TOPPANは、2023年10月に社名から”印刷”を外し、多様な事業への挑戦と変革を続けてきた。そして、DX(デジタル変革)、CX(顧客体験変革)、EX(従業員体験変革)の3つの変革サービスから成るBX(ビジネス変革)支援事業では、顧客企業の持続的な成長をけん引することで継続的なビジネス化を図っている。

変革の基盤となるDX投資のための開発支援を起点に、その投資を成果に変え、収益機会を拡大するためのCXを強化。さらに、事業運用に必要なリソースを提供して持続的成長を支援するEXによって、ビジネスの変革を実現する。

TOPPANは、”場”を介した来館者とのコミュニケーション活性化パートナー企業として、顧客起点の基本構想設計から持続的なにぎわいと収益を生むCXを構築している。
具体的にどのような取り組みが行われているのか。新たに開業が進む都心型複合施設、Shibuya Sakura Stage(東京・渋谷)、そしてTAKANAWA GATEWAY CITY(東京・港)。この2か所におけるCXの考え方を取り入れた施設運営について、その一端を見ていこう。
2024年夏にまちびらきが行われた東京・渋谷の大規模複合施設「Shibuya Sakura Stage」では、施設のファンづくりのためにまちの魅力発信を担う。イベントスペースの収支計画・戦略立案から運営までトータルでプロデュースし、開業後も長期的に東急不動産が推進するまちづくりに伴走している。プロジェクトの経緯や成果、今後の展望について、東急不動産とTOPPANの担当者が語り合った。
CX
マネジメント
事例



江原 清仁氏(以下、江原) 渋谷は遊びに来る人、学びに来る人、働きに来る人など多様な人が集まる、エネルギーに溢れた街です。駅から近い距離に住宅街もあり、生活している人もたくさんいます。文化や流行の発信地でもあり、そんな魅力ある渋谷に寄り添いながら、街の発展とともに、我々東急グループも成長してきました。
2024年夏にまちびらきを行い、本格的に営業がスタートしたのが、大規模複合施設の Shibuya Sakura Stage です。再開発にはいくつかの目的がありますが、中でも桜丘エリアは国道や線路で分断されているため、駅からの動線が複雑になっていたことが最大の地域課題でした。再開発にあたり、国道デッキや移転されたJR渋谷駅の新南改札口とShibuya Sakura Stageの3階をデッキで繋げたことで駅周辺の回遊性が向上し、来街人口はコロナ前と比べて1.7倍以上増えたことが、民間企業の調査で分かっています。
2024年夏、再開発によって誕生したShibuya Sakura Stage は、オフィス、商業施設、住宅などで構成される大規模複合施設。JR渋谷駅に直結する好立地からビジネスと生活の新たな拠点として注目を集めている。(写真提供:東急不動産)
江原 「Shibuya Sakura Stage」を訪れる人たちにどう楽しんでもらい、賑わいを作るかを考えていた中で、特にお客様の体験価値をいかに施設の中に埋め込めるかを思案していました。その際に丸の内にあるTOPPANさんの共創拠点、NIPPON GALLERYを見させていただいたことで、何か一緒にできるのではないかというインスピレーションが湧きました。
山下 薫氏(以下、山下) お声がけいただいた時には、Shibuya Sakura Stage の施設の躯体はほぼ決まっていたので、CXマネジメントの領域をご提案させていただきました。リアルとデジタル両方の面からCX体験を提供できること、また「顧客起点」で施設の運用を考えるというこれまでの培ってきた強みを、このプロジェクトでも生かせるのではないかと考えました。
江原 「あれもできます!」「これもできます!」と非常に熱心に提案してくださったんです。その熱意があったことがまず大きかったですね。(Shibuya Sakura Stageは)構想から竣工まで20年以上かけてきた大規模プロジェクトですので、開業までに多くの課題を解決していかなければならないことは容易に想像できました。それでも最後まで一緒にやり切れるパートナーかという点が我々には一番のポイントだったんです。TOPPANさんは技術もあり物理的なリソースも持っています。その点ももちろん魅力ではありましたが、そこに加えて困難に負けない熱意と粘り強さを感じたのがパートナーに決めた最大のポイントでした。
山下 暑苦しいと言われたりもします(笑)。もともと印刷事業ではあらゆる業界のお客様とビジネスをご一緒し、これまで2万社以上と取引をさせていただいております。そのため、TOPPANにはお客様へ寄り添って、伴走するようなDNAが染みついているのかもしれません。
江原 プロジェクトの関係者が多いので、コミュニケーションに多くのパワーが必要でした。関係者1人1人に理解してもらうプロセスからTOPPANさんには力を貸していただきました。依頼している業務の範囲も非常に幅広く、CXマネジメントをベースにした施設の運営からイベントの企画運営、記者発表などのメディア対応まで、多岐にわたっていました。それをワンストップで引き受けていただけたことが非常にありがたかったですね。
山下 オープン時はたくさんPRしたり広告を打ったりするため、そこがピークになってしまうケースもあります。でも、私たちは開業がゴールではなく、そこからが大事だと考えて長期的に伴走させていただくことを意識してきました。開業したからといってすぐにファンが増えるわけではありません。開業前から地域のコミュニティ形成に力を入れながら、関わる人たちをつなげていく取り組みを続けています。



イベントスペースの運用を進めるにあたり、TOPPANと東急不動産ではイベント実施だけでなく施設の特性や利点を生かした企画提案、検討なども協力して進めている。
江原 まちびらき以降、施設の認知度が着実に上がっているのを実感しています。回遊性の向上により、お客様からも「駅からの移動がスムーズになった」という声が寄せられています。また、地元と連携したイベントを実施するなど、地域との一体感も出てきています。
山下 大事なのはハコよりも、人やコミュニティだと思います。これまでに様々なイベントを企画・運営してきましたが、1つのイベントが盛り上がったということよりは、この場所に集まり、施設を使う人たちがどう育っていくのか、それが成果になるのではないかと思います。まちづくりは1~2年で完成するものではありません。長期的な視野で、東急不動産さんと一緒に、ここに集まる人づくり、コミュニティづくりに力を入れていけたらと思います。
江原 5年、10年かけて、Shibuya Sakura Stage をさらに成長していく施設に育てていきたいですね。また、このプロジェクトをTOPPANさんと一緒に手掛けられたことで、どんどんイメージが湧き、ここからさらにもっと面白いことが一緒にできるのではないかと感じています。今後は、Shibuya Sakura Stage で実装したデジタル×リアルの仕掛けは勿論のこと、スポーツやライブといったエンターテインメントの場や、地域の経済の核となる産業の集積などについても、当社の都市開発のノウハウを活用した取組みを全国に展開していきたいと考えています。
山下 Shibuya Sakura Stage のファンや施設に関わる人がもっと増えていくための、ソフト面からの支援は続けていきながら、渋谷に留まらず、東急不動産さんが手掛けられている全国地域のプロジェクトの取り組みを、一緒に進めていけたらと思っています。その際にはCXマネジメントから一歩進み、顧客データ活用などのDXも駆使しながら、東急不動産さんの事業の利益が最大化できるようなご提案もしていきたいと思います。
