令和6年度事業所防災リーダー優良企業に認定された4社に学ぶ 従業員や利用客を守るための防災の取り組み

「事業所防災リーダー」はまさに防災の旗振り役。いざというときのための避難訓練や、「帰宅困難者」を作らないための準備や備蓄、また日頃から防災や減災のための情報収集を心がけて、事業所をできるだけ安全な避難場所にするための工夫を重ねている。その取り組みを前号に続いて2社紹介する。
寺井さん/原島さん/入澤さん
大規模事業所部門 優良企業
株式会社カカクコム
お話をお聞きした“事業所防災リーダー”
人事部総務本部 総務部 部長 永井健一さん
マネージャー 林田豊さん
防災担当 高見明子さん
「価格.com」「食べログ」「求人ボックス」など、さまざまな領域でインターネットサービスを提供している株式会社カカクコムは、この15年で連結社員数が約5倍に増え、企業の成長に合わせた防災への取り組みが不可欠になっている。SNSやDX、各種アプリなども駆使して、従業員と来客者をいかに安全に避難させるか。その工夫を取材した。

事業所防災リーダーに登録して得られた
今の時代にアジャストした防災情報

当社では全従業員の半数以上となる、約1000名が渋谷の商業ビル内にあるオフィスで働いています。コロナ禍を経て、現在はオフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワークになっており、誰が出社しているか一見しただけではわからない状態です。今、大きな地震が来たら、300人規模の従業員数だった東日本大震災のときのような、全員の顔が見える避難活動は望めません。そんな中、今の時代に合わせた、より実効性のある防災対策の実現方法を探す過程で出会ったのが、東京都の事業所防災リーダーのサービスと優良企業の表彰制度です。

そこで、もともと社内に81名いる自衛消防隊を全員、すぐに事業所防災リーダーとして登録。防災情報の発信はマニュアルの開示だけでは形骸化しがちですが、「事業所防災リーダー通信」に掲載されている信頼性の高い防災対策コンテンツを社内の掲示板やポータルサイトで共有することが、従業員の防災意識の向上に非常に役立ちました。また他社の防災事例を得られるのもメリットで、その情報をもとに、例えば備蓄食品の中にアレルギー物質不使用のマジックライス(非常食)を含めた方が良いというノウハウも学ぶことができ、すぐに実践しました。

帰宅する人のための帰宅支援セットと
会社にとどまる人のための備蓄

防災の中でも特に注力したのが、帰宅困難者を作らないための取り組みです。従業員の住まいの最寄り駅から職場までの距離が10キロメートル圏内の場合、安全が確認できれば帰宅できる可能性があると考え、帰宅支援セットは余裕をみて15キロメートル圏内までの従業員分と、来客者用も用意。いつでもすぐに持ち出せるようリュックに入れて、各フロアの個人ロッカー上部に保管しています。中には三角巾、防災ラジオ、スマートフォン充電器、非常食などが含まれています。

10キロメートル以遠に住んでいる従業員は会社に寝泊まりできるように、3日分の食料や簡易トイレなどを余裕をみて備蓄しています。もちろん、ご家庭の事情など、本人の強い希望があれば帰宅する場合もあると思うので、帰宅可否の判断をどうするかは、これからの課題の一つだと思います。

さらに災害発生時に外出や休日で従業員がオフィス外にいる場合に備えて安否確認システムを構築。本人、家族の安否、出社可否、母屋の状況、自由記載の質問項目を設定し、メール、LINE、アプリから報告してもらうことで、従業員だけでなくご家族の安否も確認できるようにしています。また、実際に情報を入力し報告をしてもらう「安否確認訓練」も人事部主導のもとで行っています。

今回、事業所防災リーダー優良企業認定制度に応募するために、その審査項目のひとつ一つを確認することが、防災対策の足りている部分と足りない部分を見直す良いきっかけにもなりました。まだまだ不十分な部分を強化していくことが、これからの私たちの課題です。

帰宅者に必要なアイテムを収納
帰宅者に必要なアイテムを収納。定期的に見直しを行っている。
中小規模事業所部門優良企業
積水工業株式会社
お話をお聞きした
代表取締役 金子信次郎さん
1965年の創業以来、人にとって欠かせない「水と空気」を中心に、給排水衛生設備工事や空調換気設備工事、消防・電気設備工事などを請け負っている積水工業株式会社。東日本大震災で仙台支店が被災したことや、事業を通して痛感するインフラ復旧の重要性から、自社での防災の取り組みも強化している。
中小規模事業所部門優良企業

防災リーダーが取り組む姿を見て
高まった社員の関心

昨今の地震災害などで大きな課題になるのがインフラの復旧です。私たち積水工業は防災関連企業ではありませんが、インフラを支えている企業だという認識があります。だから万一の災害のときには、まず私たちの身の安全を確保して、できるだけ早く被災場所のトイレや水道の修理に向かえるようにしなければならない。そのために、本社を移転する際には備蓄品を保管するスペースを確保し、当社総務部の栢木早苗さんを事業所防災リーダーに登録して、防災への取り組みを強化しています。

防災リーダーはあらゆる被災状況を想定しつつ、社員とのコミュニケーションをとってくれる人が最適だと思います。栢木さんをリーダーに任命したのは大正解で、彼女が備蓄品の整理をしたり、避難用具の準備をしたりする姿を垣間見ることで、社員も防災に関心を持ち、いろいろと意見をいってくれるようになりました。もちろん、社長の私もその一人です。栢木さんが「事業所防災リーダー通信」から得た情報を社内報などを通して社員に紹介してくれることは非常に有効で、今後はこうした情報やノウハウを生かして地域の防災拠点としても機能し、高齢者などの支援もできるように周囲との協力体制を整えていきたいと思っています。

フリーアドレスの良さを生かして
防災用品の設置を万全に

弊社の仙台支店が東日本大震災で被災し、その復旧支援に駆けつけた先で見た光景は今でも忘れられず、それが私の防災意識の高まりにつながっています。

災害時には一刻も早く安全に避難することが大切だと痛感したので、2022年にフリーアドレス方式を採用したのをきっかけに、社内のどこに座っていてもすぐにヘルメットをかぶり、防災用品の持ち出しができるように目立つところに配置しました。

また、フリーアドレス化の成功と防災対策の強化は、どちらも情報の共有化が鍵に。情報や物資の保管が属人化してしまうと、会社の大切な資源をいざという時に十分に生かすことができなくなります。今回、フリーアドレス化をきっかけに、ヘルメットや災害時持ち出しグッズの共有化と災害情報の共有化を行ったことで、社員の防災意識が高まるという効果を得られました。

オフィスイメージ
設備工事の会社としては珍しいフリーアドレス方式のオフィス。オープンなスペースのあちこちにヘルメットなどを入れた青い袋が点在している。

企業は新陳代謝で若い世代へと交代していきますが、事業所防災リーダーを中心に防災意識をしっかりと引き継ぎ、いざというときに備蓄などをいかに活用できるかが大切だということを周知していきたい。「防災」はこれからますます大切になってくる、新しい「企業価値」だと思っています。

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令和6年度事業所防災リーダー 優良企業に認定された4社に学ぶ 第1弾
従業員や利用客を守るための防災の取り組み