私たちがリスク災害対策チームに着任したときは、ちょうど世間がコロナ禍から元に戻っていくタイミングだったので、止まっていた防災活動も復活させていかなければなりませんでした。しかし、異動して間もない私たちは防災に関しては知識も経験もない、まさに防災1年生の状態。それでどのように学び、情報収集をしていこうかと悩んでいた時に、ちょうどリスク対策.comのメルマガで「東京都事業所防災リーダー」を知り、防災情報がワンストップで得られることに魅力を感じて即座に登録しました。
本社は当社最大の拠点なので、演習や訓練の企画は人事総務部と協力して進めていきました。まずは当社にある従来のツールやマニュアルの問題点を一つひとつ抽出し、改善していくことが不可欠だと考え、発災から徒歩移動までのフェーズを細かく分けて演習や訓練を実施し、議論を深めていきました。さらに、活動には担当役員の参加を仰ぎ、終了後に担当役員のコメント付きのレポートを社内のイントラネットに掲載することで社内への情報発信を強化。担当役員を巻き込むことで、防災活動の認知度の向上だけでなく、現場と経営層の防災に対する認識のギャップを埋めることにもつながりました。
消防署の協力を得た避難訓練や、帰宅抑制を想定して本社棟に宿泊する滞在演習、帰宅抑制解除演習、徒歩移動演習などを実施していく中で、リアリティーのある、多くの問題点が浮き彫りになりました。その中で滞在演習での経験を踏まえて作成したのがFirst Mission Box®(ファーストミッションボックス)です。これは発災時に私たち事業所防災リーダーが集まれなくても、本社棟に駆けつけた人がこのボックスの中にあるA4サイズの指示カードを見れば、迅速かつ確実に初動のオペレーションを実行できるようにするもの。「シンプルで分かりやすいツールができたので安心感がある」と役員や社員からは好評ですが、ここからが本番。First Mission Box®を使用した演習を推し進め、発災時の混乱が最小限ですむよう、さらにブラッシュアップしていく予定です。
企業の防災担当者はジョブローテーションによって数年で異動することもあるので、外部からいかに有益な情報を入手できるかが継続のカギに。事業所防災リーダーとして得られるタイムリーな公式情報や他社の取り組み事例などは大変参考になるので、それらを活かしながら今後も防災対策を強化していきます。
首都直下型地震などのリスクが高まる中で事業を拡大していくには、社員が安心して業務に専念できるよう、いざというときのマニュアルの存在が不可欠です。しかし当社は東日本大震災後に作成する話が持ち上がったものの、担当者が業務に追われ着手できないままでした。そうした中2023年に本腰を入れることになり、私が総務部に異動したタイミングでマニュアルを作成するプロジェクトの担当に任命されました。当時は社内に防災に詳しい者がおらず、私自身もまったくの素人だったため、まずはネットでリサーチ。そこでたどり着いたのが東京都防災リーダーのサイトでした。情報源の確かな公的機関が発信していることに信頼感を得て、わらにもすがる思いで登録。定期的に送られてくる「事業所防災リーダー通信」が非常に役立ち、過去に配信された分まで熟読して防災の知識を蓄積していきました。
マニュアルの作成にあたってまずは自社をとりまく状況を調査。その結果、建物にとどまるケースと退避するケースの両方を想定して進めることになりました。それぞれで起こり得る被害や危険を想像しながら初動を検討し、社内の備蓄品や退避時に持ち出す防災グッズを選定。同時に、避難導線を確保するため、社内の障害物の片付けや倒壊リスクのあるキャビネットなどの固定も行いました。さらに退避する場合に備えて近隣の帰宅困難者向けの退避場所をチェック。念のため東京都の総務局にも問い合わせ、建物に被害が出てその場にとどまることが危険であるなどやむを得ない場合は、社内ではなく、退避場所などで帰宅困難者対策条例を守ることになっても問題のないことを確認しました。
防災リュックは、退避場所まで実際に歩いて道中や退避場所で起こり得ることを想定し、寝泊り用のグッズがセットになっている市販のものを購入。さらに1人に1つ、袋を配布し、薬など個人的に持ち出したいものを入れ、それも詰めています。
マニュアル作りと並行して、普段出張で出払っている社員が多い当社ならではの取り組みとして、全社員が集まる年に2回の研修会のタイミングで防災に関する情報を周知したり、救命救急講習や各種訓練は回数を増やして全員参加できるよう工夫したりしました。また「事業所防災リーダー通信」の内容を活用して、社員の知識のアップデートや防災意識の向上に役立てています。マニュアルが完成して、まずは「安心した」と評価されたので、今後は実際にマニュアルを用いた初動訓練を実施していきたいです。