まだ見ぬ世界を切り開く
「テクノロジー×
人間性」
の力

左より川崎 健一郎氏、川添 雄彦氏

AKKODiSコンサルティング
代表取締役社長
川崎 健一郎

NTT チーフエグゼクティブフェロー
IOWN GLOBAL FORUM会長
川添 雄彦

NTTが次世代通信技術「IOWN®(Innovative Optical and Wireless Network)」の構想を発表したのは2019年だった。それから6年。IOWNを推進するコンソーシアム「IOWN GLOBAL FORUM」(※1)には多くの企業や団体が参加し、ユースケースも次々に生まれている。IOWNが社会にもたらす本質的な価値とは何か。そして、その価値を最大化していくにはどうすればいいのか──。IOWN GLOBAL FORUMの一員であり、IOWNの社会実装を人財の面からサポートしているAKKODiSコンサルティング社長の川崎健一郎氏と、NTTのチーフエグゼクティブフェローでIOWN GLOBAL FORUM会長の川添雄彦氏が、IOWNとテクノロジー、そしてそれを支える人財育成について語り合った。

  • ※1:IOWN GLOBAL FORUMの詳細は、https://iowngf.org/をご参照ください。AKKODiSコンサルティングは、「IOWN」を推進するIOWN GLOBAL FORUMのスポンサーメンバーです。

加速する社会実装のスピード

左より川崎 健一郎氏、川添 雄彦氏

川添雄彦・IOWN GLOBAL FORUM会長(以下、川添氏) これまでの歴史を振り返ると、イノベーションが起きてから社会実装されるまでには、かなり長い時間がかかっていることがわかります。インターネットの運用が始まったのは1969年(※2)ですが、インターネットを象徴する企業であるGoogleが設立されたのは1998年です。実に29年の時間がかかっています。

 しかし、その時間は徐々に短くなっています。デジタルトランスフォーメーション(DX)の概念をスウェーデンの大学教授が発表したのは2004年でした。日本の経済産業省がレポートでその言葉に初めて言及したのは14年後の2018年です。生成AIの技術的な誕生(※3)は2014年でした。これは10年かからずに実用化されています。

  • ※2:米国防総省の研究機関によって ARPANET が稼働開始。これがインターネットの原型となる最初のパケット通信ネットワーク。
  • ※3:モントリオール大学の研究者らによって、GAN(Generative Adversarial Network)が発表された。
左より川崎 健一郎氏、川添 雄彦氏

川崎健一郎・AKKODiSコンサルティング代表取締役社長(以下、川崎氏) イノベーションが社会実装されるまでの時間がどんどん短くなっているわけですね。

川添氏 そのスピーディーな社会実装を象徴する技術がIOWNです。IOWNのコンセプトをNTTが発表したのは2019年、最初のユースケースが生まれたのは2023年です。わずか4年で社会実装に至ったということです。

 AKKODiSコンサルティング(以下、AKKODiS)ではいち早くIOWNに注目し、社内に「IOWN推進室」を新設されただけでなく、IOWN GLOBAL FORUMにも参加してくださいました。まさにスピーディーな動きだったと思います。

川崎氏 IOWNに大きな可能性を見いだしたからこその動きでした。光信号処理と電気信号の回路を融合する「光電融合デバイス」によって、電力効率を100倍、伝送容量を125倍、通信の遅延を200分の1にする──。それが実現したら、日本発の技術が世界の新しい情報ネットワーク基盤になるに違いないと私は確信しました。同時に、AKKODiSに在籍している約6000人のテックコンサルタントの力を生かせる技術でもあると思いました。だからこそ、IOWNの推進に強くコミットしたいと考えたのです。

デジタルを超越する技術としてのIOWN

川崎氏 電力効率、伝送容量、通信の低遅延性能に続く4つ目のIOWNの特性として「デジタル超越」というキーワードを川添さんは掲げられていますが、こちらについて、あらためてお聞かせいただけますか。

川添氏 デジタル技術が人々の生活を便利にし、社会課題を解決し、ビジネスの役に立っていることは間違いありません。しかし、これまでのデジタル活用に問題がなかったわけではない。デジタルサンプリングという言葉があります。これは、膨大な情報の中から人間が理解できるものだけを抽出することを意味します。それ以外のデータはいわば捨ててきたのが、これまでのデジタル活用でした。しかし、人間が理解できないデータの中にこそ実は宝物があるかもしれません。

 例えば、新型コロナウイルスの変異メカニズムを、生成AIは明らかにできません。なぜなら、AIは人間の既知のデータをもとに答えを導き出す技術だからです。現在のAIは、人類が理解していない未知の事象に対応することはできないわけです。

 それはこのように言い換えることができます。人間が理解できる範囲内の情報を重んずるデジタル技術のみに依存していたのでは、人間は進歩していくことはできない。私たちは、デジタルを超えていかなければならないのだ、と。それが、私が「デジタル超越」という言葉に込めた意味合いです。

川崎氏 デジタルを超越することは、人間の現在の認知を超越するということでもあると言ってもいいかもしれませんね。IOWNがその「デジタル超越」を可能にできるのはなぜでしょうか。

川添氏 現在のデジタル技術を代表するのがインターネットです。インターネットの最大の特徴は、プロトコル、つまり通信のルールが一つしかない点にあります。TCP/IPという単一のプロトコルによって世界中の人々が通信しているのがインターネットです。

 それはたいへん便利な仕組みであると同時に、制約でもあります。人類が進歩していく可能性は、そのプロトコルの外にあるかもしれないからです。しかし、インターネットが通信の唯一の仕組みである限りは、特定のプロトコルから離れることができません。

 その限界を突破できる力を持つのが「光」です。光信号による通信は、電気信号通信より格段に速く、格段に多くの情報を伝達できるだけでなく、プロトコルを自由につくることができます。つまり、従来のデジタル技術を超越できるということです。

川崎氏 インターネットに代表されるデジタルの世界を「光」で超越することによって、人間の認知の新しい可能性を見つけていくこと。それを可能にするのがIOWNであるということですね。

技術と発想を融合させる、人財育成の新潮流

川添氏 IOWNで「デジタル超越」を実現するためには、人財の力がなくてはなりません。私は、イノベーションの社会実装を推進していくために必要な人財には、3つの要件が求められると考えています。まずは、イノベーションについて深く「知る」こと。2つ目に、その知識を「応用」して何かを生み出すこと。そしてもう1つは、応用を次なるイノベーションにつなげる「オリジナリティー」を磨くことです。

川崎氏 なるほど。私たちは、「知る」という最初の段階に関して、2024年に「IOWN構想基礎研修」というプログラムを開発し、提供を始めました。このプログラムを継続的にバージョンアップさせていくと同時に、今後は人財育成のパースペクティブを広げていく必要がありそうです。

 第一段階であるIOWN構想基礎研修の成果もすでに出始めています。この研修はインフラ系の領域に従事する社員だけでなく、機械・ハードウエア系の社員も受けています。自動車の品質保証の仕事を担当しているある機械系のテックコンサルタントが、研修を受けたあとでたいへん印象深いことを語っていました。

 自動車の膨大な機能の品質を確認するには、さまざまなシミュレーションを並行して進め、そこで得られた実験データを一つひとつ検証していかなければならない。しかし、IOWNですべてのデータをつなげて一元化できれば、品質保証業務は格段に効率化し、開発スピードはこれまでの何倍も速くなるに違いない──。そのテックコンサルタントはそう言っていました。技術について「知る」ことから、発想がそこまで広がるのは素晴らしいことだと思いました。

川添氏 「知る」ことから「応用」に一気に進んだということですよね。そればかりでなく、自分が関わる仕事の仕組みを大きく変えられる可能性を見いだしたという点で、すでに「オリジナリティー」の領域に踏み込んでいると言ってもいい。そのような方々が増えていけば、IOWNから生まれる価値は限りなく広がっていくはずです。

川崎氏 テックコンサルタントに専門性が求められるのは当然ですが、「応用」や「オリジナリティー」の力を磨くには、世の中やビジネスを俯瞰する視点も必要とされます。専門性と俯瞰力の2つを備え、オリジナルな発想を生み出していける。そんな人財をどんどん育成していきたいですね。

左より川崎 健一郎氏、川添 雄彦氏

「人間性×テクノロジー」がもたらす新しい価値

川添氏 AIの性能が向上することによって、人間の活動の多くをAIに任せられる世の中になっていくと考えられています。そうなったとき、人間が本当に大切にしなければならない価値とは何か。川崎さんはどう思われますか。

川崎氏 たいへん重要な問いですね。私たちが一貫して重視してきたのは、「インテグリティ」です。日本語で言えば、人としての誠実さ、真実さ、高潔さということです。テクノロジーを使いこなせる高いスキルを持っていても、インテグリティがなければ世の中に本当に役立つ価値を生み出すことはできない。そう私たちは考えています。それはどれだけAIが普及しても変わらないと思います。

川添氏 素晴らしい思想ですね。私はこれからの世界では、「人間性」とテクノロジーの掛け合わせが非常に大切になると考えています。そして、日本人にとって人間性の核となる要素の一つが「美意識」ではないか、と。

 以前、私の部下が言っていた言葉をよく覚えています。彼はシステムの専門家でしたが、あるデータセンターを見たとき、「このデータセンターは美しいですね」と言っていました。「この配線を見てください。配線をこんなふうにきれいに整えるのはとても難しいことです。この配線には美意識があります。芸術的と言ってもいいと思います」。そう彼は話していました。まさに、テクノロジーと美意識を掛け合わせる観点を彼は持っていたのだと思います。

川崎氏 テクノロジーと美の間にどんな関係があるのか。そう言う人もいるかもしれません。しかし、技術の粋を極めてつくられたものには「機能美」があります。また、必要な技術的要素を徹底的に絞り込んでいくことがシンプルな美の実現につながります。そう考えれば、テクノロジーと人間性、テクノロジーと美意識には大いに親和性があるということになりますよね。

川添氏 美しいからこそ安全であり、堅牢であり、効率的である。そんな考え方がこれからはとても大切になるのではないでしょうか。その美しさを生み出せる文化が日本にはあると私は考えています。

 世界中から注目を集めているAI開発企業のSakana AIが日本に本社を置いている理由の一つは、日本語の美意識が次世代のAI開発に必要であるという考えがあったからです。俳句や短歌は、極めて短いセンテンスによって、人に風景を思い浮かべさせたり、匂いを感じさせたりすることができます。それが日本語の美であり、それをAIの言語モデルにぜひ応用したい。そう彼らは考えていたわけです。

「日本的美意識」をスケーリングの推進力に

川崎氏 私たちAKKODiSは、「日本企業を、世界企業へ、現場変革から。」というビジョンを掲げています。日本企業が世界に向けてスケーリングしていくにあたって、日本ならではの美意識が強力な推進力となる──。これは新しく、かつ極めて重要な視点であると思います。その視点をこれからの人財育成にぜひ生かしていきたいですね。

川添氏 美意識に加えて、チャレンジングなマインドを醸成していくことにもぜひ取り組んでいただきたいです。単に海外に積極的に出ていくマインドということではありません。現在のデジタル技術がすべてであるとは考えず、新しい領域に果敢に挑戦し、現在の技術を超越していく。そんな人財が育ってほしいと願っています。

川崎氏 そのような人財が、まさにこれからの世の中を動かしていくことになるのだと思います。IOWNという技術と、それを支える人財。その組み合わせによって、現時点では想像もできないような新しいビジネスモデルが生まれたり、社会課題の斬新な解決法が見つかったりするに違いありません。私自身そんな世界を見てみたいし、AKKODiSはその道筋をつくる支援をする力強いプレーヤーでありたい。私たちが企業カルチャーとして大切にしている「ベンチャー魂」を持って、新しい挑戦を続けていきたいと考えています。

川添氏 IOWNを世界に広めていくには、多くの人の力が必要です。さまざまな産業領域に人財を提供しているAKKODiSが持つ知見やネットワークの力は、IOWNの社会実装に欠かすことはできません。ぜひ、これからも一緒にIOWNの可能性を広げていきましょう。

左より川添 雄彦氏、川崎 健一郎氏

Profile

  • 川崎 健一郎(かわさき・けんいちろう)

    1976年生まれ。99年に株式会社ベンチャーセーフネット(現、AKKODiSコンサルティング株式会社)に新卒入社。2010年代表取締役社長に就任。Akkodis APACのRegional Head、アデコ株式会社の代表取締役会長を兼任。

  • 川添 雄彦(かわぞえ・かつひこ)

    1961年生まれ。87年にNTT入社。2018年取締役研究企画部門長、20年常務執行役員、22年に代表取締役副社長を経て25年から現職。IOWN GLOBAL FORUM会長を兼任。経済同友会 先端科学技術戦略検討委員会委員長。

AKKODiSコンサルティング
https://www.akkodis.com/

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