株式会社丸亀製麺
代表取締役社長

山口 寛

従業員の家族にフォーカスした様々な取り組みで丸亀製麺は「心的資本経営」を実現する 従業員の家族にフォーカスした様々な取り組みで丸亀製麺は「心的資本経営」を実現する

トリドールホールディングスが掲げる「心的資本経営」は、
人の心に着目し、従業員のハピネスと顧客の感動を追求する新しい経営思想だ。
その実現のため丸亀製麺では、従業員の家族に着目した新制度の導入を進めている。
人が活き活きと働く環境こそが、感動の循環を生むという山口社長の哲学を紹介する。
従業員の子育て支援に参画する狙いについて、同社の山口寛代表取締役社長に聞いた。

2025年9月、トリドールホールディングスはグループを挙げて、「心的資本経営」への挑戦を宣言した。この「心的資本経営」とは、人の感動や幸せといった心に着目し、その心の力を最大限に生かして企業の持続的な成長を追求するものだ。

もともと顧客への感動体験の提供を主軸に据えてきた同社は、改めて自身の経営思想に向き合い、顧客の感動創出には、店舗で働くすべての従業員の幸せが不可欠であるという結論に至ったという。

では、具体的にはどのようにして「心的資本経営」を実践するのか。そのひとつの答えとなるのが、グループの中核企業である丸亀製麺が導入した「家族食堂制度」だ。従業員の15歳以下の子どもを対象に、丸亀製麺で利用できるプリペイドカードを配布するというものだ。金額は子ども一人あたり最高月額1万円まで提供される。

働く姿を子どもが見ると
従業員の誇りにつながる

「今のところ、対象となるお子様の数は1万3000名あまりを想定しています」(山口寛代表取締役社長)

親子での利用も可能で、子どもだけで利用する場合は、親が勤務する店舗で、親が勤務する時間帯に限定される。なぜ子どもが対象なのか。この制度に込めた思いを山口社長はこう語る。

「会社として従業員の子育て支援に参画することで、従業員のハピネスを増やしたいと考えました。最近は食料品の価格が上がり続けていることもあり、従業員には『ここで働いていれば、子どもは食べるものには困らない』『帰ってからあわてて食事の用意をしなくてもいい』と安心してもらいたいです」

この制度によって、親御さんが働く姿を子どもに見てもらいたいとも言う。

「すでに従業員のお子様は小さな頃から店舗で食事をしていますが、単にうどんを提供するだけでなく、体験の機会を増やしたいと思いました」

山口社長の脳裏には、あるフードコートの店舗での光景がよみがえっている。

「お子様がフードコートから、親御さんが働いている様子を見ているのです。親御さんとしても、目の届くところに我が子がいることで安心して働けるでしょうし、他のスタッフも温かく見守っています。親御さんが急に休むことになっても『あの子が熱を出したなら仕方ないね』とも思うようになります。また丸亀製麺では、親子で働いている従業員も多いのですが、子どもの頃から店舗に慣れ親しんでもらうことで、いずれはそのお子様も、丸亀製麺の運営に力を貸してくれたらうれしいなと思っています」

新制度の社内からの反響は上々で、既存従業員の定着、子育て世代を中心とした新規従業員の増員も期待される。

家族との時間をつくるため
丸一日店を閉めるという決断

実は、丸亀製麺の“従業員の子どもファースト”の姿勢は、昨日今日からのものではない。2012年に始め、コロナ禍でしばらく休止していた、地域の子どもたちにうどんづくりを体験してもらう「こどもうどん教室」の再開に当たって、まずは従業員の子どもから参加を募っていた。更に今年に入り、従業員の家族にフォーカスした制度の運用を開始した。

「丸亀ファミリーホリデー」だ。今年7月30日、フードコート店など一部を除いた全店舗で“従業員が働く幸せづくりの一環として”終日休業としたのだ。

「もちろん、休業することでその日の売上はなくなります」と山口社長。「しかしそれ以上に、従業員が家族と過ごせる日が増えるほうが価値があると判断しました。私も店舗出身で、店長も経験しているのでわかるのですが、飲食店で働いているとなかなか休みを取りにくいのです。だからこそ、私たちから変わることで、新しい飲食店の姿を、従業員とその家族、さらには世の中にも示したいと思いました」

この制度も従業員から好評で「従業員一人ひとりの満足度だけでなく、店舗の団結力も高まったと実感しています」と山口社長。

今後は夕方からを休業とする「丸亀ファミリーナイト」をクリスマスイブに実施し、翌年以降も、季節のイベントなどに合わせて「丸亀ファミリーホリデー・ナイト」を随時設定していく計画だ。さらに将来それらの実施日時を、各店舗が決められるようにもしていくという。

「たとえば岸和田(大阪府)の店舗なら、家族でお祭りを楽しみたいからと、だんじり祭りに合わせて丸亀ファミリーホリデーを設定するというように、店舗ごとに判断をしてもらえればと思います」

いつを休みにするかを店舗で話し合う様子は、まるで家族だ。丸亀製麺が指す「家族」や「ファミリー」という言葉の範囲は、従来の概念を超越している。そして、それぞれの家族やファミリーはどれも個性を持っている。

「もともと丸亀製麺は、それぞれの地域に根ざす店舗が集まってできています。従業員とお客様がすっかり顔見知りで、雑談を楽しんでいる姿を見かけることもよくあります」

従業員が顧客と会話を交わすことは、山口社長にとってマイナスの対象ではなく、そうあってほしいという理想の姿だ。

「その従業員との会話を楽しみに店に来てくださるお客様もいらっしゃいますし、それが従業員のハピネスを生みます。そうした循環を生み出すことのできる店舗らしさを尊重し、もっと個性を発揮してもらうためにも、今後もさらに、従業員が自ら考えて行動できる環境を作りたいと思っています」

トリドールホールディングスは以前から、外食事業を“食の感動体験を提供する身近なレジャー”と位置づけてきた。山口社長も「本来、食事は楽しいものですし、みんなでワイワイと楽しく食事ができる場を、これからも増やしていきたいと思っています」と語る。その一方で「最近、人との関わりが希薄な店も見受けられますよね。店内が活気に満ちた元気のある店なのに、注文は人を介さないとか……」とも言う。

丸亀製麺が目指すのはそうした店とは対極に位置する店舗から、感動とハピネスの循環を生むことだ。

「人の心を動かすことは人にしかできません。そこに着目したのが『心的資本経営』であり、他社が削減を進める中で、丸亀製麺がこの5年で社員数を倍以上に増やし、パートナーも1万人以上増やした理由です」

創業から25年目を迎えた丸亀製麺は今後も、人と人との関わりを大切にしながら、独自の企業文化と新しい外食業界を構築していく。

株式会社 トリドールホールディングス

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