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⽇経SDGs/ESG会議
〜SX/GXとサステナブルファイナンスで実現する競争優位とネット・ゼロ〜
脱炭素と建築・都市の新しい成⻑(グリーンアーキテクチュア アクション)編

建物のCO2を見える化する
算定ツール「One Click LCA」

住友林業
常務執行役員 木材建材事業本部長
細谷 洋一

建物の資材調達から解体まで(居住時を除く)に排出されるCO2である「エンボディドカーボン」。その法規制が各国で動き出し、CO2排出量を見える化するため、建築向けCO2算定ツールへの注目が高まっている。算定ソフトウエア「One Click LCA」の特長、エンボディドカーボン算定の課題について解説する。

住友林業グループは長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を掲げ、社会の脱炭素を実現する取り組みを進めている。脱炭素の鍵を握るのは「森」と「木」が持つ「CO2吸収と炭素固定」という2つの機能だ。

CO2削減でどうしても残るCO2は、CO2吸収によるオフセットが有効だが、日本の森林は高齢化によりCO2吸収量が低下している。このため、伐採・再植林による若返りが不可欠。伐採された木は炭素固定という重要な役割を果たす。木材は吸収したCO2を炭素として貯蔵するため、木材を建築や家具に利用すれば、街は巨大な炭素の貯蔵庫となる。

森林を育て、木材を流通させ、木造建築を推進する。廃材はバイオマス発電に使い、植林によって再び森林が育つ。このサイクルを回すことで木材需要を増やし、森林の価値を高めていく。それこそが住友林業のバリューチェーン「WOOD CYCLE」だ。

WOOD CYCLEは「森林」「木材」「建築」の3分野で展開する脱炭素事業が柱になっている。森林分野では、日本企業10社が参加し、出資総額約600億円の森林ファンドを組成。森林ファンドをもとに森林面積を拡大していく。IHIとの協業では、宇宙と地上から森林を管理し、質の高い炭素クレジットを創出していく。

木材分野では、木材コンビナートを開設し、木材製造を効率化して、国産材の競争力を高め木材利用を促進する。

建設分野では、環境に配慮したZEB/ZEH住宅と中大規模建物の木造化に取り組むとともに、建設業界における脱炭素設計の確立により他社・他者の脱炭素化に貢献していく。

住友林業はWOOD CYCLEを加速させ、「森林保有・管理面積50万ha」「木材コンビナート国産材使用量100万m3/年」「住宅供給戸数5万戸/年」の3つの目標を2030年までに達成する。

エンボディドカーボンの法規制

世界の産業別CO2排出量を見ると、建築セクターが37%を占める。そのうち建物の居住時に発生するCO2である「オペレーショナルカーボン」が約70%、居住時を除き建物の生涯に発生するCO2である「エンボディドカーボン」が約30%となっている。オペレーショナルカーボンは、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)などの普及により削減が進んでいく見通しだ。一方のエンボディドカーボンについては、その見える化と削減が脱炭素化への重要な動きとなる。

エンボディドカーボン算定に必要なこと
エンボディドカーボン算定=建築の一生涯の環境負荷の評価 調達、建築製造、建設、居住、修理・増改築、解体、各工程におけるCO2排出を削減

(出所:住友林業)

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エンボディドカーボンの算定には、建物の一生涯の環境負荷を評価する必要がある。資材調達・建材製造・施工・修繕・解体までを算定範囲として環境影響を評価しなければならない。

エンボディドカーボンの算定と削減に向けて、世界で法制化の動きが見られる。欧州ではノルウェー、スウェーデン、英ロンドンでCO2排出量の開示義務化がすでに始まっており、デンマーク、フィンランド、フランス、オランダの4カ国は建物ごとのCO2上限値を設定している。また欧州全域では共通のルール構築が進んでおり、28年から1000m2以上の建物に対して、30年からはすべての建物に対してエンボディドカーボンの算定・開示が義務化される見通しだ。

米国ではカリフォルニア州が一部の建物に対してCO2上限値を設定する規制を24年7月に施行した。カナダ・バンクーバー市では23年10月から建築許可申請の際に建物全体のCO2排出報告を義務化した。25年1月には報告だけでなく、ベースラインから10%または20%の削減が求められる見通しだ。

日本でもエンボディドカーボンの開示・削減への取り組みが活発化している。国土交通省は22年12月に「ゼロカーボンビル推進会議」を設置。23年5月の報告書で「2030年エンボディドカーボン算定義務化」に言及。24年10月には「ホールライフカーボン算定ツール(J-CAT)」正式版を公開した。これに加えて、建築BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及、BIMと連携したCO2算定も重要なテーマとして掲げており、今後そうして動きが進みそうだ。

東京都も25年4月から2000m2以上の建物を対象に、「建築時CO2排出量の把握・削減」を含む脱炭素化に向けた積極的な環境取り組みを建築主に求める。

今後は建築時におけるCO2排出量の算定・開示が重要になってくる。

One Click LCAの特長と課題

このように国内外でエンボディドカーボン算定のニーズが高まる中、住友林業はフィンランドのOne Click LCA社が開発した算定ソフトウエア「One Click LCA」を22年から日本で展開・普及させるべく努めている。One Click LCAはエンボディドカーボンを精緻に算定できるソフトウエアであり、現在世界170カ国以上で利用されている。

CO2の算定手順
資材数量を元に、短時間で精緻に建物のCO2を算定できます! One Click LCAで計算→建物のCO2排出量を見える化 ①建物に使用する資材数量×②資材の環境負荷データ

(出所:住友林業)

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住友林業は「One Click LCA日本版の販売とユーザーサポート」「One Click LCAによる算定受託サービス」「EPD(環境製品宣言)取得のためのソフトウエア販売とコンサルティング」という3つの業務を行っている。

One Click LCAの特長は3つある。1つ目はCO2排出量の精緻な算定の実現。2つ目は国際認証との高い整合性。3つ目は効率的なデータ算定が可能なことだ。

One Click LCAを用いたCO2排出量の算定は、資材数量の入力、資材ごとのCO2排出量である原単位の設定という手順で行う。資材数量の入力はBIMデータ、エクセルデータの取り組みが可能だ。取り込んだ資材数量に対して環境負荷データを紐付けする。One Click LCAでは資材ごとの平均的なCO2排出量である汎用データと、メーカー・製品ごとのEPDデータが使用できる。

そして最終的に資材数量と原単位を掛け合わせてエンボディドカーボンを算定し、建物ごとや部位別・構造別のCO2排出量を分析ができるようになる。

こうした「詳細算定機能」のほかに、「カーボンデザイナー3D」という機能名の「簡易算定機能」もある。

現状では、日本のエンボディドカーボン算定には大きな課題がある。算定に高い業務負荷が生じることと、日本市場に合致した原単位が不足していることだ。

これらの課題を解決するため、「資材数量データ整備の効率化(見積書作成システムなどとのデータ連携)」「日本市場に合致したISO準拠の原単位の整備・拡充(EPDの普及促進)」「BIMデータを活用した効率的なLCA(ライフサイクルアセスメント)算定」に取り組んでいる。

住友林業はOne Click LCAの提供を通じ、脱炭素設計の普及に貢献していく。


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