世界的詐欺犯罪に日本のサイバーセキュリティ企業が挑む 産官学連携での詐欺対策の取り組みとは?

電話、SMS、SNSなどを通じてターゲットにアプローチする詐欺が急増し、深刻な社会課題となっている。「ウイルスバスター」で知られるトレンドマイクロは、国際機関などと連携して被害防止に向けた情報基盤作りを進めながら、セキュリティソフト開発で積み重ねてきた知見やノウハウを掛け合わせた新たなアプリをリリースし、詐欺犯罪に果敢に立ち向かおうとしている。

巧妙化の一途をたどる詐欺犯罪
約64%の人が不審な行為を体験

電話やインターネットなどでターゲットにアプローチし、金銭などを騙し取る詐欺犯罪が横行している。警察が認知した2024年の特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺被害額は約2000億円に上った。

トレンドマイクロが2025年3月に日本で実施した調査では、約64%もの人が「詐欺や詐欺と思われる不審な体験をしたことがある」と答えている。年齢が高くなるほどその割合が高まる傾向が認められるが、20 ~ 30代でも50%を超え、幅広い世代が標的となっている実態がうかがわれる。

「『自分は騙されない』と思い込んでいる人も少なくないようですが、攻撃者のやり方はどんどん高度になっているので、決して油断することはできません」と注意を促すのは、トレンドマイクロの本野 賢一郎氏だ。

最近よく見られる手法の一例として、著名な投資家になりすました人物が「投資勉強会」などと称するグループチャットに招待し、投資話をまことしやかに持ちかけてくるケースが挙げられる。また、SNSの広告やDMなどを通じて「指定した動画や商品に『いいね!』するだけ」の仕事を勧められて応じると、事後に「タスク手順を間違えた」などとして高額な違約金を請求する、「副業詐欺(タスク詐欺)」の被害に遭う人も増えている。

さらに最近ではAI(人工知能)を活用して偽の画像や音声を生成する「ディープフェイク」と呼ばれる技術が悪用され、他人になりすました攻撃者がビデオ通話やライブ配信でアプローチする詐欺のケースも現れており、手口の巧妙化はとどまるところを知らない。

詐欺対策に必要な情報や知見を
集約するため産官学の連携を促進

トレンドマイクロ株式会社 コンシューマソリューションエキスパート部 詐欺対策チーフアナリスト 本野 賢一郎氏

こうした状況を受け、トレンドマイクロは近年、自治体や警察、金融機関や学術界などと緊密に連携しながらの対策に乗り出している。トレンドマイクロといえば、PCやスマートフォンをウイルスやスパイウエアなどから保護する「ウイルスバスター」でおなじみだが、なぜ詐欺対策にも力を注ぐようになったのか。本野氏は次のように説明する。

「私たちはPCが広く普及し始めた35年以上前から政府機関や企業、個人ユーザーにセキュリティソリューションを提供しています。その豊富なノウハウをベースに、産官学の幅広い領域の関係先とタッグを組んでエコシステムを構築すれば、詐欺被害の防止に貢献できるはずだと考えました」

注目したいのは、詐欺被害の防止・軽減に向けたグローバルな活動を積極的に行っている点だ。例えば2025年5月には「詐欺対策カンファレンス Japan 2025」をGASA(Global Anti-Scam Alliance)と共催。GASAは世界規模で詐欺対策推進を進める国際組織で、同社は設立当初からGASAに参画している。 警察庁や総務省の幹部が講演を行った本イベントで、同社の取締役副社長の大三川 彰彦氏が登壇し、AIで巧妙化する詐欺や、それに対抗する対策を国内の産官学で連携して進めることの重要性を訴えた。

もちろん国内の活動も多面的に展開する。国内42の警察と連携し、詐欺に関する情報を網羅的に収集してインテリジェンス化していることはその一例だ。個別の情報は点でしかないが、それらをつないで線や面として捉えれば、詐欺の実態をより解像度高く見ることができる。そうして得たナレッジは被害を未然に防ぐための啓蒙活動に役立てられるし、AI技術なども駆使してデータを精緻に解析すれば、警察による犯人検挙率の向上に寄与できる可能性もある。

学術界との連携においては、被害者が騙されるメカニズムを心理学の見地から学び、その知見を防犯対策に取り入れるといった試みが行われている。企業間の連携にも意欲的で、多数の金融機関の協力を得て、詐欺犯が使った電話番号やURLなどの情報を共有。攻撃手法をどんどん高度化させる詐欺犯に対抗するため、独自の大規模言語モデル(LLM)やAI技術を持つNTTセキュリティなどと協業するなど、取り組みの内容は多岐にわたる。

「さらには国際的な犯罪対策を行う国際刑事警察機構(インターポール)や、各国の法執行機関との情報連携を図っています。詐欺の手口は国を越えて展開されるので、海外で発生した事案の情報を素早くキャッチすることは、その手法が日本に広まる前に有効な対策を講じることに寄与します」(本野氏)

2025年5月に開催された「詐欺対策カンファレンス Japan 2025」

2025年5月に開催された「詐欺対策カンファレンス Japan 2025」

詐欺被害の増加・深刻化の問題に対応するため、GASAのイベントとして日本では初となる「詐欺対策カンファレンス Japan 2025」をトレンドマイクロが共催。政府機関や法執行機関、関連団体、学術機関の専門家、金融機関、通信やプラットフォームの事業者、さらには多様な業界を代表するリーダーが一堂に会した。登壇者たちは詐欺の最新動向や各セクターに求められる責任、産官学の垣根を超えた連携戦略について実践的かつ建設的な議論を交わした。詐欺の脅威から社会を守るのに不可欠な強固なパートナーシップを構築する場となった

詐欺対策に特化したアプリで
電話やWebの脅威を効果的にブロック

詐欺防止に特化したアプリ
「 トレンドマイクロ 詐欺バスター」

詐欺防止に特化したアプリ「 トレンドマイクロ 詐欺バスター」

疑わしい番号からの電話への注意喚起や着信ブロック、不正なサイトへのアクセス防止、テキストメッセージやオンライン広告などの安全チェックなどの機能で被害を未然に防止。(公財)全国防犯協会連合会からの「推奨」認定も受けている

トレンドマイクロはここに紹介した様々な活動を通じて得た知見と、これまでに培ってきた独自の技術を結集し、スマホ向けの詐欺対策アプリ「トレンドマイクロ 詐欺バスター」を開発。2024年10月にリリースされて以降、多数のユーザーの防犯に役立っている。

その代表的な機能の1つが「詐欺電話対策」だ。警察や金融機関などから提供された情報と、独自のインテリジェンスで作成したリストと照らし合わせ、詐欺に使われている疑いのある番号からの着信時と、その番号への発信時に警告を表示。ブロック設定を有効にすれば、着信を拒否することもできる。

ほかに、個人情報や金銭を狙うフィッシングサイトや、不正アプリをダウンロードさせるサイトなどへのアクセスをブロックする「Web脅威対策」、詐欺の可能性があるメッセージをSMSフィルタで識別し、迷惑メッセージフォルダに自動振り分けする「詐欺SMS対策」も搭載。さらには、SNSやテキストメッセージ、オンライン広告などが信頼できるかどうか不安なときに、画面のスクリーンショットを送信するとAIが危険性の有無を判定する「詐欺チェック機能」も備えている。

「『詐欺バスター』のような製品は、詐欺対策に協力するパートナーが増えれば増えるほど、より多くの情報が集まり、対策の精度が高まります。30日間無料で全機能を試せる体験版も用意していますので、まずは効果のほどを実感していただき、1人でも多くの方にご利用いただきたいと思います」と本野氏は語る。

特殊詐欺は、番号不明な電話に出なければ防げるという単純な話ではない。詐欺師は電話に限らず、メールやSMS、SNSのメッセージなど多様な手段で接触を図ってくる。一度でもつながってしまえば、巧妙な手口に引き込まれるリスクは誰にでもある。「自分は大丈夫」という思い込みを捨て、「詐欺バスター」をはじめとした実効性のある対策の活用を検討すべきだろう。



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