ついに2nm量産開始、次なる展開は
メガトレンドAIを後押し
世界的半導体ファウンドリーが
次に手掛ける戦略とは
TSMC
Senior Vice President
Business Development and Global Sales
Deputy Co-COO
ケビン・ジャン氏
ついに2nm量産開始、次なる展開は
TSMC
Senior Vice President
Business Development and Global Sales
Deputy Co-COO
ケビン・ジャン氏
今やAIは、日々の生活やビジネス、社会活動に巨大なインパクトを及ぼしている。そこで、さらなる技術の進化と供給能力の増大が求められているのが、AI関連処理を実行する半導体チップだ。技術開発とチップ供給の両面でのリーディングカンパニーであるTSMCのケビン・ジャン氏と、日本市場での顧客サポートやマーケティングを担当するTSMCジャパンの小野寺誠氏に、事業状況と展望を聞いた。
—グローバル戦略についてお聞かせください。
ジャン TSMCの競争力は、「技術リーダーシップ」「製造の卓越性」「顧客の信頼」という、三位一体の強みに由来します。
技術リーダーシップは、お客様が求める数世代先の先端ロジック半導体やスペシャリティ(特殊用途)半導体技術を確実に進捗させること。製造の卓越性は、それらの技術を大量かつ高効率・高品質で生産し、お客様の製品ロードマップに沿って納期通りに供給すること。そして顧客の信頼とは、TSMCとお客様の目標を一致させることです。お客様の成功があって初めて、当社の長期的な成功が可能になると考えています。
—2025年のビジネスも盛況でしたが、振り返っていかがでしたか。
ジャン グローバルでは、AI関連需要が最大の成長要因となりました。誰もが使えるツールとして生成AIの活用が拡大したことで、より省電力かつ多くの演算能力が求められています。
地政学的な不確実性を加味しても、需要見通しは依然強く、さらなる生産能力の増強を求めるお客様の声も届いています。AIは今後もメガトレンドとして、TSMCの半導体事業を継続的にけん引していくと確信しています。
小野寺 TSMCジャパンも、過去最高の売上を達成する見込みです。車載や民生、産業などの広範なアプリケーションで数年来、安定成長が続いています。
また日本では設計支援、研究開発や製造の拠点も展開しています。ジャパンデザインセンター、3DIC研究開発センター、熊本に拠点を置くJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)がそれぞれの役割を担い、日本の優れた人材と共にお客様、サプライヤー、パートナー、アカデミアとの連携を深化させています。
—最先端技術の開発および量産立ち上げの進捗はいかがでしょうか。
ジャン N2(2nmノード)の量産は予定通りに2025年内に開始します。新構造のナノシートトランジスタを採用しています。
同時にN3(3nmノード)も、HPC(高性能コンピューティング)向けに最適化したN3Xや、コスト効率に優れたN3Cなどの次世代版へと進化を遂げました。2026年には自動車用途向けに認定されたN3Aの生産も開始予定です。N2世代についても同様の強化を進めます。
次世代のA16は、2026年中に生産開始予定です。電力配線を裏面に移して表面を信号配線専用とする「スーパー・パワーレール・アーキテクチャー」を採用することで、HPCでのさらなる高性能化要求に応えます。さらに、2028年生産目標のA14技術では、性能と効率の両面でN2比の1世代分を改善させる見通しです。
TSMCにとって、同一パッケージ内に多数のチップを並列統合させる「CoWoS®」や、複数のチップを3次元積層する「SoIC」など、先端パッケージングの研究開発も非常に重要です。さらにシリコンフォトニクスによる光信号のパッケージ内導入や、集積電圧レギュレーターなどの電源ソリューションも推進しています。
TSMCでは、これらの取り組みを「ファウンドリー2.0」と総称し、高帯域幅メモリ、kW級の電力供給、光通信速度の実現で、HPCに最適化したシステムの構成を後押しします。
—2026年は、どのような取り組みに注力しますか。
ジャン AIはまだまだ発展初期段階にあります。現在盛況なデータセンターから、パソコンやスマートフォンなどのエッジデバイスに搭載されるAI機能へと需要の中心が移行し始めるとされており、生活や社会の発展にますます貢献していくことでしょう。今後いずれの領域が加速したとしても、省電力かつ莫大な演算処理を実現する先端ロジックチップ、そして現実世界とつながるためのスペシャリティチップが、確実かつ大量に必要です。
例えば、自動車メーカー各社は、自動運転向けに多様な先進チップの採用を急加速しています。高度なマイクロコントローラーやネットワークチップだけでなく、道路状況を認識するイメージセンサーやレーダー用ラジオ周波チップなどの特殊半導体も既に求められています。
小野寺 日本においても、AI関連チップの開発サイクルは加速しており、先端技術を適用したチップを短期間で設計・製造して届ける必要が出てきています。特に自動車分野では、量産までの期間短縮のニーズがより顕著な傾向です。
—最先端チップでは、製造と共に設計の難易度も高まっています。
ジャン TSMCでは設計技術プラットフォーム(Design Technology Platform)として、最先端チップの設計に必要な設計フロー、プロセス設計キット、IPを整備し、お客様を支援しています。台湾以外に世界9カ所にデザインセンターを運営しており、日本にも大阪と横浜に拠点があります。
小野寺 新技術導入の障壁を低減するために、EDA(電子設計自動化)やIP、設計支援サービスなどを提供する100社以上のパートナー企業からなるエコシステム「OIP(オープン・イノベーション・プラットフォーム)」を構築しています。専門性の高いOIPパートナーが設計の全工程でお客様を支援し、TSMCの最先端技術との互換性を保証した設計を後押しします。
—最後に日本の読者へメッセージをお願いします。
ジャン 日本のお客様、パートナー、サプライヤー、政府・自治体、アカデミア、そしてJASM が所在する熊本県の皆様など、すべてのステークホルダーに深く感謝しています。世界で最も革新的かつ先見性がある日本のお客様の画期的なアイデアの実現に、TSMCの技術が貢献できていることを嬉しく思います。パートナーの皆様と共に、今後の繁栄を心待ちにしております。
小野寺 TSMCは、30年近くにわたり日本で事業を継続してきました。お客様は着実に増え続け、関係性も深くなってきています。これはお客様との長期的な信頼関係の賜物であると考えています。現在はAIの需要が際立っていますが、これに限らず半導体の重要性は日々高まっています。これまで以上に、お客様のグローバルでの成功をサポートしていきます。
TSMCジャパン 代表取締役社長 小野寺 誠 氏