこうしたDecision Intelligenceを実現するSCMモデルを提供し、ユースケースを積み上げてきた。その数は70に及び、迅速なデータ統合とアプリケーション作成が実現可能だ。データをつないで1.5カ月で導入効果やインパクトが体感できるパイロットパターンもある。

 「大事なことは仮説まで含めてどういう業務にしたいのかを考え、具体的に実践していくことです」と瀧澤氏は話す。同社のベストプラクティスを活用しながらナレッジをためていくことがDecision Intelligence実現の近道だと言えるだろう。

富士通のSCMモデルは、経営を動かす判断力とサプライチェーンを貫く実行力を構築する

[クリックすると拡大表示されます]

講演 オープンテキスト

データの統合、自動化、連携で
サプライチェーンの高度化を実現

オープンテキスト株式会社
ソリューションコンサルティング統括本部
ビジネスネットワーク ソリューションコンサルティング部
リードソリューションコンサルタント
山本 惟司

 統合的情報管理ソリューションのリーダー企業であるオープンテキストは、OpenText Business Networkとして企業間をデータでつなぐソリューションを提供している。サプライチェーンのデータ統合では110万社を接続し、内部や外部のエコシステムをつなぎ合わせることで、多様なビジネスプロセスを横断する世界最大級のビジネスネットワークを構築している。OpenText Business Networkが提唱するのが「Connections Reimagined」だ。日本法人のリードソリューションコンサルタントである山本惟司氏は「今何をすべきか、何が重要なのかを考えて、データ接続による連携を再構築しようという思いが込められています」と話す。

 重要なのはデータや人をつなぐプロセスの「統合」、内部やパートナーのプロセスの「自動化」、人や役割の「連携」といった3つの観点での問題点をどう解決していくかだ。具体的にはITと業務の乖離(かいり)、データのデジタル化の不足、安全なアクセスなどが課題として挙げられる。

 「これらの問題を解決するために当社ではユーザーエクスペリエンス、生産性、自動化の3つのレイヤーで独自のフルスタックソリューションを提供しています」と山本氏は言う。各レイヤーで機能を持つソリューション群が用意され、サプライチェーン全体をカバーしている。

3つのレイヤーでサプライチェーンの可視化と効率化を実現する統合管理ソリューション

[クリックすると拡大表示されます]

 サプライチェーンコミュニティーの連携を強化するのが、ユーザーエクスペリエンスレイヤーで提供する「エコシステムコラボレーションポータル」だ。このポータルでは、エコシステムを安全に構築、管理、接続して、顧客向けサービスと共同プロセスを提供するコラボレーションプラットフォーム「OpenText Core Collaboration Access」が提供されている。

 「複数の企業で作業するために構築されたコラボレーションツールを使用することで、機能横断的およびアプリケーション横断的なプロセスを実現できます」と山本氏は説明する。例えば情報管理、アクセス管理、契約締結などに活用できる。

 さらに調達向けWeb-EDIの「OpenText Trading Grid Supplier Hub」を通じて、調達業務に関する情報交換をデジタル化し、サプライヤーのパフォーマンスとKPIを把握して継続的な改善を図ることが可能だ。

 山本氏は「サプライチェーンの高度化には、サプライチェーンデジタル化、サプライチェーンデジタルデータを利活用した可視化・分析・計画を行うサプライチェーンDX、サプライチェーンコマンドセンターによるサプライチェーンレジリエンス/エシカルサプライチェーン、自律性の高いサプライチェーンを実現するアダプティブサプライチェーンという4つのステップがあると考えています。当社のソリューションは、これらの実現を妨げるデータの品質、アクセス性、可用性、グローバル対応などの課題を改善し、データドリブン経営を支えるDX推進を実現します」と強調した。

オープンテキスト株式会社

特別対談 未来調達研究所

トランプ2.0時代に求められる
サプライチェーンの新常識を考える

未来調達研究所株式会社
コンサルティング本部長
坂口 孝則

 サプライチェーンの領域ではパンデミック、異常気象、地政学的リスク、トランプ政権の関税政策など、想定外のリスクが拡大している。調達やサプライチェーンのコンサルティングを手がける未来調達研究所の坂口孝則氏は「サプライチェーンの抜本的な見直しが求められています」と変化を強調する。

 坂口氏はキーワードとして中国依存の状態から脱却し、インドやベトナムといった複数の地域にサプライチェーンを拡大する「マルチショアリング」や「チャイナフリー」を挙げる。アップルのCEOティム・クックはトランプ政権の関税政策を受けて、インドやベトナムへの生産体制のシフトを表明した。

 「自国優先主義の動きが加速する状況にあっては、多様な構造のサプライチェーンを構築することが必要です。その上でサステナブルな調達を実現するには、どんな変化にも迅速に対応できる機敏なアジリティが要求されます」と坂口氏は語る。

 一方で問題になるのが日本における中小企業の存在だ。少子高齢化が進む中で中小企業の経営は深刻な状況にあり、倒産や廃業の件数が増えている。背景には事業承継問題や経営者の高齢化、後継者不足といった問題がある。

 日本経済を支えてきた中小企業の倒産や廃業は、サプライチェーンのサステナビリティにも大きな影響を及ぼす。坂口氏は「中小企業では依然として紙ベースやアナログでの業務が多く、付加価値を正確に算出できない状況にあります。大企業はこうした状況を理解して、手間やコストを軽減する動きを取るべきでしょう」と話す。

 遅れていると言われる中小企業のDXを促すことも重要だ。「いきなりAIを活用するところまでいかなくても、中小企業がデジタル化を進めることで付加価値を生み出すことができるようになり、大企業がセキュリティ対策を講じる上でもプラス要因になります」と坂口氏はDXのメリットを解説する。

 最近のサイバー攻撃の傾向としてサプライチェーンに対する攻撃で大企業との取引のある中小企業が狙われるケースが増えている。高いレベルのセキュリティ対策を取っている大企業より、セキュリティレベルの低い中小企業の方が攻撃しやすい。その弱点を突いてサプライチェーン全体への攻撃を仕掛けてくるのだ。DXはその弱点を強化することにもなる。

 長期的な視点では生成AIの活用も有効だ。坂口氏は「AIによって表現豊かな交渉ができるようになる可能性があるからです」とユニークな視点で見ている。先端企業では単なる価格の競争で終わらせない、条件を考慮して調達先を選定するようなシステムを導入している。坂口氏の下にもこうした上流の活動についての相談が増えているという。AIを活用することでこうした大企業の変化にも対応できるようになる。

 「AIによって日常業務をできるだけ楽に処理できるようにして、付加価値を徐々に上流に振り向け、より大きな戦略に携わるようにすることが重要です」と坂口氏は語る。これからのサプライチェーンでは、回ってきた要望を査定して終わりではなく、白紙に自分の考えを書いて提案できる力が必要になる。

 そこで求められるのはインテリジェンスだ。「色々な可能性を想定できるようになることが、真のアジャイルへの道を開きます。そこで必要とされる想像力を強化するために、日頃からアンテナを張り巡らせて様々なリスクに備えるべきです。それがサプライチェーン起点の強い組織体の実現につながります」と坂口氏は語った。サプライチェーンの革新の新常識は想像力だと言えるだろう。

ページトップへ