トヨクモ株式会社
災害が多い日本の企業にとって、周到なBCP(事業継続計画)を用意することは必須の課題だ。その初動対応で重要となるのが安否確認サービスの活用だが、何よりも大事なのは「非常時でも確実に稼働すること」。当然のことのように感じるが、過去の大震災では、サーバーがダウンするなどしてスムーズな安否確認ができなかったケースも少なくない。それを踏まえてトヨクモは、想定外の事態が起きても遅延・停止することのない堅牢なサービス「安否確認サービス2」を提供。利用企業は4000社以上、累計利用者数は250万ユーザーを超える。これに託した「安全・安心」への想いを、同社の山本 裕次氏に聞いた。
トヨクモ株式会社 代表取締役社長
山本 裕次氏
―― 災害時のBCP対策では「初動対応」が重要といわれますが、そのポイントはどこにありますか。
山本氏 まず大切なのは全従業員の安否確認と避難指示を素早く行うこと。その上で自社設備の被害状況などを把握できれば、事業復旧に向けた動きが取りやすくなります。阪神・淡路大震災や東日本大震災では、この初動対応がうまくできなかったばかりに事業継続が困難になった企業も少なくありませんでした。
―― トヨクモが提供する「安否確認サービス2」は、そうした教訓を生かしているそうですね。
山本氏 阪神・淡路大震災の際に広範囲で電話がつながらず、集中アクセスによる負荷で一部の安否確認サービスが正常に動かなくなるという状況を目のあたりにしました。「大きな災害が発生しても確実に使える仕組みをつくりたい」との想いを強くしたことが、安否確認サービスを開発・提供する当社の出発点となっています。
―― サービスの特徴をお聞かせください。
山本氏 何よりも重要なのは誰でも迷わず操作できることなので、使いやすさをとことん追求しました。具体的には、災害時に一斉送信される安否確認通知を受け取ったユーザーが、その場でワンクリックで回答できるように配慮しています。より多くの企業に安全・安心を届けるために初期費用や最低利用期間を設定せず、30日間の無料お試しを何度でもご利用できるようにするなど、導入時のハードルを下げることにも力を入れています。
また、雇用形態が多様化する中、企業ドメインのメールアドレスを持たない派遣社員やパートタイマーの方たちも容易に安否確認の対象にできるのもこのサービスの特徴です。運用されるご担当者の負担を軽減するため、人事データを管理する様々な外部システムと連携してワンクリックで人事情報を連携できる機能も備えています。
――「大規模な災害でもシステムが止まらない」ことに注力していると聞いています。どんな仕組みがそれを支えているのですか。
山本氏 もともと安定稼働することに重きを置いてサービスを設計しましたが、ユーザー数が順調に伸びるにつれて、それをいっそう強化させる必要を感じるようになりました。世界有数の地震発生国である日本のデータセンターは万一の場合にダウンする恐れがあることから、サーバーを国際分散化しています。
具体的にはAWS(Amazon Web Services)のデータセンターを利用し、災害が少なく通信インフラも安定しているシンガポールにメインサーバーを置いて日本と北米にバックアップを用意しました。過去の災害時のデータ通信量を踏まえて十分なキャパシティを確保していますし、システムの負荷が急激に高まると自動的にサーバーが拡張される仕組みもあるので、有事の場合でも確実に安否確認をしていただけます。
―― SLA(サービス品質保証)も制定されているそうですね。
山本氏 非常時にアクセスが集中する安否確認サービスはSLAの適用が難しい分野だといわれますが、サービスに対する責任を示すために制定しました。月間稼働率が保証基準を維持できなかったときにご利用料金の一部を返金するもので、これまで基準を下回って返金したことは一度もありません。業種や規模を問わず民間企業から官公庁、自治体と幅広くご利用いただいています。中には鉄道会社やガス会社などのインフラ企業や病院など、災害時の事業継続が必須の事業者にも多く採用されています。
―― 毎年「防災の日」に模擬的に安否確認を行う「全国一斉訓練」も実施されているそうですね。
山本氏 全国一斉訓練には2つの目的があります。1つはアクセスが集中してもサービスがしっかり稼働するのを実証すること。7回目の開催となった2024年の訓練には1921社、70万2114ユーザーと過去最多の人数が参加され、南海トラフ地震や首都直下型クラスの地震発生時に想定されるアクセス数と照らし、WebサーバーのCPU使用率に十分な余裕があることを確かめました。もう1つの目的は訓練に参加された団体にご提供する安否確認への回答状況をまとめたレポートを通じて、防災意識をより高めるきっかけにしていただくことです。
―― レポートからどんなことが分かるのですか。
山本氏 団体ごとの回答率と回答時間を全団体の平均値と比較でき、自社の安否確認体制がどの程度のレベルなのかを把握できます。参加を継続している団体は前回の結果と比較することで、自社従業員の防災意識の変動が一目で分かります。また、回答率の時間遷移のグラフも示され、「回答率も回答速度も平均を上回っている」、「最終的な回答率は高いが一斉送信直後の反応は鈍い」など、類型化した5パターンのどれに近いかを知ることでも、自社の様子をチェックすることが可能です(図)。

回答率が時間とともにどう遷移したかをグラフ化。前年と当年の自社の値を全体平均と対照することで、安否確認体制を強化するための気づきが得られる
レポートには「回答までにかかる時間も全体の結果と比較し短い時間で対応ができています」といった総評も添えられるので、年1回のこの機会を防災意識の維持や改善に役立てていただきたいですね。
―― BCPを支える企業として、今後どのような取り組みをしたいと思われますか。
山本氏 安否確認サービスを提供している会社は弊社だけではありません。それらの企業が協力し合って共に「全国一斉訓練」をすれば、通信インフラなどのボトルネックも明らかにできるでしょう。そうした試みを通じて、日本を災害に強い国にすることが大きな目標です。