2025年3月に先行部分がまちびらきしたTAKANAWA GATEWAY CITYは、JR東日本の田町車両センター跡地に開発・建設された開発プロジェクトだ。約9.5haもの広大な敷地にまったく新しい街を創出するこのプロジェクトは「エリアマネジメント」の考え方に基づくまちづくりが進められており、TOPPANも一部施設の企画・運用までをトータルで担当している。まちびらき間もないTAKANAWA GATEWAY CITYの現在と今後について関係者から話を伺った。
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原 幸弘氏(以下、原)「エリアマネジメント」とは、地域やその周辺の人々と一緒にそのエリアの価値や魅力を向上させる取り組みです。TAKANAWA GATEWAY CITYでは、鉄道用地の跡地を活用したまちづくりに取り組んでいます。このエリアは車両基地が大きな面積を占めていたこともあり、東西の分断が課題でした。地域の人と連携しながら、賑わい創出、安心・安全なまちづくり、快適性向上など、多様な観点からこのエリアをより良くしていく活動を進めています。
このプロジェクトの一環として、「Gateway Studio」という情報発信施設を立ち上げました。Gateway Studioは高輪ゲートウェイ駅の改札を出てすぐの場所にあり、賑わいが外に伝わるようにあえてガラス張りのオープンな設計になっている建物です。駅を利用する地域の方々がふらっと立ち寄れる施設で、地域との接点として機能しています。単なるインフォメーションセンターではなく、この街に関わる様々な方がこの場所で交流し、高輪エリアの魅力を発信できるような場所にしたいと考えました。


約9.5haもの広大な敷地に建設が進められているTAKANAWA GATEWAY CITY。25年3月27日にまちびらきをし、現在も26年春のグランドオープンに向けて開発が進められている。(写真提供:JR東日本)
原 この街は「100年先の心豊かなくらしのための実験場」がテーマなので、できる限り新しいことに挑戦していきたいと考えていました。TOPPANさんのご提案がとても挑戦的で、新しく、面白い何かが生まれそうだなという可能性を感じました。
小田切 咲子氏(以下、小田切) Gateway StudioではTOPPANさんと一緒に案内役となるコミュニケーターを選ばせていただき、実際に今、周辺エリアの方を中心とした11名のコミュニケーターが働いています。そのほかにも、たくさんアイデアを出していただき、既成概念にとらわれない、自由で柔軟な発想に魅力を感じました。
谷口 千絢氏(以下、谷口) 街としてのテーマコンセプト(新たな/実験場)がある中で、Gateway Studioが地域の方々とうまく融合できるような、単なるプロモーション施設でなく、これまでにない情報発信施設になると面白いだろうなと考えました。そして地域の方と作り上げる企画活動の種「BEANS」や街の人の高輪でやってみたい「WISH(願い)」を集めるなど、様々な企画をご提案しました。さらにTOPPANとして創業当初からこれまでに多くの企業と築き上げてきた繋がりを施設運営にも生かせると考えました。
木村 和也氏(以下、木村) そもそも、TOPPANは印刷物によってどう情報を加工して伝えるかという仕事からスタートしています。長年培ってきたノウハウを生かし、特にこの数年は企業と連携して、生活者と企業をつなぐようなイベントの企画・運営やまちづくりによる情報発信にも力を入れてきました。印刷物でも施設やイベントであっても、情報をいかに生活者に届けるかという根幹は同じです。


Gateway Studio で行われている「BEANS」は、街のメンバーによる"部活動"のような取り組み。①WISHカードに「やりたいこと」を記入し(写真左)、②書いたカードを飾り(写真右)、カードを見て共感した人が集まればBEANSがスタート、という流れで進められる。街の方々の小さな「やってみたい!」をきっかけに共感が集まり、自発的なイベントへと育つ仕掛けとなっており、Gateway Studioを起点に、街の人々、企業をつなげるきっかけを創出している。
原 「BEANS」や「WISH」というアイデアは出てきたものの、それをどう表現して高輪エリアの魅力を発信していけばいいのか、試行錯誤の連続でした。
谷口 クリスマスの日も4時間くらい議論しましたよね。高輪の良さをどう表現していくのか、そのためにGateway Studioをどんな施設にするのか。スタートから一番重要な軸になる部分を一緒に考えさせていただき、言語化していくことは大変なプロセスではありましたが、非常に有意義で楽しい時間でした。
木村 (3月27日に)Gateway Studioがオープンした瞬間は施設の前に行列ができて、「いよいよ始まるんだな」というワクワク感がありました。街の人たちもここがオープンするのを楽しみに待っていてくださったのだな、と思うと嬉しかったですね。
小田切 オープンからまだ短い時間ですが、BEANSやWISHが想像以上にたくさん集まっていて、このような仕掛けづくりは私たちだけでは決して成し遂げられないことだったと感じています。これから、TOPPANさんと一緒に集まったBEANSやWISHを育てていけるのを楽しみにしています。
木村 ここでうまれた小さな活動が、街を象徴するイベントや、街をより大きく巻き込んだ取り組みに成長していくようサポートしていきたいですね。
施設の企画から運営までを担当するGateway Studio。高輪ゲートウェイ駅 北改札前に位置し、TAKANAWA GATEWAY CITYにおける情報発信拠点としての役割が期待される。(写真提供:一般社団法人 高輪ゲートウェイエリアマネジメント)
小田切 街の人たちの願いを実現していく場所を数年構想し続けてきて、ようやく形になりました。企業や個人が集まり、さまざまな種を育んでいける場所にしていきたいと思います。
原 エリアマネジメントやまちづくりは1つの事業者だけで実現できるものではなく、地域の人、企業などと一緒につくっていくものです。建物が完成して終わり。ではなく、コミュニケーター、地域の人たち、企業など、ここに関わる人たちみんなでつくる1つ1つの取り組みの先に、より良いまちづくりがあるのだと思っています。
谷口 街のみなさんから集まっているアイデアの種を育てていくことが重要だと思っています。施設を利用する企業と街の方々どちらかが優先されることなく、融合できるようなしかけを創っていければと思っています。私たちTOPPANは、「街を伝える・つなぐ・動かす」存在になりたいと考えています。
木村 多くの施設開発やまちづくりにおいて、エリアマネジメントは運用の視点で持続的な設計にならないケースが目立ちます。価値が可視化されず、ランニングコストも先細りすることが多いです。さらに、施設開発においてはハードとソフト、設計と運用の間にズレが生まれ、本来のポテンシャルを活かしきれないケースが見受けられます。TOPPANはこれまで、様々な業界のマーケティング支援を通じて、企業と生活者の「橋渡し」役を担ってきました。その知見を、まちづくりの現場にも応用しています。TOPPANは、まちづくりの新たな価値をともに育てるパートナーとして、“愛され続けるTAKANAWA GATEWAY CITY”を実現していきます。
2つの対談、渋谷と高輪という異なるエリアでの事例からわかることは、大規模再開発プロジェクトは単なる箱物開発ではなく、そこで生まれる体験価値と多様な関係者との共創を重視する姿勢である。Shibuya Sakura Stageにおける賑わいの創出による顧客体験の向上やTAKANAWA GATEWAY CITYにおける街の方々との共創と交流拠点の創出。今後のまちづくりにおいてはハードとソフトの両面を統合的にデザインし、街の方や利用者の視点に立った体験価値の創出が不可欠となってくる。
そして、こうした持続的な賑わいづくりや街に根差したコミュニティ形成を進めるうえで、TOPPANのように多様な業界との知見やコミュニケーション能力を持ち、様々なプロジェクトで培われたノウハウを有する企業との共創が今後のまちづくりで重要な役割を果たすと考えられる。
