日本の「弱点」が「強み」に変わる 日米のトップランナーが語るAI時代のリーダーシップと組織変革
リーダーシップの本質は
「謙虚さ」にあり
多くの日本企業が、すでに何らかの形でAI活用を始めている。しかし、「AIによって、今後の経営やビジネスはどう変わるのか」「どのようにして変えていくべきなのか」という問いへの明確な答えを、多くの経営者が今なお探し求めているのではないだろうか。
とりわけ、AIという新たな仕組みを導入するにあたって、リーダーシップをどのように発揮し、組織全体を導いていくべきか。その最適解については、いまだ多くのリーダーが模索している最中だろう。
こうした変革の最前線に立ち、独自のAI プラットフォームによって業務の効率化や自動化を推進しているのがServiceNowだ。従業員体験や顧客体験(CX)の向上といった多様な価値を提供する同社において、副会長として経営の中枢を担うニック・ジットソン氏は、米国政府でのキャリアを経て参画した異色の経歴を持つ。
副会長
ニック・ジットソン(Nick Tzitzon) 氏
公的機関と民間テクノロジー企業、双方の組織運営を見てきたジットソン氏は、組織の規模や役職にかかわらず、リーダーシップの本質は「謙虚さ」にあると断言する。
「私が米国政府やテック業界で学んだ普遍的な真理があります。それは、どんなに大きな組織でも、どんなに高い役職に就いても、リーダーが『人々の生活や仕事をどう良くするか』を明確に示せなければ、人は決して付いてこないということです。リーダーが謙虚であればあるほど、人々がそのビジョンに共感し、追随してくれるポテンシャルが高まるのです」(ジットソン氏)
この哲学は、ServiceNowという企業の成り立ちそのものにも通じている。フレッド・ルディ氏は、以前勤めていた会社で、複雑すぎるテクノロジーにフラストレーションを抱える同僚たちの姿を見ていた。「もっと仕事を簡単にし、人々の生活を良くしたい」。その純粋な思いから、彼は小さなツールを作り、それが感謝されたことが創業の原点だという。
「創業者であるフレッドの想いは、今もServiceNowのカルチャーとして根付いています。組織が拡大すると、どうしても『あれも大事、これも大事』と優先順位が曖昧になりがちです。しかし、最も重要なのは『顧客は何を求めているか』、ただそれだけです。そこを貫き通すことが、企業の成長とイノベーションを支える原動力になります」(ジットソン氏)
ServiceNow Japan社長の鈴木正敏氏も、「日本の企業、とくに大企業においては、平均で1社当たり1000を超える業務システムやアプリケーションを利用しており、それらを複雑に組み合わせながら仕事を処理しなければならないことが、業務の効率化を妨げています。私たちServiceNowは、そうした複雑な業務をシンプルに整流化することで、働きやすい環境の実現を支援しています」と語った。
日本の「人手不足」は
AI実装の追い風になる
安野 貴博 氏
それでは、日本企業の現在地はどうなっているのか。AIエンジニア、起業家、SF作家、そして政治家という多角的な視点を持つ安野貴博氏は、日本の現状を「意識と実態のギャップ」という言葉で表現する。
「日本の経営層のAI導入への意欲は非常に高いと感じています。しかし、実際の投資額や現場での利用率を見ると、諸外国に比べて低いのが現状です。このギャップをどう埋めるかが課題ですが、私は日本には世界でもまれに見る大きなチャンスがあると考えています。それは『人口動態』です」(安野氏)
欧米において、AIによる業務効率化はしばしば「雇用の喪失」と直結する。そのため、従業員や社会からの抵抗感が強く、導入へのハードルとなるケースが少なくない。対して、生産年齢人口が減少し、ほぼ全産業で人手不足が深刻化している日本では、AIは「仕事を奪う敵」ではなく、「人手不足を補う救世主」として歓迎される土壌があるのだ。
この指摘にジットソン氏も強く同意し、米国における厳しい現実を吐露した。
「安野さんのおっしゃる通り、米国や欧州ではAIに対する『信頼の欠如』が起きています。多くの企業が人員削減の理由をAIに求めており、人々はリーダーがAIを選ぶのは自分たちを排除するためだと感じているのです。もし日本が、雇用を守りながらテクノロジーを享受し、生産性を劇的に向上させるモデルを確立できれば、それは世界でも稀有な成功例となります。他国を凌駕するスピードで成長できる可能性を秘めているのです」(ジットソン氏)