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⽇経SDGs/ESG会議
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ファイナンス、エネルギー、⼈的資本とESG経営

ガバナンス改革で経営を進化
変革こそ未来を切り開く鍵

B&DX
代表取締役社長
安部 慶喜

長期的な成長戦略を実現するには取締役会の改革が不可欠だ。将来の成長基盤となる無形資産への投資を続け、イノベーションを連鎖的に生み出す仕組みを構築することが競争力を高めることになる。コーポレートガバナンス改革を積極的に進めて、企業価値向上と持続可能な成長を担うのが取締役会の責務だ。

日本の資本市場は、かつては乗っ取り防止などを目的としてメインバンクが企業の株式を持ち合う「メインバンク・ガバナンス」が主流だった。バブル崩壊に伴う金融危機を経て、現在では株主が企業の資金の担い手となる「エクイティ・ガバナンス」へと移行している。

これは金融機関から個人や外国法人へと資本提供者がシフトし、経営戦略や意思決定の視点が、経営の安定性から将来の成長力へと重点を移したことを意味する。この変化は企業価値の評価基準に影響を及ぼし、非財務情報や持続可能な成長戦略が重要視されるようになった。

こうした変化に対応して、取締役会には企業の長期的な価値向上を監督する役割が求められている。2015年に制定された「コーポレートガバナンス・コード」(CGコード)は21年の改正を経て、取締役会の独立性と監督機能の強化を促したが、多くの企業では形式的な順守に留まって実効性のある改革が進んでいないのが実情だ。

日本企業が抱える課題

⻑期ビジョンを掲げる企業は多いものの、それを実現する具体的な⻑期戦略が⽋如している。それは取締役会の約3分の2の時間が個別の業務執⾏に関する報告と決定に費やされ、⻑期的な戦略の議論 がほとんど⾏われていないためである。加えて、⽇本企業の取締役会に占める社外取締役の⽐率は欧⽶に⽐べて低く、その役割も限定的であると同時に、経営経験者が少なく長期戦略に関する実質的な発⾔⼒が不⾜している。これらが⽇本企業の取締役会が抱える課題として指摘されている。

取締役会の改革を進めるには、いくつか方策がある。

1つ目は「監督と執行機能の分離」だ。取締役会は経営会議と異なる役割を担うべきであり、独立した立場からの監督機能を強化する必要がある。

2つ目は「社外取締役の役割強化」だ。取締役会における社外取締役の比率を増加させるとともに、経営経験を有する人材を積極的に登用して取締役会の多様性と実効性を高める必要がある。

3つ目は「長期戦略を議論する時間の確保」だ。取締役会は短期的な業務の執行よりも、長期的な成長を見据えた戦略を議論する時間を確保して、戦略実現に向けたロードマップを描くことに重点を置くべきだろう。

4つ目は「無形資産投資の加速」だ。日本企業は依然として有形資産への投資を重視する傾向がある。これを転換して人的資本、研究開発、IT基盤など無形資産への投資を強化する必要がある。

5つ目は「機関投資家との対話強化」だ。ステークホルダーとの戦略的な対話を通じて、企業の長期的な成長ストーリーを明確に伝え、株主価値の向上を図ることが重要だ。

このうち、長期戦略に基づく無形資産投資の重要性について詳しく説明したい。

長期戦略に基づく
無形資産投資の重要性

バブル崩壊後の戦略的な選択と集中無き事業整理は、短期的には経営の安定に寄与したが、⻑期的な成⻑⼒を損なう結果を招いた。

製品ライフサイクルが短縮する現代において、改善と改良を前提とした量的拡大モデルに依存するリスクは⼤きい。持続的に成⻑するために、イノベーションを連鎖的に⽣み出す仕組みの構築が求められる。

長期戦略に基づく経営が求められる
外部環境→ビジョン→戦略 バックキャストで成長と稼ぐ力獲得に至る道筋を具現化する 足下の取組みと長期戦略の繋がりを示す イノベーションの連鎖 イノベーションは偶然の産物ではなく、長期戦略で描き・練り上げる

(出所:B&DX)

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そのためにはまず取締役会が長期的な成長シナリオを描き、それに基づいた資源配分を行うことが重要だ。その上で取締役の指名や報酬、評価に関する透明なルールを設定して活動を継続的に評価し、改善を図ることで取締役会の責務を果たすことが求められる。

研究開発や人材育成、デジタル技術といった無形資産への投資は長期的な成長と企業価値を向上するための鍵であり、将来の競争力を左右する。

日本企業は、米国企業と比較して無形資産投資の割合が低いことが指摘されており、こうした分野への投資を進めていくことは企業価値向上に直結すると投資家からも期待されている。

無形資産への投資は単なるコストではなく、将来の成長力につながる基盤でもある。米国で時価総額が大きいアマゾンやテスラといった企業は、赤字でも戦略的な無形資産投資を続けて株価を向上させた成功例だ。日本企業は依然として短期的な収益に重きを置き、長期的な成長の基盤づくりで後れを取っている。

投資家は無形資産投資を重視する一方、日本企業は有形資産や短期的な株主還元に注力する傾向が強い。この意識の差を埋めるには、取締役会が投資戦略を再構築して、長期的な視点で資本効率を高める必要がある。

日本経済はバブル崩壊から「失われた30年」と呼ばれる停滞期を経験した。企業の改革が進まなければ「失われた50年」となる可能性すらあるだろう。これを防ぐためには、取締役会の実効性を高め、長期戦略の実現に向けた無形資産投資を加速させることが不可欠だ。

取締役改革を進めるための具体策

取締役会改⾰を進めるには、様々な具体的アクションが必要だ。 例えば、自社の重要アジェンダに照らして取締役のスキルや経験を明確にし、取締役会全体で必要な能⼒を補完する体制を整えることも重要だ。経営経験者を中⼼に独⽴社外取締役を増員し、研修や情報提供を通じて取締役会の実効性を⾼める必要もある。

取締役会のアジェンダを見直して長期戦略や無形資産投資に関する議論を優先するよう運営を改善することや、投資家との対話を通じて企業の成長戦略を明確に伝え、株主価値を最大化する取り組みを強化することも求められる。さらに取締役会議長をCEO職から独立させるなど、取締役会の独立性を確保して監督機能を強化することも重要だ。

ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営戦略に統合して、サステナビリティを重視した意思決定を行うこともイノベーション創出につながるはずだ。

取締役会改革に向けたアクション
責任・役割、スキル、対話、機構、運営、アジェンダ 取締役会の実効性を高めるために一体で変革を進める

(出所:B&DX)

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取締役会の変革こそ未来を切り開く鍵だ。ガバナンス改革を中心に据えた企業経営の進化が、持続可能な成長を実現する道筋になる。取締役会改革を通じて、イノベーションとサステナビリティの両立を目指すことが、今後の日本企業に求められる最重要課題だ。


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