すべては、
未来につながっている

日経SDGs/ESG
会議 ~SX/GXとサステナブルファイナンスで実現する競争優位とネット・ゼロ~

日本経済新聞社と日経BPは2024年12月、「日経SDGsフェス in 日本橋」において「日経SDGs/ESG会議」を開催した。ESG経営をテーマにした前半は、企業に対する社会からの脱炭素などの要請が強まる情勢を踏まえ、再生可能エネルギーのさらなる活用やカーボンクレジットの評価、企業のガバナンス改革などについて議論した。建築分野の脱炭素を議論した後半は、家づくりやまちづくり、物流施設開発における取り組みや、建物のCO2排出量可視化などの先進事例を共有。2050年に向けた歩みを確認した。

※ この記事は2024年12月4日(水)に行われた日経SDGsフェスの採録です。 登壇者の肩書は講演当時のものです。

環境とビジネスの最前線 世界で進むサステナブル経営

白井 さゆり 氏

慶應義塾大学
総合政策学部 教授
白井 さゆり

予想以上の速さで進む気候変動の下で、大量生産・消費を中心とする経済の見直しが進む。企業の環境経営を促すために情報開示や金融が変わろうとしている。アジアをはじめ企業の経済活動を「グリーンの度合い」で分類するタクソノミーを策定する国が増え、中央銀行が融資情報の開示を促すようになってきた。

◆      ◆      ◆

 気候変動への対応は、企業の新たなビジネスチャンスの創出とイノベーションの推進につながる。世界の平均気温は産業革命前より約1.4~1.5℃上昇しており、現実の課題となっている。

 米国ではトランプ政権への交代により気候政策が揺れ動いている。パリ協定が目標とする2050年までの温暖化抑制(1.5~2℃以内)の達成は極めて困難な情勢だ。一方、バイデン政権下で成立したインフレ抑制法(IRA)により、再生可能エネルギーや電気自動車などの分野で中国に対抗する動きが進んだ。企業の自主的な脱炭素の取り組みや技術革新による再エネ導入は政権交代後も継続すると見られる。

 EUは環境と社会課題解決を推進するグローバルリーダーとして、企業サステナビリティ報告指令や銀行・保険会社への規制強化、タクソノミー導入など包括的な気候変動対策を実施する。アジア諸国でも気候変動対策の理解が進み、情報開示やタクソノミー導入、銀行規制の強化など積極的な取り組みが見られる。

 環境経営は全方位的なアプローチが必要で、企業は自社のビジネスが気候変動に与える影響を理解して対策を講じる必要がある。再エネや低炭素エネルギーへの移行のトレンドに乗って新しいビジネスチャンスを探るべきだ。気候リスクを成長機会と捉え、再エネや低炭素エネルギーへのシフトを戦略に組み込んで、具体的な行動と情報開示を通じて持続可能な未来を目指すことが重要だ。単に目標を掲げるだけでなく、具体的なアクションと開示が求められる。

気候変動への取り組み ネット・ゼロと経済成長両立の方程式

ファラ・タライエ 氏

NewNorm Design 社長
Matinno.co CEO
ファウンダー
ファラ・タライエ

佐々木 雅也 氏

国土交通省 住宅局
参事官(建築企画担当)付
建築環境推進官
佐々木 雅也

黒﨑 美穂 氏

Energy Impact Partners
Vice President
黒﨑 美穂

 2025年4月に改正建築物省エネ法が全面施行され、建築分野の脱炭素は本格化する。今回から「脱炭素と建築・都市の新しい成長(グリーンアーキテクチュア アクション)編」と題し、アクションこそが重要との認識でセッションを実施した。

 基調講演を行ったNewNorm Design社長でMatinno.co CEOファウンダーのファラ・タライエ氏は、「日本の建物は、つくる時と使う時は素晴らしいが、解体時は循環経済につながっていないのが弱点」と指摘。デジタル統合など3つのステップで改善することが重要と話した。

 国土交通省 住宅局 参事官(建築企画担当)付 建築環境推進官の佐々木雅也氏は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた国の目標を説明した。建物のLCA(ライフサイクルアセスメント)の検討体制を産官学で進めていること、CO2排出量の算定ツール「J-CAT」を開発したことを紹介し、LCA算定手法の確立・制度化に向けて関係省庁連絡会議を立ち上げ、「今年度中に制度化に向けたロードマップを示したい」と語った。

 米ニューヨークに本拠地を置くベンチャーキャピタル投資会社Energy Impact PartnersのVice President、黒﨑美穂氏は「現在の建物は2050年に残っている可能性が高い。今、建物を脱炭素化しなければネット・ゼロに間に合わない」とし、「その動きを加速するためにはイノベーションが鍵を握る」と指摘した。また技術開発のコスト負担について、米エネルギー省(DOE)やインフレ抑制法(IRA)による補助金の例を挙げ、「政府の役割が大きい」と話した。

 日経BP 総合研究所のメンバーによるパネルディスカッションでは、「タライエ氏の『NMF(Not My Fault、私のせいではない)』という言葉が印象に残った」との声が聞かれた。発注者がお金を出さないから、設計者が採用してくれないから、施工者が面倒だというからと責任を人のせいにする。これでは建築分野の脱炭素は進まない。問われているのは、われわれ自身の行動力だ。

■グリーンアーキテクチュア アクション2025年の予定

  • 2025年3月 勉強会① 参考にすべき世界の取り組み
  • 2025年6月 勉強会② ネイチャーポジティブと循環経済
  • 2025年9月 勉強会③ 取り組みを後押しする制度や枠組み
  • 2025年12月 シンポジウム開催
ファイナンス、エネルギー、
⼈的資本とESG経営
脱炭素と建築・都市の新しい成⻑
(グリーンアーキテクチュア アクション)編
  • ◆総論

  • ◆企業講演
    住友林業
    常務執行役員
    木材建材事業本部長
    細谷 洋一氏

  • YKK AP
    専門役員 技術研究本部
    建築・ウェルネス技術グループ 環境技術室
    齊藤 孝一郎 氏

  • スウェーデンハウス
    取締役常務執行役員 販売部門管掌(広報担当)兼
    西日本統括兼営業推進部長
    大川 保彦 氏

    スウェーデンハウス
    本社生産技術部 技術開発グループ 担当部長
    織田 茂 氏

  • プロロジス
    マネージングディレクター
    上席執行役員 管理本部長
    谷住 亜紀 氏


page
top