“リバリュー”が広がる
経営資産として不動産を再構築
旭化成ホームズ
執行役員 法人事業統括本部長
小柴 一輝氏
企業にとって、「不動産を持つか、持たないか」だけでは答えが出ない時代となった。資産を極力持たないアセットライトを進める企業がある一方で、築年数を経た社宅や本社ビルを手放さず、新たな価値を持たせる動きもある。
旭化成ホームズ
執行役員 法人事業統括本部長
小柴 一輝氏
「最近の特徴としては、様々な企業不動産の整理が終わり、現在所有しているものをもう一度“リバリュー”しようという企業が増えています」と小柴氏は指摘する。例えば社宅なら社員が住みたい環境を整え、福利厚生や人材確保につなげる。本社ビルでも、現在の働き方に合わせた機能の見直しに加え、採用や企業ブランディングまで視野に入れた相談が増えている。
法人ニーズの変化に対応するため、旭化成ホームズは体制を強化し、全国の法人顧客との接点を広げ、各地域で寄せられる相談を事業活動に活かす。
相談を寄せるのは、社有地を持つ企業にとどまらない。インフラ系の企業や教育機関からの相談も増えるなど、CRE戦略の領域は着実に拡大している。
代表的な2つの事例
建物に経営の意思を宿す
法人ニーズの変化を映す2つのプロジェクトを紹介しよう。
東京・高円寺のA社では、本社の老朽化に加え、社員の働く空間を改善し、生産性や人材獲得競争力を向上させたいという要望があった。だが人手不足や建築費高騰などを背景に、従来なら地元の工務店やゼネコンに設計・施工を依頼してRC(鉄筋コンクリート)造で進められた規模でも、見積もりが出ない、計画が進まないといった事態に悩まされていたという。
そこで採用されたのが、工期やコストの見通しを立てやすい旭化成ホームズの中高層ビルディング「ヘーベルビルズ」だった。6階建て新本社の建築では、設計担当が初期段階から参加し、顧客の漠然とした構想を具体化しながら、単なる箱ではなく、ワークスペースのレイアウトまで考えた空間を提案した。完成後、「社員がすごく活気づいて、仕事に対しても前向きになっているので良かったです」というA社の会長からの言葉があったという。
築30年超で老朽化していた本社を、「ヘーベルビルズ」で建て替えた東京・高円寺のA社。現在の働き方に合わせたワークスペースを実現した
もう一つが岡山・倉敷市のB社社員寮だ(最上部写真)。M&Aによって取得した土地を活用し、社員寮を新築した。背景には「この建物を見て、この会社で働きたいと思ってほしい」という人材獲得への意欲と、「岡山を元気にしたい」という経営トップの思いがあった。住居スペースの他にジムやゴルフシミュレーター、ラウンジも設け、若手社員にどのように暮らしてほしいかまで空間として表現する。
「会社案内を渡すだけでは、実感してもらうことは難しい」と小柴氏。しかし建物なら、企業の価値観や経営者のメッセージを“3次元”で伝えられる。社員寮を、採用力や企業価値を向上させる経営資産として位置づけた事例といえる。
B to Cの強みをB to Bへ活かす
「伴走力」と「連携の総合力」
旭化成ホームズのCREソリューションの根底には、「B to Cで培ったノウハウをB to Bに活かす」発想がある。
個人向け住宅事業では、顧客の要望をくみ取り、分かりやすく提案し、予定した納期を守ることが求められる。同社では営業、設計、施工が連携し、見積もりから、発注、施工までをつなぐ仕組みによって、そのスピードを支えてきた。
法人向けでも、この力が活きる。要望を丁寧にくみ取りながら、見積もり段階から内容が大きく変わりにくく、予定した工期で着工から引き渡しまで進める。そうした仕組みや姿勢が、法人の顧客からも評価されている。また、賃貸住宅事業の場合は、旭化成不動産レジデンス等とのサブリースや物件管理も、経営の安定性を高める上では重要だ。
部署の垣根を越えて知見を持ち寄り、最適なチームで提案する取り組みも進んだ。小柴氏は「縦割りではなく会社全体で価値を生み出そうとする文化が、着実に根付いてきました。営業現場が様々な事例から誠実に学び、お客さまに寄り添う姿勢を磨いてきたことも大きい。こうした『伴走力』は私たちの強みです」と話す。
さらなる強みが、旭化成グループ全体のシナジーである。旭化成ホームズが築く顧客との接点に、マテリアル、エレクトロニクス、医薬など、旭化成グループの幅広い事業が培ってきた知見やネットワークを組み合わせる。顧客の課題に応じて、住宅、中高層建築、不動産活用などの選択肢を横断的につなぎ、解決策を提案していく。
B to Cで磨いた顧客対応力、営業現場の伴走力、そしてグループの多様な知見とネットワークを組み合わせながら、企業が不動産に託す思いまで形にする。旭化成ホームズのCREソリューションは、企業価値そのものを高める取り組みへと踏み込んでいる。



