仕事以外に人生の楽しみがありますか? シニアだけの問題ではない!働き世代のミドルエイジから始める「フレイル」対策

フレイルはシニア世代の話で、自分には関係ない──そう思ってはいないだろうか。しかし、ツムラの調査では50代の9割にフレイルやプレフレイルの恐れがあり、健康寿命の延伸には50歳からのフレイルアクションが重要だという。東京都健康長寿医療センター理事長の秋下雅弘氏と、ツムラ コーポレート・コミュニケーション室長の北村誠氏に話を聞いた。

フレイルはシニア世代だけの問題ではない
ライフステージが変わるミドル世代こそ対策を

 年齢と共に体力・気力が低下した状態を指す「フレイル」。フレイル自体は疾患ではないものの、これによって病気にかかりやすく生活の質が低下する恐れがある状態だ。日本老年医学会が2014年に健康な状態と要介護状態の中間の状態を表す言葉として提唱し、医療機関や自治体などの健康啓発活動に広く使われていることから、シニア世代の問題というイメージがあるかもしれないが、東京都健康長寿医療センターの理事長である秋下雅弘氏はミドル世代ならではの問題点を指摘する。

 「ミドル世代は責任ある役職に就いたり、職場での立場が変わったり、プライベートも含めてライフステージが切り替わる時期。さまざまな環境変化によるストレスを受けやすく、不摂生や運動不足なども相まって、健康診断で指摘される項目が増えていきます。しかし、働き世代でもあるので、出世や収入への影響を恐れて健康上の問題を言い出しにくく、まだまだ体力や気力があるので無理もできてしまう。問題を先送りすれば、雪だるま式に大きくなってしまうもの。フレイルは適切な対策次第で健康な状態に戻すことができますから、ミドル世代のうちから対策を始める必要があります」

秋下雅弘
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター
理事長

 フレイルは早期に対策すれば健康な状態に戻れるという特性上、フレイルに至る前段階で対策を始める重要性が指摘されるようになった。しかし、ツムラが24年12月に実施した「フレイルに関する中年世代の意識と実態調査」にて、フレイルの認知度を調査したところ「フレイルという言葉を知っている」「フレイルの言葉の意味まで知っている」を合算した認知度は、60代で52.2%に達したが、50代では31%に留まった。さらに、厚生労働省作成「基本チェックリスト」に基づく評価として、「15分位くらい続けて歩いていますか」「(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする」などからなる25項目のうち、8~25 個に該当する場合は「フレイル」、4~7 個該当する場合は「プレフレイル」として分類したところ、50代のフレイルの該当者は50.5%、プレフレイルまで含めると90.5%に達した。

「フレイルに関する中年世代の意識と実態調査」(ツムラ、2025年1月30日)

 「多くの人にとってフレイルが自分事になっていないのだと思います。誰しもいずれは高齢者になるのですが、医療関係者でさえも将来の年老いた自分を想像するのは難しいもの。心筋梗塞やがんなどの疾病には積極的な治療を選択しても、加齢による変化への対策は後回しにしがちです。だからこそ、まずはフレイルに対する意識を変えていきましょう」(秋下氏)

 自分自身がフレイルあるいはプレフレイルなのかを調べるには、厚生労働省の基本チェックリストのほかに、5項目のフレイルチェックをもとに、より日常生活の中で確認しやすいように秋下氏が監修したフレイルチェックも有用だ。こちらは体重減少・筋力低下・疲労感・歩行速度・身体活動という5項目に関するチェックで、そのうち1つでも該当するとフレイルの可能性がある。さらに簡易的な方法がペットボトルチェック。筋力低下を測る1つの目安が握力で、男性は28kg以下、女性は18kg以下だとフレイルの可能性があるとされる。ペットボトルのフタを開ける動作に必要な筋力は女性の握力目安と同じくらいなので、うまく開けられない場合はフレイルが疑われる。

(左)ペットボトルのフタを開ける動作は、筋力低下を測る1つの目安に。
(右)J-CHS基準をもとに、より身近な事例へ一部表現を変更した秋下氏監修の5項目のフレイルチェックリスト

健康なうちから始める
食事、運動、社会参加の3つの対策

 ツムラの調査でフレイルまたはプレフレイル該当者となった50 代に、基本チェックリストのなかで自分が該当する項目について何か対策をとっているかと質問したところ、「特に対策をしていない」と回答した人の割合が87.8%であった。

上記と同じ調査において、「基本チェックリスト」(厚生労働省作成)25項目のうち、8〜25個該当する場合に「フレイル」、4〜7個該当する場合に「プレフレイル」としている。50代では、90.5%が「フレイルまたはプレフレイル」に該当し、その該当者のうち、87.8%がなんの対策も行なっていないという実態が明らかに

 つまり、ほとんどの人が何も対策をしていないということだ。具体的にどういった対策をとるべきか。秋下氏によれば「食事、運動、社会参加という3つの対策」があるという。

 例えば、食が細くなるシニア世代のフレイル対策では食事の量が重視されるが、ミドル世代は生活習慣病予防も重要であることから、量よりもバランスを重視する必要がある。外食の場合は丼物よりも定食を選び、主菜は肉に偏らないよう魚や大豆製品の日を増やす。野菜の副菜が加わればビタミンやミネラルが摂取でき、多様な栄養素を摂取できる。サプリメントも有効だが、あくまで基本は食事で、サプリは補助として活用すると良い。アルコールは筋肉を分解するので、ほどほどに留めたい。

 運動は「大切だとわかっているけど、時間がない」という人も多いのではないだろうか。秋下氏が提案するのは、筋肉に負荷をかけることで短時間でも運動効果を期待できる「レジスタンス運動」だ。

 「日常生活のなかに運動を取り入れることが継続するコツ。スクワットやテーブルを使った腕立て伏せなど、スキマ時間で簡単にできる運動を積み重ねましょう。私は歯磨きや信号待ちの際に片足立ちをし、移動時にはできるだけ階段を使うほか、スタッフに用事があるときは席まで歩いて行って話すようにしています。コロナ禍以降はテレワークやオンライン会議が増加し、座る時間が長くなっていますから、立つことを意識するだけでも良いと思います」(秋下氏)

人生100年時代を生き抜くために
仕事以外のコミュニティが大切な理由

 社会参加も、フレイル対策として重要な点だ。働き世代は仕事や子育てなどを通して社会に参加しているが、ゆくゆくは仕事を離れ、家族の在り様も変わる。独居や社会的孤立などによって対人コミュニケーションが減ると認知機能の低下が懸念される上に、外出機会が減って運動の機会が減り、食欲が落ちて栄養不足となり、運動機能や身体機能がますます衰えていく恐れがある。

 「コロナ禍で人と会う機会が減り、運動不足になった方は多いと思います。出歩かないと、お腹が空かないし、腸の動きが悪くなるので便秘になりやすく気分も落ち込んでしまいます。シニア世代はそれが日常になりやすいのです。そうならないために社会参加が重要。学生時代の友人との交流でも、仲間と趣味を楽しむのも良いでしょう。ゴルフや音楽など得意なことならば年齢を重ねても楽しめますし、友人や仲間に会いたいと思うことが外出のモチベーションになります。年齢を重ねるほど新しいコミュニティに参加するハードルが上がりますから、いまのうちから仕事以外の交流を大切にすることをお勧めします」(秋下氏)

 我が国の平均寿命は男女ともに80歳を超えており、まさに人生100年時代を迎えているが、健康的に日常生活を送ることができる健康寿命と平均寿命との間には10年前後のギャップがある。1日でも長く自分らしい豊かな人生を送るためには健康寿命を延ばすことが肝要で、それにはフレイル対策が欠かせない。

 ツムラでは早期からフレイル対策をする重要性を啓発するために「50歳からのフレイルアクション」プロジェクトを立ち上げた。その特設サイトにはフレイルに関する基礎知識のほか、前述の秋下氏監修フレイルチェックやペットボトルチェックなども掲載されている。コーポレート・コミュニケーション室長の北村誠氏はプロジェクト開始の背景として「フレイルは健康な状態に戻すことが可能な段階であるため、50歳からのフレイル対策を習慣化し、『人生が100年になるのなら、それは健康な100年であってほしい』という思い」があったと語る。

北村誠
株式会社ツムラ
コーポレート・コミュニケーション室長

 「当社は創業から130年以上にわたり漢方と共に『未病』や不調と向き合ってきました。未病とは健康と病気の間の状態を指し、疲労や食欲不振などのさまざまな症状が現れますが、未病の段階で適切な対処・治療を行うことで病気へ進みにくくなると考えられています。一方、フレイルでも疲労や食欲不振、気力の低下などさまざまな症状があるものの、適切な対策をとることで健康な状態に戻れる可能性があります。漢方は、体力や気力の低下に伴う症状の改善を通して、部分的にプレフレイルまたはフレイルの改善をサポートできる可能性があります。なお、フレイルでは、人により呈する症状も多様なことから、漢方薬については医師に相談していただければと思います」(北村氏)

 多忙なミドル世代が生活習慣を変えることは容易ではないが、ランチに定食を選んだり、駅で階段を使ったり、ちょっとしたアクションでも積み重ねることに意味がある。人生の後半戦に備えて、まずはできることから始めたい。

「50歳からのフレイルアクション」サイトはこちらから